在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

「王様と私」と「皇太子殿下とヴァイニング夫人」~鹿鳴館から捕鯨反対まで。

例えるなら、ジョニー・デップブラッド・ピット歌舞伎座に連れて来て、仮名手本忠臣蔵で大星由良助をやらせるようなもんであろう。

賞は逃して当たり前。ニューヨークで上演を続けただけで見事なモノである。

 


2015 Tony Awards Show Clip: The King And I ...


Yul Brynner and Deborah Kerr perform "Shall We ...

 

「渡辺謙は私の王様」 主演女優賞に輝いたケリー・オハラが感謝のスピーチ (サンケイスポーツ) - Yahoo!ニュース

 

 

ただ、この「王様と私」というのは、非欧米人、特にアジア人で、さらに政治を考える人にとっては、手放しで楽しんでイイお話でもない。

 

主人公のイギリス人未亡人家庭教師は、シャムの王様に、あれこれ文句をいう。

やれ一夫多妻制度を止めろ、やれ側室を置くな、やれ自由恋愛・恋愛結婚を認めろ、やれ身分制度を解体しろ。

シャムの王様からは、イギリス人未亡人に、亜熱帯気候に合わない変な服装を止めろ、キリスト教を棄教しろ、なんて要求はしてないのに。

 

王様と私」とは、わざわざ西欧から、独自のシステムで上手く回していたアジアの王国にやってきて、野蛮な風習風俗を変更しろ、欧米のルールに従え、国を開いて欧米と商売しろ、と要求してくる話なのだ。

 

つまりペリー提督の黒船とまったく同じである。

この女性家庭教師は、吉田松陰の敵なのである。

 

もっと言えば、ハルノートや、ポツダム宣言や、GHQの占領政策をも同じだし、

さらに、クジラやイルカを殺すな!と言ってくる連中も、彼女の末裔である。

 

王様と私」はシャム=タイを舞台にしたフィクションだが、日本ではこの家庭教師は本当に実在した。終戦後、今上陛下の皇太子時代に教育係となったヴァイニング夫人である。

ヴァイニング夫人は、安倍ちゃんの集団自衛権なんか全く認めない、絶対平和主義のクエーカー教徒であった。

王様と私」はリアルな日本史なのだ。

 

ヴァイニング夫人だけの話ではないが、明治維新以降の「皇室も欧米風にやりなさい」という内外からの意識的・無意識な圧力が、皇室に一夫一妻制度を採用させ、現在の皇位継承問題・男系天皇の危機を引き起こしたわけだ。

 

フェミニズムな敬称【皇后陛下】という名のステルス時限爆弾。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

劇中の有名な"Shall We Dance?"は象徴的なシーンだ。

欧米の圧倒的優位を前に尊皇攘夷を捨て、文明開化を選択した明治政府がまずやったのが「鹿鳴館」だった。

 

"Shall We Dance?"~踊りましょう。

翻訳すれば、

われわれは踊れますか?

あなた(アジア)は、わたし(欧米)と同じステップを踏めますか?

アジアも、欧米のシステムでやれ。

ということだ。