在日琉球人の王政復古日記

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チョコパイとマルボロ~「平清盛VSポルポト」の5000年戦争(その1)

チョコパイ。韓国と北朝鮮、そして日本では、この駄菓子の持つ意味が全く異なるようだ。

 

韓国のおいしすぎる“チョコパイ”が北朝鮮と一触即発の時限爆弾に? | ニコニコニュース

「韓国製のチョコパイはおいしいと評判になり、北朝鮮国内では1個700~1000北朝鮮ウォン(実勢レートで約8~13円)で売買されています。そのあまりの人気ぶりにチョコパイを買い取る専門市場も登場したほどです。つまり、チョコパイは単なるお菓子ではなく“第2の通貨”として大規模に流通しているのです。

 

日本人にとってのチョコパイとは、単なる駄菓子の一種、しかもそれほど人気があるものでもない。煎餅なりクッキーの方がよっぽどポピュラーである。

 

しかし、韓国人にとってのチョコパイとは、特に韓国人男性にとっては、特別な食い物、青春の思い出が詰まった駄菓子なのだ(ただし、21世紀の今でもそうかどうかは知らないが)。チョコパイの思い出は、韓国の徴兵制に重なるのである。

 

徴兵された新兵にとって毎日は緊張とストレスの連続である。その彼らにとって唯一の楽しみは食い物だ。

これは戦前の日本も同じ。徴兵の過剰なストレスに対して、三度三度の銀シャリでなんとか正気が保ってられるのである。

 

で、これも万国共通なんだが、酒や煙草を除けば、兵隊さんが一番欲しくなるのが「甘味」なのだそうだ。

同じ閉鎖空間のストレスのたまる集団生活という事では刑務所なんかも同じ。刑務所の場合は軍隊と違い酒も煙草もご法度なんで、ますます甘味に欲望が強まる。

日本の刑務所でも、娑婆じゃ辛党だった受刑者も、たまに出てくるアンコとマーガリンが死ぬほど旨いという。原価で言えばたかが知れた安物のアンコを食べる時が至高の時間らしい。

 

そして韓国軍の場合は、憧れの甘味の象徴がチョコパイなのだ。他のスイーツと比べても、格段に旨いわけでもない、パサパサの食感と、あんまり高級ではない植物性脂肪のクリームと、チョコとは名ばかりののっぺりとした甘さ。しかしその安い駄菓子に目の色が変わるのが兵隊さんの日常なのである。

今では圧倒的、比較にもならないくらい経済格差のある韓国と北朝鮮も、昔はまだなんとか比べられる程度の格差だった頃もある。その当時、休戦ラインをはさんで韓国軍が北朝鮮軍に自慢できるのが「韓国軍なら甘い甘いチョコパイが食えるぞ!」ということだったらしい。 

 

対して北朝鮮では、チョコパイは青春の思い出なんていう甘酸っぱいものではなく、リアルなパワーとなる。

これも北朝鮮に限った話ではない。

同じ社会主義、経済不振の続いた昔のソ連では、通貨ルーブルの価値が対ドル相場でいつも下落していた。法定通貨ルーブルを持っていても、買える物がどんどん少なくなるわけだ。一番良いのは、手持ちのルーブルをドルに換金して保有することだが、それはヤバイ場合もある。

よってルーブルで「あるモノ」に購入して、それを通貨代わりに使う事が流行した。それはアメリカ産タバコの「マルボロ」であった。

ソ連製のタバコなんて全然人気がなく、同じアメリカ産のラッキーストライクでもダメで、なぜかマルボロが一番信用されたらしい。

 

なぜラッキーストライクではダメなのか? 合理的理由はおそらくなかったろう。最初に始めたロシア人が選んだ銘柄がたまたまマルボロだった、だけかもしれない。

ここら辺は、経済合理性で動いているようで、それだけでは説明し切れない人間の不合理が垣間見えて興味深い。

 

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に続く。