在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

本物の軍人。本物の愛国者。ヴォイチェフ・ヴィトルト・ヤルゼルスキ(1923/07/06~2014/05/25)。

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今週のお題「憧れの人」

 

今月からはてなにお世話になってるんで、御社の企画にお付き合いします。

今度ともよろしくお願いいたします。

 

・・・・・遠い昔。

 

 

日本人はもう憶えていないかもしれないが、1980年代の東欧ポーランドで起こった政治闘争こそが「世界の冷戦体制」と「人喰いスターリン主義」を崩壊させた。 

あのグダニスクの街で、世界史は大きく舵を切り、悪魔の天才ウラジミール・イリイチ・レーニンの夢は終わり、今に続く世界規模の《右傾化》《保守反動》が始まったといってもいい。 

つまり我らが「安倍晋三内閣総理大臣」は、1980年、バルト海に面した古びた造船所で誕生したのだ。

 

ポーランド民主化運動といえば、当然ながら、髭の電気技師にして労働組合「連帯」の指導者レフ・ワレサ氏がその象徴である。後に、脱ボリシェビキ化/自由化されたポーランドの大統領にも付いた。

 

ワレサはおそらく共産党のスパイだった。それを批判するヤツは「共産主義とは何だったのか?」を全く理解できていない。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

世界史が生んだ最強の怪物ソビエトと戦い、そして勝ったワレサも確かに凄い男だと思うが、当時のポーランドにはさらに凄い男がいた。

 

ワレサよりもさらに困難な戦いを凌ぎ切った軍人。

ヴォイチェフ・ヴィトルト・ヤルゼルスキ・ポーランド人民共和国国家評議会議長。 

この男こそが、ポーランドを救い、結果的に世界を救った。 

 

ヤルゼルスキは、連帯の必死の突き上げとクレムリンの凄まじい圧力の間に張られた一本のタイトロープの上で祖国ポーランドを背負って歩み続けた。

同胞である連帯に圧力を加え、逮捕を繰り返しながら、ポーランドの人的損害を最小限に抑え、破滅を意味するクレムリンの最後通告だけは阻止する。

彼がちょっとでもバランスを崩せば、足を踏み外せば、ロシアから東ドイツから戦車の群れが国境を踏み潰してやってくる。ポーランドは終わりである。

 

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常人には耐えがたい圧力の中、絶妙の綱渡りで時間を稼ぎ、東欧民主化の大波に乗って、ワレサの革命(いや、反革命か?)を【敵側から】成功させ、静かに連帯に権力を明け渡した。

 

連帯という「敵」に降伏すること。これこそ彼の究極の勝利であった。

 

民共和国を静かに「安楽死」させた彼は、軍も政界も引退し、資本主義化したポーランドの片隅で、スズメの涙の年金頼りに、つつましやかに暮らした。
テレビを見ながら甘いケーキを食べることにささやかな喜びを感じる、老いた自分を「堕落」だと恥じながら。 

 

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もしも琉球人の私が、安倍ちゃんの代わりに日本国内閣総理大臣に指名されたら、私の内閣の防衛大臣ポストだけはこのポーランド人と決めていた。 

日本製の大画面液晶テレビと銀座の老舗の最高級スイーツで買収して、この老い愛国者に日本への亡命をそそのかすつもり、、、と画策していたのだが、 

 

ポーランド元大統領のヤルゼルスキ氏死去 戒厳令を断行:朝日新聞デジタル

2014年5月26日
 共産主義政権下のポーランド戒厳令を布告する一方、その後の民主化にも一定の貢献をしたとされるウォイチェフ・ヤルゼルスキ元大統領が25日、ワルシャワ市内の病院で死去した。90歳だった。地元メディアが報じた。
 ヤルゼルスキ氏は首相だった1981年に戒厳令を断行し、民主化要求を掲げる自主管理労組「連帯」に対抗。連帯を率いたワレサ元大統領ら多数の活動家を拘束し、批判を浴びた。だがその後、「連帯」穏健派と協力し民主化に道筋をつけたとされる。
 しかし2006年、戒厳令による民主化弾圧の責任を問われ、ポーランドの検察当局に訴追された。数年前から、がんの治療を受けていた。
 ヤルゼルスキ氏自身は回想録などで、戒厳令について「当時、ソ連の軍事介入を防ぐためにはやむを得なかった」などと釈明。国内では、民主化勢力の弾圧に批判がある一方、正当化する意見も根強く評価は割れている。

 

その「世界史的偉業」は、本当の意味で政治を熟知している人以外からは、あまり賞賛されることもなく、2014年5月25日、老兵は静かに祖国を去った。

 

殺した敵の数を誇れる軍人は古今東西あまたいるだろうが、

殺さなかった同胞の数を誇れる軍人はさらに優れているだろう。

 

国歌が静かに流れる中、棺を国旗に包まれて、参列者、および、参列が適わなかった生者と「死者」たち、すべての人々から最敬礼をもって送られ、祖国の土に還るに値する軍人というのは、確かに存在するのである。

 

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