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在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

《靖国映画列伝》東宝「日本のいちばん長い日」(1967)VS東映「あゝ決戦航空隊」(1974)~【追悼】菅原文太。

21.映画

衆院選迫る本日、偶然にも、BSでは3世代に渡る日本軍隊映画が放送されている。

2014/12/06(土)

12:00-14:40 野性の証明 (78日) BS日テレ・・・日米安保自衛隊。 

12:00-14:54 二百三高地 (80日) BS-TBS・・・明治の皇軍

21:00-23:19 聯合艦隊司令長官 山本五十六 (11日) BS朝日・・・昭和の皇軍

というわけで、あらゆる意味で【対立】する2本の《靖国映画》のお話。

 

まずはDVDのパッケージ写真に注目。

  

 

あゝ決戦航空隊 [DVD]

あゝ決戦航空隊 [DVD]

 

 

見事なまでに【同じ】なのだ(笑)。

 

 

東宝三船敏郎演じる阿南惟幾切腹。 

東映鶴田浩二演じる大西瀧治郎切腹

これは偶然ではなく、後発映画の鶴田浩二が、わざと、三船敏郎への対抗意識でやったと言われている。

  

人間は「合理的なリアリズム」と「計算度外視のロマンティシズム」の2つを同時に持つ。

靖国」や「特攻」に関しても、この2つの政治思想が対立するんだが、その典型ともいうべき2つの映画である。

この2本は、映画会社的にも、主演役者的にも、政治思想的にも、あらゆる意味で、ライバル映画なのである。 

 

日本のいちばん長い日

公開:1967年  

製作:東宝

脚本:橋本忍砂の器)  

監督:岡本喜八ジャズ大名

主演:三船敏郎(最期の陸軍大臣・阿南惟幾


あゝ決戦航空隊

公開:1974年  

製作:東映 

脚本:笠原和夫仁義なき戦い二百三高地)/野上龍雄  

監督:山下耕作(緋牡丹博徒

主演:鶴田浩二(特攻の生みの親・大西瀧治郎

 

東宝VS東映。 

三船敏郎VS鶴田浩二。 
特攻否定のリアリズムVS特攻賛美のロマンティシズム。 
生き残ってこそ意味があるVS死んでこそ華。 
あらゆる面で真正面から対立する。

 

もちろん映画としての評価は、日本の戦争映画の代表作とも評される、東宝オールスター揃い踏みの「日本のいちばん長い日」の方がはるかに上で、東映の「あゝ決戦航空隊」は「軍服を着た仁侠映画」という感じである(笑)。その評価は「良い意味でも」正しいと思う。

 

東宝は日本の保守本流である。近代と資本主義と日米友好と自由市場経済と民主主義を擁護する。 

東映アウトローアナキズムである。近代を憎み、資本主義を憎み、民主主義も憎む。

「日本のいちばん長い日」は典型的な東宝映画であり、
「あゝ決戦航空隊」は典型的な東映映画である。

  

「日本のいちばん長い日」では、特攻の生みの親・大西瀧治郎

「日本人があと2000万人特攻すれば、日本は必ず勝てる」

と言い出す。

政治や軍を動かす責任者にこんな計算度外視なことを言い出すヤツが現れたらもうその国は終わりだ、何とかしないと日本は滅亡する、、、観客にそう思わせ、終戦工作の正統性を印象付けるシーンだ。

この映画で大西瀧治郎は狂気の「悪役」なのである。

 

対して、「あゝ決戦航空隊」の主人公・大西瀧治郎は、生きてる人間より、死者を見つめ続ける。
「日本が負ける、なんて口が裂けても言えない。日本が勝利すると言い続け、それを信じて死んでいった者たちに、どうやって顔向けが出来るのか? オレたちはウソを付いたのか?」
「このまま終わったら、日本に正義なんて無かったことになる。命を惜しめば名誉を失う。命と名誉のどちらが大切か? 命を捨ててこそ、死んで見せてこそ、日本の正義は守られる!」
こっちでは、終戦工作を遂行する海軍や外務省の方が「悪役」なのだ。
昨日まで一億火の玉と言いながら、天皇陛下の聖断が下ったと手の平を返す陸軍首脳部は、ヤクザ映画の自分勝手な悪党親分ソックリである。そりゃ演じてるのが同じ役者だから当然だが(笑)。

 

どっちの映画も、終戦が決まった後、これを認めない一部部隊が、聖戦完遂を叫び、反乱を起こす。

「日本のいちばん長い日」では、狂気をはらんだ反乱部隊は近衛師団長を惨殺するも、全ては空回りし、孤立し、自決して終わる。

「あゝ決戦航空隊」でも、史実がそうだから、流れは同じなんだが、反乱部隊の狂気の言い分に対して、映画は明らかに肯定的に肩入れするのだ。

 

「あゝ決戦航空隊」で、菅原文太が、兵舎の屋根から、皇居に向かって叫ぶ。

 

「陛下!あなたもなぜ特攻に行かないのですか?」


「陛下!あなたはお可哀想な方でございます!」

 

尊王攘夷昭和維新、神州不滅の果てに、全く正反対の、天皇批判が飛び出す。

仁義なき戦い」「二百三高」「大日本帝国」を書いた、戦中派・笠原和夫の「鬼の脚本」爆発である(笑)。

 

天皇陛下の正義を信じてアメリカと戦ったはずなのに、
その天皇陛下ご当人がアメリカと友好を結びたいと言い出したとき、
正義はどっちにあるのか? あくまで陛下か? それとも現人神も間違うことがあるのか?

 

「東北の飢える農民と、彼らの生き血をすする財閥、どちらが陛下の赤子なのですか?」・・・雪の226事件の青年将校の叫びと同じである。

226事件の根底に、天皇制破壊の危険な倫理を見たからこそ、昭和天皇は「誰もやらないなら、オレが近衛師団を率いて撃つ!」とまで激怒したのだ。

 

日本の正義を信じないヤツは例え首相でも将軍でも殺す、いや恐れ多くも聖上が道をお誤りなされた場合は陛下ですら容赦しない、、、「226」の思想、「特攻」の思想、そして「靖国」の思想の行き着く先はこうなる。

 

だいたいにおいて特攻賛美者は靖国賛美者であり、天皇制賛美者でもあるが、ここに「アメリカ」という要素を加えれば、

「《死》に魅入られた、特攻・靖国の思想」と

「あくまでも平穏な《生》を選ぶ、天皇の思想」は

激しく対立することになる。

 

尊皇攘夷VS文明開化

神風連VS鹿鳴館

226青年将校VS昭和天皇

特攻VS終戦工作

靖国神社VS日米安保

ロマンチシズムVSリアリズム

 

もし、天皇陛下がアメリカと握手したら、 英霊特攻機は皇居に突っ込むのだ。

 

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