在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

19世紀清国→20世紀大日本帝国→21世紀中華人民共和国~支那文明圏覇権帝国の変遷。

前世紀前半、亡国、じぇねえや、某国では「満蒙は日本の生命線」という合言葉が流行った。

国民は本気でそう信じた。しかし満蒙を失った後、その国は高度経済成長を達成する。

21世紀の今、その国民から、満蒙を、その手前の朝鮮半島を、もう一度領有したいという欲望は消え失せている。

今から振り返ると、なんだか悪い夢を見ていたようなものである。

 

21世紀初頭、暴国、じぇねえや、某国も「南シナ海東シナ海支那の生命線」と言わんばかりの膨張政策を取っている。しかし、本当にその海域を必要としてるのか?

 

困ったことに、大日本帝国だろうが、中華人民共和国だろうが、国家というのは合理性だけで動いているわけではないのだ。

 

来日中のフィリピン大統領、中国をナチスにたとえる 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

2015年6月3日

来日中のフィリピンのベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)大統領は3日、都内で行った講演で、中国をナチス・ドイツ(Nazi)になぞらえ、世界各国は中国に対し宥和政策をとり続けることはできないとの見解をほのめかした。

(略)

さらに、「私は歴史学を学んだアマチュアにすぎないが、ここで思い出すのは、ナチス・ドイツがさぐりを入れていたことと、それに対する欧米諸国の反応だ」と述べ、第2次世界大戦(World War II)勃発の前年にナチス・ドイツチェコスロバキア・ズデーテン(Sudetenland)地方を併合した際、「誰もやめろと言わなかった」と指摘した。

 

ドイツだって、昔は「生存権の確保」という名目で、軍事力を使って無理やりチェコを占領し、バルカンを占領し、東欧を占領し、フランスを占領し、ロシアに攻め込んで、世界中から嫌われ、散々殺し合った挙句、大敗北、国を2つに分割された。結局、軍事力では何も得られなかった。

しかし、それから70年後、同じドイツ人は「EU」という経済的な方法で、フランスと同盟し、バルカンも東欧も経済圏に置き、スターリングラードの戦いで大量の犠牲を払ったウクライナまで、ドイツ軍1個中隊を送ることなく、心情的な味方にしてしまった。

ヒトラーの夢は、メルケルが実現したのだ。

 

東アジアも同じ話で、このフィリピンも、前世紀には「とある極東の島国」の軍事力に占領された経験を持つ。

 

陛下「深い痛恨」大戦に言及…宮中晩餐会 (読売新聞) - Yahoo!ニュース

 天皇陛下は冒頭のあいさつで、先の大戦時にフィリピンで多くの国民が犠牲となったことに触れ、「私ども日本人が深い痛恨の心と共に長く忘れてはならないことであり、戦後70年を迎える本年、犠牲者へ深く哀悼の意を表します」と述べられた。

 これに対し、アキノ大統領は「過去に経験した痛みや悲劇は、相互尊重や尊厳に根ざした関係構築に努めるという貴国の約束によって癒やされてきました」と英語でスピーチした。

 フィリピンの国賓を迎えた晩餐会は平成に入って3回目で、陛下が戦争被害に言及されたのは初めて。

 

アキノ大統領はこうも発言している。

 

日本の戦後70年「平和に貢献」…アキノ大統領 (読売新聞) - Yahoo!ニュース

 国賓として来日中のフィリピンのアキノ大統領は3日、参院本会議場で演説し、戦後70年の日本の歩みについて、「平和への貢献に疑いの余地はなく、より公平で進歩的な世界秩序を創り出すことに深く関与してきた」と述べ、高く評価した。

 

大東亜戦争当時の日本(大日本帝国)にはヒドイ目にあったが、戦後の日本(日本国)は良い国で友好的だった。

こういう意見はフィリピンだけではない。

 

ハワード元豪首相「戦後、日本は国際社会の良きメンバーだった」・・韓国ネットは「失望した」「首脳会談をしなければならない」 (FOCUS-ASIA.COM) - Yahoo!ニュース

