致死率4割は恐ろしいが、今のところ空気感染はしないようだし、中東で3年1000人程度の発症率なら、感染率・発症率共にそれほど高いほうではないから、まあ不幸中の幸いである。
WHO、韓国MERSの地域拡散・空気感染ないことを再確認…9日に合同調査 (WoW!Korea) - Yahoo!ニュース
ドゥジャリク報道官は「WHOのリスク評価と現在まで確保された情報によると、韓国でMERSが地域社会に拡散したり、空気感染したりするという証拠はない」と再確認した。
サウジアラビアで2012年に初めてMERSが発病してから感染者は1024名、死者は450名に達する。
伝染病は恐ろしい。
20世紀初めに爆発的に流行した「スペイン風邪」なんか
感染者500,000,000人、
死者50,000,000~100,000,000人、
と言われている。
なんと同時期の第1次世界大戦の戦死者より多い。
特に感染率はMERSとは比較にならない。空気感染の恐ろしさだ。
しかも当時の世界人口は17億人だから、70億人の現在で換算すれば死者が2億人以上出た計算である。
さらに凄まじいのが14世紀のペストで、全世界で約85,000,000人を殺したらしい。当時の世界人口は約4億人といわれている。現在でいえば約14億人がペストで死んだ計算となる。
伝染病は人類の歴史を大きく変えてきた。
人間が自主的にやらかす戦争や革命や産業や宗教より、実は、伝染病のほうが歴史を変革する原動力だったのではないか?とも言われている。
よく「織田信長が本能寺で討たれて無かったら?」「ミッドウェーで日本が勝っていたら?」みたいな歴史のIFがあるが、もしも、歴史上の伝染病の、その登場時期や、感染力や、症状の重篤性が異なっていたら・・・?
たとえば、あのアフリカ発祥のエボラ出血熱が、21世紀ではなく、17世紀に登場してたら? ウイルスにとっては、それくらいのタイムラグは大した話ではなかろう。
17世紀当時、大西洋は「三角貿易」の時代である。
イギリスを始めとするヨーロッパは、アメリカ新大陸が産出する銀や砂糖や綿花が欲しい。
そこでイギリスは、まず、アフリカに、武器や綿製品やラム酒を売りに行く。
アフリカは、その代金の代わりに、黒人奴隷を、イギリスへではなく、中南米や北米へ輸出する。
中南米や北米は、イギリスへの砂糖や綿花の輸出急増で労働力が欲しかったので、アフリカの黒人奴隷を買う。そして黒人奴隷の生産する砂糖や綿花がイギリスに流れる。
ヨーロッパ→アフリカ→アメリカ→またヨーロッパ。
このサイクルによって膨大な富がイギリスに蓄積され、それを元手に産業革命が発生する。
産業革命前まで、世界一の金持ち国家は、おそらく明・清つまり支那だったのである。それが逆転してヨーロッパが世界一の金持ちとなる。
産業革命は高性能な武器や艦船を生産し、その圧倒的な軍事力でイギリスは世界を植民地化する。ヨーロッパの圧倒的優位が、たとえば日本に明治維新をもたらし、21世紀現在の、欧米が先進国、アジアアフリカが後進国、という世界情勢の基礎となっている。つまり17世紀の三角貿易がその後の世界史を作ったのだ。
しかし、三角貿易全盛期に、アフリカ西海岸にエボラ出血熱が発生していたら?
