アメリカ西部の開拓地に住む日系移民(西海岸なら判るが、西部に日本人がいるのか?)の青年が両親の敵討ちをする東映ウエスタン。
マカロニウエスタンならぬ蕎麦ウエスタン(笑)。東宝の志村喬も出てくる。
【追悼】高倉健映画列伝(東映任侠時代)~「人生劇場」の幕が開く。 - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
『緋牡丹博徒』 山下耕作監督 藤純子、高倉健、若山富三郎、Japanese Yakuza Movie
東映城のお姫様・藤純子(寺島しのぶのお母さん、現・富司純子)の代表シリーズ開始。健さんがしっかりサポート。健さんが学生運動のアイコンだったように、藤純子も全共闘の女神だったのよ。
健さんも「心で歌う」タイプで歌唱力はアレだが、藤純子は輪をかけてアレ(笑)。
しかし、東宝の加山雄三、植木等、日活の石原裕次郎、小林旭、と「歌う映画スタア」が基本だった当時、東映城のお姫様・アイドル藤純子も歌を出してます。
まあ、たまたま、映画プロデューサーの実の娘が、この美貌で、あれだけの演技力、というだけで十分奇跡的なわけで、歌唱力まで要求するのは強欲すぎるわな。
「日本侠客伝 花と龍」東映1969年
「日本侠客伝 昇り龍」東映1970年
著名な「花と竜/花と龍」は、邦画各社でトップスタアを使って何度も映画化している。
「無法松の一生」「花と竜/花と龍」~北九州ヤンキー花魁成人式の大先輩~九州のゴッドファーザー吉田磯吉。 - 在日琉球人の王政復古日記
★1954年東映
監督:佐伯清
玉井金五郎:藤田進
マン:山根寿子
お京:島崎雪子
吉田磯吉:滝沢修
東映なのに金五郎は黒澤映画な藤田進。磯吉は代々木共産党(笑)な滝沢修。
★1962年日活
監督:舛田利雄
玉井金五郎:石原裕次郎
マン:浅丘ルリ子
お京:岩崎加根子
吉田磯吉:芦田伸介
問答無用、裕次郎&ルリ子の日活ゴールデンコンビ。★1965、1966年東映
監督:山下耕作
玉井金五郎:中村錦之助
マン:佐久間良子
お京:淡路恵子
吉田磯吉:月形龍之介
錦之助&佐久間、磯吉は月形。そして東宝から淡路招聘。あと田村高廣や佐藤慶も助演、というという豪華ラインナップ。
★1969年東映
監督:マキノ雅弘
玉井金五郎:高倉健
マン:星由里子
お京:藤純子
吉田磯吉:若山富三郎
健さんが金五郎、とくれば純子がマンで順当なのだが、ここで東宝若大将のマドンナ澄ちゃん招聘という変化球で勝負。純子はワキのお京。磯吉は若山。日活の二谷英明も助演。
★1970年東映
監督:山下耕作
玉井金五郎:高倉健
マン:中村玉緒
お京:藤純子
吉田磯吉:片岡千恵蔵
健さん第2弾。マンはまたまた外部招聘(近年はさんまとテレビでご活躍,もちろん勝新の奥さん)大映の玉緒。純子はお京連投。磯吉は山の御大。★1973年松竹
監督:加藤泰
玉井金五郎:渡哲也
マン:香山美子
お京:倍賞美津子
吉田磯吉:なし?
