前回は「世界史」の問題だったが、
試験に出る!?麻生さん「ナチス/ワイマール」発言問題集(世界史編)。 - 在日琉球人の王政復古日記
今回は現代文、つまり国語の問題である。よって価値判断も歴史認識も含まない。
つまり、
日本国憲法改正が正しいか?正しくないか?
靖国神社参拝が正しいか?正しくないか?
ナチスが正しいか?正しくないか?
などなどの価値判断は無視する。どっちだろうが問題としない。
そして歴史認識が正しいか間違ってるかも問題としない。それは前回の世界史編をご参照。
今回は、ただただ、日本語の文章として、麻生さんが何を主張していると読めるのか、のみを考える。テキストは同じくこれを使う。
【保存資料】「麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細」~(いわゆる)麻生さん「ナチス・ドイツの手口に学べ」発言~<麻生財務相>子ども産まない方が問題…社会保障費巡り発言 - 在日琉球人の王政復古日記
さて発言の内容から、麻生さんは、何が好ましい【OK】と考え、何が好ましくない【NG】と考えているのか?、列挙していこう。
★ワイマール憲法=【OK】
『当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法』と評価していることからも明らか。
★ナチス=【NG】
『憲法はよくても、そういうことはありうる』つまり、良いモノから悪いモノが生まれた、という表現だから、ナチスは悪いと判断している。
★民主主義=【どちらとも言えない】
『僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが』というものの、その民主主義がナチス【NG】を生んだことも指摘してわけで、民主主義は【OK】でも【NG】でもありえる存在ということだ。
★日本国憲法改正=【条件付OK】
原則として【OK】なんだが、条件がある。それは、、、
★静かな雰囲気の中での日本国憲法改正=【OK】
★狂騒や喧騒の中での日本国憲法改正=【NG】
『今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ』ということで、麻生さんはとにかく何をするにしても大騒ぎを嫌う傾向がある。
靖国参拝「も」静かな雰囲気でやるべきだ、ということは、日本国憲法も静かな雰囲気で改正すべきだと思ってるわけだ。というわけで、
★静かな雰囲気の中での靖国神社参拝=【OK】
★狂騒や喧騒の中での靖国神社参拝=【NG】
これも上記同様である。
★日本のマスコミ=【NG】
『いつから騒ぎにした。マスコミですよ』から明らか。
ここまでで明確なのは、麻生さんは何をやるにしろ、とにかく、
静かな雰囲気を【OK】と考える。
狂騒や喧騒を【NG】と考える。
この部分でブレはない。
さて、問題の部分。
憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。
麻生ファン(というか自民党ファン)の中には、この『あの手口学んだらどうかね』に、発言に無い『反面教師として』という文言を無理やりネジ込もうとする人が多いが、「否定」を表現する句を自由に挿入できるのなら、どんな文章も意味を正反対に変えられる。
例えば「私はあなたが好きです」という文章に、「じゃない」をネジ込めば、「私はあなたが好き《じゃない》です」という文章になる。これがOKなら、もはや文章を解釈すること自体が馬鹿馬鹿しい。
そもそも、静かな雰囲気の中での日本国憲法改正を【OK】と主張し続けてきた麻生さんが、ナチスによる静かな雰囲気の中でのワイマール憲法改正を「反面教師」=【NG】と言い出したら、前後の論旨が正反対で、支離滅裂である。
よって、
★静かな雰囲気の中での日本国憲法改正=【OK】
なんだから、
★ナチスによる静かな雰囲気の中でのワイマール憲法改正=【OK】
と言ってることは間違いない。それ以外の解釈のしようはない。
しかしこれは、
★ワイマール憲法=【OK】
★ナチス=【NG】
という麻生さんの意見に矛盾する。
最初と最後で言ってる事があべこべ。麻生さんは本当に支離滅裂な人間なのか?
そうではない解釈が一つだけある。どっちかが「ウソ」な場合だ。つまり、
ナチス=【NG】がウソなのか?
ナチスによる静かな雰囲気の中でのワイマール憲法改正=【OK】がウソなのか?
ウソだとすれば、なぜウソを付いたのか?
これにはかなり明確な判断材料・状況証拠がある。実際の音声である。
これで、誰にでも、明白である。これで判らない日本語話者はいないだろう。
このyoutubeには、朝日新聞のテキストにはない情報、文字にはできなかった情報、「その場の雰囲気」つまり「聴衆の反応」が残されている。
40秒の『いつから騒ぎにした。マスコミですよ』の発言で、聴衆は拍手している。
麻生さんはマスコミを【NG】と考えており、それに拍手した聴衆も同じくマスコミを【NG】と考えているわけだ。
1分10秒の『あの手口学んだらどうかね』の発言に、同じ聴衆は笑っている。
聴衆はなぜ笑ってるのか? それは麻生さんが「ウソ」をついたと判断したからだ。
なぜ聴衆は麻生さんのウソを笑ったのか?、、、面白いからである。
面白いウソ、、、つまりは「冗談」「ジョーク」というヤツだ。
ただし、ジョークというのは100%まったくのウソではない。半分ホンネが混じっているからこそ笑えるのである。
狂騒や喧騒を【NG】と考える麻生さんは、たとえ【NG】のナチスの手口であろうと、静かな雰囲気の中での憲法改正【OK】というその部分のみで【OK】と表現したわけだ。
つまりは言い過ぎであり、誇張だ。しかしそこにはホンネも含まれている。
麻生さんは、ナチスをネタに「ブラックジョーク」をかましたのである。
麻生さんは、本気で、マジで、ナチスのワイマール憲法改正の手法で日本国憲法を改正しよう!、、、なんて言ってない。全面肯定なんてやってない。
同時に、麻生さんは、ナチスのワイマール憲法改正を「反面教師にしよう」なんて言ってない。完全否定もしていない。
麻生さんは、聴衆を笑わせるために、ふざけたのだ。
日本語として、そうとしか解釈は出来ない。
もし違うのというのなら、納得できる意見が伺いたい。
さて、お次は、はたして、ナチスをネタにジョークをかましていいのか?、日本国憲法改正は静かにやるべきか?大騒ぎしてやるべきか?、という価値判断の話題に移る。
試験に出る!?麻生さん「ナチス/ワイマール」発言問題集(倫理政経編)。 - 在日琉球人の王政復古日記