在日琉球人の王政復古日記

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田中邦衛1960年代映画地獄巡礼~東宝「若大将」VSフジテレビ俳優座「若者たち」VS東映「網走番外地」

1965年、日本。


エレキの若大将 【夜空の星】 - YouTube

 

1967年、日本。


映画 若者たち ①~空にまた陽が昇るとき プロローグ - YouTube

 

1965年、日本。


網走番外地(予告編) - YouTube

 

とても「同じ国」「同じ時代」、いや「同じ惑星の生物」を描いているとは思えない(笑)。

 

一般には、フジテレビ「北の国から」が一番知名度があるだろう、俳優・田中邦衛の60年代を代表する出演シリーズである。

 

「若大将」シリーズ(東宝1961年1971年)

「若者たち」(フジテレビ1966年、俳優座映画3部作1967年~1970年)

網走番外地」「新網走番外地シリーズ(東映1965年~1972年)

 

しかし役者ってすげーな。

たった2年の間に、

大金持ちのドラ息子と、

貧しい兄弟を支えるマジメな土建屋と、

前科13犯の懲役太郎を

同じ役者が演じてるんだもんな(笑)。

東宝加山雄三と共演した、次の瞬間、東映高倉健と共演か。

満漢全席の世界だが、胃もたれを起こしそうな掛け持ちである(笑)。

 

先週当ブログでオススメした通り、

現在BSジャパンでは「土曜の若大将」ということで毎週、東宝喜劇の傑作・加山雄三主演「若大将」シリーズをやっている。 

そして、先週のBS日本映画専門チャンネルで、最近フジテレビでやってったドラマのオリジナル「若者たち」3部作を一挙放送していた。

 

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どっちも田中邦衛が出てる「海の若大将」とオリジナル「若者たち」3部作は、ほぼ同じ時代の同じ青春映画。しかしその内容は天地の格差(笑)。

厳密に言えば、「若大将」の時代が終わって、「若者たち」の時代が始まる、といったほうがいいか? 比較して観ると双方面白さ倍増だろう。

 

しかし「若大将」と「若者たち」を続けて観ると、あまりの世界観の違いにクラクラめまいがする(笑)。

 

「若大将」は前に書いたが「親米保守・資本主義バンザイ」の政治映画だ。

 

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対して「若者たち」(1967)、「若者はゆく・続若者たち」(1969)、「若者の旗」(1970)、の3部作は、正反対の「反米左翼・社会主義革命」映画である。

 

しっかし、いくら当時の世相とはいえ、あのフジ産経グループが、こんな真っ赤っ赤なテレビドラマをよく作ったもんだ(笑)。

さすがに、映画は俳優座が製作したもんで、フジテレビは手を引いたらしい。

その後の70年代から80年代にかけて、ドラマで活躍する俳優さん女優さんの若い頃の演技がたっぷり見られるので、そういうのが好きな人にはたまらないだろう。

  

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主演・田中邦衛の佐藤太郎は、そのまま「北の国から」黒板五郎の原型だ。

「若者たち」の貧乏人・佐藤太郎=田中邦衛は、なけなしの財産80万円を詐欺師に騙し取られて、あまりのショックで胃痙攣を起こす。

全く同じ時期に、「若大将」の金持ち・青大将=田中邦衛は、時価600万円のレジャーボートをポンと即金で買う。

当時の金銭価値は、工場のアルバイトが日給520円(時給じゃないよ!)、おんぼろアパートの家賃が月額7000円と出てくるから、平成との物価の落差が想像つくだろう。

 

しかし、興味深いことに、当時の歯ブラシの値段も100円なのだ。

現在でも、100円ショップに行けば、歯ブラシは100円で買える。

バイト日給520円(時給じゃないよ!)の50年前と、

バイトが1日8時間働いて最低でも7000円程度は貰える2014年で、

歯ブラシの値段は同じ100円なのだ。

つまり、ここ50年の、工業製品の生産コストの下落、第三世界新興国の生産力向上による輸入の急増、そして「平成デフレ」の価格固定は、それだけ強烈だということだ。

 

大学生・佐藤三郎役の山本圭。さすがは血筋、左翼インテリを演じさせたら問答無用で「日本一」である(笑)。

どこから見ても、どこを切っても、左翼以外の何者でもない。「左翼思想の擬人化」といっても過言ではない。彼を超える役者はいないだろう。

「若者たち」山本圭は、大学に行って「学生運動」ばっかりやってる。

「若大将」加山雄三は、大学に行って「学生スポーツ」のエースである。

昭和の「運動」と「スポーツ」は、かなり違うモノなのだ(笑)。

 

やはり時代か、当時の左翼用語もポンポン出てくる。

「ボルだのアナだの~」

ボルは、ボルシェビキ(ソヴィエト共産主義者)、

アナは、アナキスト(無政府主義者)のこと。

両者は、

社会主義国家建設を是とするか、

社会主義だろうが国家はすべて悪だ!とするかで、

激しく対立する関係である。

「トロだマグロだ~」

トロは、トロツキスト反スターリン主義者のこと。

1950年代までは社会主義運動においてスターリンは絶対的存在だったが、56年のスターリン批判以降、その評価はガタ落ちとなり、代わってスターリン最大の政敵トロツキー復権する。

 

意外にも「若者たち」と「若大将」に共通するのが食事シーンの多さである。

 