松竹なのに主演は元日活の渡。ワキは竹脇無我、石坂浩二と松竹っぽく固めてるが、元大映の田宮二郎も投入。役者はまるまる1972年「人生劇場」からの流れ。
各作品の金五郎役を見るだけで、映画スタアの格が判るというものである。
「日本暗殺秘録」東映1969年
幕末から戦争直前までの、極右、極左の反体制テロリズム暗殺事件をヒロイックに描くオムニバス作品。任侠路線から実録路線への過渡期的作品でもある。
皆さんが大キライな(笑)全共闘70年安保闘争を目前にして、まさに彼ら左翼学生を当て込んで作った、革命運動すら金儲けにするアウトロー&アナーキーな東映らしい作品。
内容は、左翼テロも登場するが、血盟団や二・二六事件など右翼テロが大半。でも、その右翼テロ賛美映画を70年安保の左翼学生が熱心に見たのである。
つまり「思想の左か?右か?」よりも「体制側か?反体制か?」の方が、学生たちには重要だったというわけだ。
そういう意味で、幕末の尊王攘夷運動から、戦前の血盟団や二・二六事件、そして戦後の安保闘争は、次代を乗り越え、戦争を乗り越え、思想の左右を乗り越えて、心情的に繋がっているのである。
メインとなる血盟団は日蓮信者・法華経信者のテロリストである。
ちょうど同じ時期に、皆さんが大キライな(笑)公明党・創価学会の前身「創価教育学会」も生まれている。
血盟団も創価教育学会も法華経信仰である。世相は不況と戦争の予感に震え、法華経に救いを求める人が増えていたのだ。
その流れは敗戦の混乱でも続き、戦後の新興宗教のかなりの部分は、霊友会や立正佼成会など、法華経系在家教団が多い。
右翼や左翼、戦前の二・二六事件や戦後の安保闘争は派手だから目立つが、戦前から戦後、今日まで綿々と続く一般庶民の法華経信仰運動は地味で目立たないながら、その人数と広がりから言えば、後者の方が日本社会への影響が甚大かもしれない。
ヤマトの保守派も愛国者も、リベラルも左翼も、靖国だけでなく、日本社会の底流に流れる法華経信仰の「見えない巨大さ」を重視すべきである。
だって次世代の党・石原慎太郎だって根っからの法華経信者なのである。
「昭和残侠伝 死んで貰います」東映1970年
花田秀次郎&風間重吉「花と風」コンビのバディムービー昭和残侠伝シリーズの中で一番好きかもしれない。
風間重吉こと池部良の名セリフ「秀さん、見ておくんなさい・・・ご恩返しの花道なんですよ。ご一緒願います。」が男泣きである(笑)。
健さんや鶴田浩二主演の任侠映画は、主役が寡黙でストイック、悲恋のヒロイン、極悪な敵役、どうしても殺伐とする。そこで一服の清涼剤として登場するのが「コメディリリーフ」役。これが結構重要なのだ。
最近はやしきたかじん系テレビ番組で愛国発言を連発してる津川雅彦も、東映仁侠映画では二の線ではなくコメディま三枚目役が多い。当作では津川雅彦の実兄・長門裕之が活躍する。演技の軽妙さでは実兄・長門の方が上手である。
松竹新喜劇の藤山寛美なんかもよく登場しては、そのあまりの上手さで、主役の健さんや鶴田を食ってしまうシーンも多い。そこもまた見所の一つ。
「山口組三代目」(公開年月日 1973年08月11日) 予告篇
「三代目襲名」東映1974年
大河ドラマで実在の戦国武将を演じることは普通だが、実在の暴力団組長を演じるなんてことはなかなか考えにくい(笑)。
しかし戦国武将と暴力団組長って、何がどう違うのか? 国法を無視した私立暴力組織という意味では戦国武将もヤクザも同じなのである。
それでも、暴対法の今じゃ考えられないが(笑)、実在する、当時すでに日本最大の広域暴力団・三代目山口組組長・田岡一雄を主人公に実録映画の主役が高倉健である。
健さんとタメを張る東映のスタアといえば「仁義なき戦い」「トラック野郎」の菅原文太なんだが、相性が悪いのか、2人の共演はあんまり名作が無い。今まで紹介したように健さん鶴田コンビは名作連発なんだが。
【追悼】高倉健映画列伝(東映任侠卒業)~幸福の黄色いハンカチ、遙かなる山の呼び声。 - 在日琉球人の王政復古日記
に続く。