・・・ある日、アメリカ・メキシコ湾のニューオリンズ沖を漂流している帆船が発見される。イギリス国籍の奴隷運搬船であった。
ニューオリンズ港まで繋留してみると、奴隷はおろか、船員から船長にいたるまで、全員が血まみれで死んでいた。反乱が起こったのか? 不気味に思いつつニューオリンズの住人は、黒人の死体は海に捨て、白人の死体は市外墓地に埋葬する。
その数週間後、ニューオリンズの街に異変が発生する。その異変は奴隷を利用したプランテーションで栄える南部一帯に広まっていく。
同じ時期、同じような幽霊船が漂着した、カリブ諸島のサトウキビ畑でも、南米の農場でも、異変が始まっていた。
そして「新大陸で大混乱が発生している」というニュースと共に、黒人奴隷が作った砂糖や綿花と、そして「見えない何か」を満載した貿易船が、イギリスのリバプールに着岸する。
数年後、イギリスだけでなく、ヨーロッパ中が血まみれの死体で覆われた・・・
産業革命が無ければインドも支那も日本も黒船を見なくて済んだかもしれない。
ヨーロッパは世界の田舎。世界で一番のお金持ちは中華帝国のまんまである。
エボラ出血熱で覆われれば、アメリカ合衆国だってその歴史が変わっていただろう。南北戦争も無かったかもしれないが、国内の発展も困難だっただろう。
もしも超大国アメリカ合衆国が生まれなかったら、その後の世界はどうなっていたか? ライバルのいない無敵のソ連が世界中を共産主義革命していた可能性もある。
お次は、およそ500年前。
コロンブスがアメリカ大陸を「発見」した時、ヨーロッパ人は始めて「梅毒」に感染する。もともと梅毒は新大陸の風土病だった。
逆に、スペインのコンキスタドールたちが極少人数で、数万人も擁する絢爛豪華なインカ帝国を滅亡できたのは、銃の力でもキリスト教の知恵でもなく、彼らが持ち込んで旧大陸の風土病「天然痘」が最大の武器だった。
旧大陸のスペイン人にはすでに免疫があったが、新大陸のインカ人は天然痘にまったくの無防備だったために、大流行を引き起こし人口が急減、それが南米独自の文明を崩壊させたのである。
しかし、もしも、ヨーロッパと新大陸の間で「交換」した病気の性質が逆だったら?
もし新大陸の梅毒が、天然痘並みの感染力と致死率だったら?
もしヨーロッパの天然痘が、梅毒並みの感染力と致死率だったら?
もちろんスペイン人とセックスしたインカ帝国の住民は下半身に問題を抱えたし(笑)、死者も出ないわけではなかったが、文明の崩壊には至らなかっただろう。
逆にスペイン人は新大陸の悪病で全滅していたかもしれないし、もっと運が悪ければ、感染して発症前にスペインに帰国していたかもしれない。そうなれば、太陽が沈まないスペイン帝国のほうがインカ帝国のように急速に崩壊したかもしれない。
スペインに上陸した、中世のペストに匹敵する「天然痘のような梅毒」が、世界を征服する「直前」のヨーロッパに襲い掛かる。ヨーロッパの人口が急減すれば、大航海に出る意味も無くなる。
「新大陸には悪魔の病がはびこっていて、とてもヨーロッパ人が住める場所ではない」となれば、宗教対立で新天地を目指したピューリタンたちも、アメリカ新大陸ではなく、アフリカやアジアを目指したかもしれない。
アメリカ東海岸ではなく、アフリカの西海岸に「ボストン」や「ペンシルバニア」や「バージニア」という植民地が出来たかもしれない。
となると、白人音楽と黒人音楽の融合であるジャズは、アフリカで「白人特有の音楽」として生まれたかもしれない。
そして100年後、インカ帝国はそのまま繁栄し、航海技術が発達する。
そういや、昔々に、海の向こうからやってきて、なんだかんだと乱暴なことをやらかしたと思ったら、急にインカの家畜と同じ病気で全滅した、変な野蛮人たちの故郷「旧大陸」の存在を知ったインカ人たちのほうから、大西洋を越えてきたかもしれない。
100年前、新大陸からやって来た伝染病の大流行で荒廃したマドリッドやロンドンは、インカ帝国遠征隊の攻撃にあっけなく陥落する。
病気を防げなかった無能なナザレのイエスの教会は破壊され、その跡地には偉大なるインカの創造神ビラコチャや太陽神インティの巨大神殿が建設される。
病で衰えた白人たちも、ビラコチャやインティを救い主として受け入れたかもしれない。
人間の歴史は伝染病に左右されてきた。
人間の未来もまた同様であろう。
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