在日琉球人の王政復古日記

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《リバタリアン映画列伝》東映「仁義なき戦い広島死闘編」(1973年)~【追悼】菅原文太~「美味いもん食うて、マブいスケ抱くために、生まれてきとるんじゃないの」

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この、奇跡的な【カッコ良さ】は、いったいナンなんだろう? 

これ以上ジェントル&ダンディーなイケメンがこの世にいるだろうか?

 

 

東宝「若大将」のような資本主義映画。

俳優座「若者たち」のような社会主義革命映画。

松竹「男はつらいよのような9条護憲・社会民主主義映画。

東映「総長の首」、東宝太陽を盗んだ男のようなアナキスト/アナキズム映画。

アメリカ「スター・ウォーズ」のようなリベラル映画。

と、映画はさまざまな政治思想を主張する。

というわけで「リバタリアン/リバタリアニズム」を表現した映画もたくさんある。

リバタリアニズムというのは、小泉純一郎さんの郵政民営化などの「ネオリベ」をさらに過激にした、アメリカ共和党のまたその先、規制撤廃市場経済、自由競争、小さな政府、安い税金または廃止、公共事業反対、社会福祉削減・廃止、麻薬自由化、同性愛不問、最終的には「政府の廃止」まで行き付く思想だ。

「ダーティー・ハリー」「ミリオンダラーベイビー」「ロボコップ」「ゴーストバスターズ」「ニューヨーク1997」「ダークナイト」など、特に本場アメリカ映画に数多い。というか西部劇はだいたいがリバタリアン映画である。

 

日本なら、実は東宝の加山「若大将」、森繁「社長」、植木等のクレージー映画なんかは、かなりリバタリアンである。

そしてさっき「靖国映画」の1本として紹介した東映仁義なき戦い広島死闘編」は、東宝下妻物語」と並ぶ、日本有数の「リバタリアン映画」の傑作でもある。

 

《靖国映画列伝》東映「仁義なき戦い広島死闘編」(1973年)~飼い犬・山中VS野良犬・大友~【追悼】菅原文太。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

 

劇中、広島が生んだ戦後再凶のリバタリアン・大友勝利は、リバタリアニズムという政治思想・人生哲学の真髄を、もはや一編の《詩》ともいうべき珠玉の日本語で語っている。

 

まずは彼の父親・大友長次(加藤嘉)が説教。 

 

『競輪は博打じゃろ。博打打ちのテラじゃろが。神農道の稼業人が手をつけては仁義が立たんと言いよるんど』

 

あまりにも詩的すぎるので(笑)、散文で解説を。

大友長次・勝利親子は、神農(=的屋。縁日の金魚釣りみたいな、松竹の寅さんのようなの露天商)が稼業。
父親の長次は、競輪という「異業種」に手を出すのはルール違反だ、博徒博徒、テキヤはテキヤ、長年続いた分業体制を守れ、と言ってるわけだ。

 

対して大友勝利が反論。

 

『ぎゃはは!なんが博打打ちよ。村岡の持っちょるホテルは何を売っちょるの? 淫売じゃないの。言うなら、あれらオメコの汁でメシ食うちょるんど。』

 

世界で一番美しいといわれる日本語、その中でもエレガントの極みといわれる広島弁の美しさを見よ。
勝利がいうには、分業分業というけれど、博打専門のはずの村岡組は、手持ちの宿屋で売春業をやってるじゃないか。あれはサービスを売ってるんであって、いわば神農=商売人の業種じゃないか。博徒のほうが異業種進出してるんだ! だったら商売人も異業種進出していいではないか。どこの誰だろうが商売は自由ではないか!、ということだ。そして、

 

『のお、おやっさん。神農いうても博打打ちいうてもよ、美味いもん食うて、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの! そりゃゼニが無きゃ出来せんので。そのゼニに体を張ろういうて、何が悪いの?』

 

これはもう、「聖書」に匹敵する世界思想だと思う。いやホントにマジメな話。

リバタリアンの思想はこの至言に尽きる。

 

「人間は、食欲や性欲、つまり《快感》を得るために生まれてきた」

これ以上の人生哲学があるだろうか? 反論できますか?

 

「《快感》を得るためには、対価となる貨幣が必要だ。その貨幣を得るために、誰がどんな仕事をやろうと、それは人間の基本的権利であり自由である」

「分配する社会主義」でも「吸い上げる国家主義」でもない。

オレはオレの手でゼニを稼いで、オレのためだけに消費する。

これぞ自由市場経済に生きる「リバタリアン宣言」だ。

 

ただ、そのゼニを稼ぐ方法がちょっと乱暴すぎるのが、アレなんですが(笑)。

 

実は靖国映画で「非靖国派」と分類した人間は、大友に限らず、静馬も清次もほぼリバタリアンなんですな。

対して、愛情を信じる犬神佐清、義理を守る朝吉、そして命令を下すご主人様を求める山中など「靖国派」は、リバタリアンにはなれない。

 

《靖国映画列伝》東宝「犬神家の一族」(1976年)~佐清の顔VS静馬の顔 - 在日琉球人の王政復古日記

 

《靖国映画列伝》大映「悪名一番」(1963年)~朝吉の米VS清次の米。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

保守といわれながら、政府を嫌い個人を重視するリバタリアンは、民族と国家、契約フリーじゃない集団の価値を前提とする靖国神社とは、どうしても相容れない思想なのだ。

 

《リバタリアン映画列伝》「ロボコップ」(1987年)~リー・クアンユーのシンガポール=オムニ社のデトロイト。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

《リバタリアン映画列伝》東宝「下妻物語」(2004年)~ #深田恭子 VS 仁義なき戦い VS ロボコップ。 #土屋アンナ #深キョン - 在日琉球人の王政復古日記

 

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