貧困を描く「若者たち」だが、すでに時代は戦後高度経済成長時代、すいとん、雑炊、麦飯、雑穀というわけではなく、銀シャリをドンブリ山盛りで食っている。

貧しくとももはや飢えの時代は終わっていた。ただ、おかずに肉は出てこない。焼いたアジに豆腐にシュウマイだ。栄養のある食い物はずばりバナナという時代だ。

 

とはいっても、リッチな「若大将」はやはり別世界である。銀座の洋食屋、ホテルのラウンジ、避暑地の別荘、レジャーボート、禅寺、さらにハワイ(!)のビーチ、などなどで、ステーキだバーベキューだすき焼きだと、肉ばっかり食っている。

 

先に書いた通り、同じ惑星の、同じ生物の食生活とは思えない(笑)。

 

「若者たち」の時代、60年代にはすでに、都会(東京)の過密、地方(青森)の過疎の問題が深刻化している、

平成の安倍内閣の課題「地方創生」そのままである。つまりこの50年、問題は何にも解決してないのである。

 

「若大将」シリーズの1作「海の若大将」にも、八丈島近辺の離島の過疎問題が登場する。島の網元も「島から若いもんを奪う東京は嫌いだ」とは言いながら、結構オシャレな格好をして東京へ旅行に来たりして、能天気というか、深刻さはほとんどない。

それが資本主義バンザイ!東京バンザイ!の東宝イズムである。

 

「若者たち」と「若大将」、女性の描き方も随分異なる。

  

「若者たち」に出てくる女性たちは「貧困」と「ジェンダー」という2重の抑圧を受けている。当時はフェミニズムなんて遠い欧米のおとぎ話だ。

5人兄弟の紅一点オリエは靴工場で機械を動かし、友人の女性工員は倒産寸前の工場の商品を行商し、青森の実家を飛び出した少女は働くために夜行列車で東京へ向かう。その表情はまるで死刑場に向う囚人である。

ガチガチの左翼であるオリエの兄・山本圭、妹=女性を平等に扱ってるか?といえば、無意識に抑圧しっぱなしだ。5人兄弟の紅一点オリエは当然であるかのように、いつもいつも兄弟の食事担当である。山本圭も自分のやってる女性差別に全く気付いていない。

  

対して「若大将」のヒロイン星由里子の職業は、シリーズが進むにつれて、どんどんカッコ良くなる。後半はほとんどファンタジーである。

「ハワイの若大将」では(当時の日本ではまずありえない)ハワイに出張する化粧品会社のビジネスガールだし、

「海の若大将」 でも東京青山に出来たアメリカ型高級スーパーマーケット(50年前の成城石井だ)のレジ係り。そのレジの前にはアメリカ雑誌「リーダーズダイジェスト」がさりげなく売ってあるオシャレさだ。

 

しかし、そのモダンな「若大将」も女性の扱いはやはり50年前である。

青大将・田中邦衛はちょくちょくヒロイン星由里子をモノにしようとするのだが、その方法は完全に「強姦」未遂(当時の表現なら「手篭め」)であり、完全な犯罪なんだが、ヒロイン星由里子は青大将がちょっと謝っただけで簡単に許す上に、その後になって踊ったり、ドライブしたりするのである。澄ちゃんは鋼鉄の神経である(笑)。

  

それでも、「若者たち」(1967)、「若者はゆく・続若者たち」(1969)、「若者の旗」(1970)、はたった3年の間だが、時代は急激に変わっていく。

1作ごとに、街にビルディングが増え、道が舗装され、住居が明るくなり、服装も貧乏ながら垢抜けていくのだ。

3作目「若者の旗」では末っ子は高価な商品である自動車のセールスマンであり、過酷なノルマに追われながらも、当時の最先端情報機器であるポケットベルを持ち、白いワイシャツにネクタイを締め、男性化粧品を使い、ベッドに眠るのである。もはや貧困からは脱却しかけている。

 

ここでガチ左翼・ 山本圭はとんでもない発言をする。

「これから10年15年は経済が上向きのままだろう。そうした『元禄ボケ』の空気の中で労働者は飼い慣らされてふぬけていく」

『元禄ボケ』というのは、当時の景気を「昭和元禄」と呼んでいたところからの造語だ。

しかし、山本圭は何が不満なのか? 長期にわたって景気が良いのなら、人民の生活も向上し、歓迎すべきことではないか?

しかし、好景気が続けば、人民にもカネが回り、大人しくなり、革命は遠のく。革命実現ためには、恐慌が起こって、人民が飢えなければならないのである。

 

ここで、目的(人民の幸福)と手段(革命)の転倒がおき始めている。 

手段(革命)のためには、目的(人民の幸福)を犠牲にしてもいい、革命思想の腐敗が始まりつつあった。

 

そして、その「若大将」「若者たち」と同時期に、田中邦衛東映の「網走番外地」で高倉健の相棒である。

「若大将」は「親米保守・資本主義バンザイ」の政治映画。

「若者たち」は「反米左翼・社会主義革命」映画。

じゃあ網走番外地」は右か左か?・・・極右+極左である(笑)。

「若大将」が近代(モダン)なら、網走番外地」は前近代・反近代、

「若者たち」が社会主義なら、網走番外地」はアナキズムだ。

東映は、特にヤクザ映画は、資本主義にも社会主義にも牙をむく、アウトローアナキズム映画なのである。

 

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長くなったので、ヤクザ映画に関しては、またの機会に。

 

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1960年代の田中邦衛は、昭和の全ての政治思想を体現していたのだ。