25日の朝鮮日報によると、済州フォーラムのために訪韓したハワード元首相は21日に同紙のインタビューに応じた。この中で「韓国や中国と比較はできないが、オーストラリアも第2次世界大戦当時、日本軍の爆撃を受け、捕虜は過酷な処遇を受けた」としたうえで、「それでもオーストラリアが日本から一貫して言われ続けたのは“遺憾だ”という表現だけだった」と紹介した。

ハワード元首相は、「我々は日本の残虐行為を良く知っているが、今はそれを乗り越えることがみなにとって利益になることもよく知っている。戦後、日本は国際社会の良きメンバーだった」と述べた。

 

前インドネシア大統領「悲痛な韓国の歴史は分かるが、日本とは友人になるべき」 | Joongang Ilbo | 中央日報

2015.05.23
  大統領在任中に不安定なインドネシア政情を安定させ、国格を高めたという評価を受けているユドヨノ前大統領は「韓国の悲痛な歴史をよく知っているが、前を見ることも重要だ」とし「我々はみんな友人が必要だ。韓国と日本も同じだ。過去を直視するものの未来に目を向ける均衡を維持しなければいけない」と助言した。 

 

「戦前の日本は迷惑千万だったが、戦後の日本は良き隣人。」

フィリピンとほぼ同じ意見である。そしてこれはオーストラリアとインドネシアだけでもない。アメリカも西ヨーロッパも、つまり世界標準の認識なのである。

 

2つの《日本》~「日本の歴史家を支持する声明」はぜんぜん「反日」ではない。「親日」かつ「若干の韓国批判」である。 - 在日琉球人の王政復古日記

彼らは本心から「親《日》」である。
《日》とは、戦後の(9条を守り、かつ、アメリカと西ヨーロッパに味方した)「日本国」だ。
同時に、
彼らは本心から「反【日】」なのだ。
【日】とは、戦前(なかんづく昭和初期)の(ナチスと組んで、大東亜戦争をやらかした)「大日本帝国」である。

政治的に、歴史的に、日本は「2つ」ある。
「戦後の日本国」と「戦前の大日本帝国」。

この2つを、別々のものだ、一緒くたにしない、というタテマエが、「ヤルタ・ポツダム体制」「東京裁判」「サンフランシスコ条約」であり、欧米(=世界)の日本救済策、親《日》的態度なのである。
彼らが、日本は価値観を共有する同盟国、日本は素晴らしい先進国、と賞賛する時の日本は、「戦後の日本国」であり、「戦前の大日本帝国」ではないのだ。

 

対して、

「戦前の大日本帝国も、戦後の日本国も、同じ国なんだから、戦前が悪だったんだから、今も悪だ」

というのが韓国人のメインストリームの理屈である。

 

朴槿恵姐さんもその理屈で外交を展開してきたのだが、中国共産党タカ派外交・東アジア覇権、日本経済の復活、韓国経済の不振、日米同盟の強化など、「韓国の日本への基本認識」と「21世紀の東アジア情勢」に整合性が取れなくなってきた。

そうなったら、今の今まで、朴槿恵姐さんの対日強行外交を焚き付けてきた韓国マスコミが豹変し、「歴史問題と経済・安全保障問題、つまり過去の問題と現在の問題は分けよう」という、日本人からすれば「オイオイ」と苦笑するしかない、ミもフタもない(笑)ベタベタな国益論を持ち出すようになった。

 

オーストラリア元首相にインタビューした朝鮮日報

インドネシア元首相にインタビューした中央日報

朴槿恵姐さんに「中国共産党の脅威が迫っているのに反日外交はマズい。強行一辺倒をやめて、オーストラリアやインドネシアみたいなスタンスを取れ」と暗に要求しているわけだ。

個人的には「韓国世論を硬直化させてきた朝鮮日報中央日報に言う資格があるのか?」と思わないでもないが(笑)、まあどこの国もよく似たようなもんである。

 

「戦前の大日本帝国」と「戦後の日本国」は違う。

それが正しいとして、じゃあ 「戦前の大日本帝国」はこの世から消えて無くなったのか?

