例えるなら、ジョニー・デップやブラッド・ピットを歌舞伎座に連れて来て、仮名手本忠臣蔵で大星由良助をやらせるようなもんであろう。
賞は逃して当たり前。ニューヨークで上演を続けただけで見事なモノである。
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「渡辺謙は私の王様」 主演女優賞に輝いたケリー・オハラが感謝のスピーチ (サンケイスポーツ) - Yahoo!ニュース
ただ、この「王様と私」というのは、非欧米人、特にアジア人で、さらに政治を考える人にとっては、手放しで楽しんでイイお話でもない。
主人公のイギリス人未亡人家庭教師は、シャムの王様に、あれこれ文句をいう。
やれ一夫多妻制度を止めろ、やれ側室を置くな、やれ自由恋愛・恋愛結婚を認めろ、やれ身分制度を解体しろ。
シャムの王様からは、イギリス人未亡人に、亜熱帯気候に合わない変な服装を止めろ、キリスト教を棄教しろ、なんて要求はしてないのに。
「王様と私」とは、わざわざ西欧から、独自のシステムで上手く回していたアジアの王国にやってきて、野蛮な風習風俗を変更しろ、欧米のルールに従え、国を開いて欧米と商売しろ、と要求してくる話なのだ。
つまりペリー提督の黒船とまったく同じである。
この女性家庭教師は、吉田松陰の敵なのである。
もっと言えば、ハルノートや、ポツダム宣言や、GHQの占領政策をも同じだし、
さらに、クジラやイルカを殺すな!と言ってくる連中も、彼女の末裔である。
「王様と私」はシャム=タイを舞台にしたフィクションだが、日本ではこの家庭教師は本当に実在した。終戦後、今上陛下の皇太子時代に教育係となったヴァイニング夫人である。
ヴァイニング夫人は、安倍ちゃんの集団自衛権なんか全く認めない、絶対平和主義のクエーカー教徒であった。
「王様と私」はリアルな日本史なのだ。
ヴァイニング夫人だけの話ではないが、明治維新以降の「皇室も欧米風にやりなさい」という内外からの意識的・無意識な圧力が、皇室に一夫一妻制度を採用させ、現在の皇位継承問題・男系天皇の危機を引き起こしたわけだ。
フェミニズムな敬称【皇后陛下】という名のステルス時限爆弾。 - 在日琉球人の王政復古日記
劇中の有名な"Shall We Dance?"は象徴的なシーンだ。
欧米の圧倒的優位を前に尊皇攘夷を捨て、文明開化を選択した明治政府がまずやったのが「鹿鳴館」だった。
"Shall We Dance?"~踊りましょう。
翻訳すれば、
われわれは踊れますか?
あなた(アジア)は、わたし(欧米)と同じステップを踏めますか?
アジアも、欧米のシステムでやれ。
ということだ。