そうではないのだ。

 

「世界史」といういつ終わるか判らないロングランミュージカルは、同じ「役者」が同じ「配役」を演じ続けているわけではない。「配役」は同じでも「役者」は入れ替わる。

世界海洋帝国という「役回り」だって、「役者」が、スペイン王国だった時代も、大英帝国だった時代も、アメリカ合衆国の時代もある。

日本史だって、平家が権力者だった時代もあれば、鎌倉北条氏が権力者だった時代もあれば、足利将軍家が権力者だった時代もあれば、徳川家がが権力者だった時代もある。配役はあっても、役者は常に入れ替わる。

 

東アジア、支那文明圏の覇権を握る者も、常に漢民族だったわけではない、

元がモンゴル人だったのは有名だが、隋や唐だってエスニシティ的に見れば、皇帝は純粋な漢民族ではなく、中央アジアからやってきた、乱暴に言えばトルコ人だったのである。

19世紀の清国だって満州人だった。じゃあその後はどうか?

なんとなく清国の次は孫文中華民国で、その次が毛沢東中華人民共和国、みたいな感覚が、日本人にも当の支那人にもあるけれど、実はその間に「もう一つの中華帝国」が挟まっている。

 

1840年、アヘン戦争敗北で清国の凋落が決定的となり、支那文明圏から支配的帝国が消滅する。そこから1912年中華民国建国まで支配的帝国は空白か?といえばそうではない。実は中華民国は1945年のほんの一瞬以外、支那文明圏を支配したことはないのだ。

実は、1894年の日清戦争によって、支那文明圏の主人公は清国から大日本帝国に交代したのである。

仮に支那文明圏の主人公を「中華」と呼ぶならば、「中華」は、支那人から、史上初めて日本人に交代したのだ。

上に書いたとおり、別に珍しい話ではなく、「中華」が、漢民族から中央アジア人みたいな異民族に交代した事例はいくらでもあるのだ。

「中華」としての日本は、1894年から1945年まで、支那文明圏の支配者だった。その後、また空白期間を経て「中華」は中華人民共和国に移ろうとしている。

 

「中華」の歴史は、

19世紀・清国→20世紀前半・大日本帝国→21世紀・中華人民共和国

 と流れている、と考えると合理的だろう。

 

つまり、満州人の清国の後継国家が日本人だったように、大日本帝国の歴史的・精神的・政治的な後継国家は、同じ日本民族の日本国ではなく、支那人中華人民共和国なのだ。

今の支那が、南シナ海東シナ海チベットウイグルでやってることは、前世紀の日本の対華「21か条要求」や「盧溝橋事件」や「上海事変」と同じなのである。

 

というわけで、フィリピンのアキノさんは、中華人民共和国ナチスドイツになぞらえたが、もっと適切な事例が東アジアにはあるのだ。

そんなことは大東亜戦争を経験したフィリピン人であるアキノさんは百も承知、二百も合点だろうが、いくらなんでも、天皇陛下と晩餐会するのに、「今のチャイナがやってることは、前世紀のジャパン・エンパイヤと同じだ」とは言えない(笑)。

また、欧米向けアピールには、マイナーな大東亜戦争より、メジャーなヒトラーの事例の方がピンと来る、という理由もあっただろう。

 

だから、大東亜戦争大日本帝国に批判的な日本の左派やリベラル派は「甦った大日本帝国」である中華人民共和国に批判的でないとおかしいのである。

南シナ海は話し合いで」なんていう理屈は、戦前の支那人民に「抵抗はやめて、日本軍の支配下で静かに暮らせ」というようなもんだ。それが正義なのか?

 

逆に、支那に対して「歴史的にも明らかな外部領域に軍事力を展開して領土拡張するのは侵略行為だ!」というのなら、韓国併合だって、満州事変だって、あからさまに「南シナ海埋め立て」と同じなのであって、一部の保守派が主張する「日本は侵略していない」という理屈はかなり無理がある。

 

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