在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

「高度な現代戦」に「徴兵制」はムダ。ただしイスラム国ISISが「高度な現代戦」をやってるわけではない。

安保法制と集団的自衛権解釈改憲できるのならば、徴兵制だって解釈改憲で合憲にできる。

 

「憲法解釈変えたら次は徴兵制ですよ」民主・枝野幹事長:朝日新聞デジタル

枝野幸男民主党幹事長

 (安倍政権が、集団的自衛権を行使できるよう憲法解釈を変更する閣議決定をしたことについて)憲法解釈を都合よく変えてよいとなったら、次は「徴兵制」ですよ、みなさん。徴兵制だって、集団的自衛権と一緒で、憲法に明確に(禁止と)は書いていない。集団的自衛権は(憲法に)駄目と書いていませんが、長年の解釈で自民党自身もだめと言ってきた。いまは「徴兵制なんて考えていません。憲法違反」と、国会で答えている。だが、「(憲法は)苦役は駄目だと言っているだけで、徴兵は苦役じゃない、名誉だ」と言い出せば、憲法違反じゃなくなる。

 勝手にときの権力者の解釈で(憲法解釈を)変更できることにしたら、いずれ間違いなく、徴兵制憲法違反じゃないと言い出す権力者がでてくる。そうなってからでは、遅い。(仙台市内の街頭演説で)

 

という意見に対して、自民党集団的自衛権賛成派、特に軍事畑の人からの反論がある。

 

ズバリ、徴兵制は不要。

 

 

民主党が吹聴する「徴兵制復活」 “ヒゲの隊長”が一刀両断 (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK

 「現代戦において、シロウトが突然加わって部隊で機能を果たすというのは、ほぼ無理な話だ」

  「穴を掘って近接戦闘で小銃を撃つ、という時代ならいざ知らず、現代戦では、高性能の兵器やシステムを使いこなすことが求められる。高校や大学を出て入隊した若者がこうした域に達するには、大体10年かかる。日本人の価値観に照らしても、徴兵制が受け入れられる土壌はない。徴兵制の導入は非現実的というほかない」

 

徴兵制で基礎訓練しかしてない兵隊をたくさん集めても、21世紀のハイテク化・専門化した「高度な現代戦」は不可能。必要なのは少数でも精鋭、確固たる意思と高度な教練を受けた優秀な志願兵だ。だから「高度な現代戦」を戦う上で、徴兵制なんて意味がないしムダ。

 

いかにも専門的で、思わず納得しそうになるご意見だが、

しかし、世界で最も「高度な現代戦」に習熟してるのがアメリカだとしても、その次かその次くらいに「高度な現代戦」を想定しているイスラエルは未だに(理屈の上ではムダなはずの)徴兵制を敷いている。

いやいや、イスラエルは国情的に特殊で、日本には当てはまらない、とも言えるが、

「当てはまらない」のは、何も日本だけではない。

 

今を「21世紀」というけれど、21世紀は「高度な現代戦」だというけれど、それは先進国の正式の軍隊の話でしかないのだ。

そもそも「高度な現代戦」の大半はいまだ理論でしかなく、幸いなことにまだ現実にはなっていない。アメリカだってロシアだって、原子力潜水艦空母の沈め合いなんていう現代の海戦はほとんど経験していない。最先端のステルス戦闘機同士の大規模空中戦も経験していない。ハイテク制御で複合装甲の戦車が何百台も対峙して殴り合いなんてことも経験していない。

 

20世紀後半から21世紀まで、朝鮮戦争イスラエル・アラブ中東戦争、イギリス・アルゼンチンのフォークランド紛争、イラン・イラク戦争くらいが、双方がその時点で最新のハイテク武器を駆使した「高度な現代戦」と言える数少ない事例である。

ベトナム戦争はもちろん、ユーゴスラビア紛争も、今のロシアとウクライナすら「高度な現代戦」とは言い難いだろう。

残りの大半の戦争は、「高度な現代戦」の先進国と、前世紀のまんまの後進国の軍隊、または国軍ですらないゲリラとの戦いなのだ。

 

21世紀の「高度な現代戦」というけれど、現実の21世紀、イスラム国ISISの連中や、アフリカのワケの判らない皆さんは、トヨタヒュンダイの中古ピックアップトラックに、カラシニコフのコピーを抱えた軍服も着ていないサンダルを履いた山賊同然の連中を乗せて戦争しているのである。科学的根拠ゼロのコーランを教え込んで体に爆弾をまきつけて特攻してくるのである。それが21世紀の戦争だ。

 

どこらへんが、ハイテク化・専門化した「高度な現代戦」なのか?

 

そして、日本は、短期中期的に、イスラエル軍ともデンマーク軍ともイギリス軍とも、ブラジル軍やポーランド軍やトルコ軍やタイ王国軍クラスとすら、戦争する可能性は無いだろう。

支那だけは例外としても、日本が集団的自衛権で戦う相手は、アフリカや中東のカジュアルファッションな連中が最有力候補であり、予想される最も「高度な現代戦」な相手で、普段は畑の野菜を盗んだり、闇タバコの売買を商売にしてる、金さんの北朝鮮軍なのだ。

 

イスラム国ISISは、間違いなく21世紀の戦争だが、どう見ても「高度な現代戦」をやってるわけではない。

イスラム国ISISの教育担当が、1月前までヨーロッパの低所得者アパートでチンピラやってた移民3世のジハード戦士たちに、高度な軍事訓練をしたり、ハイテク兵器の使い方を教えたり、クラウゼビッツの講義をしてるとはとても思えない。

しかし、そんな連中相手に、世界で一番の「高度な現代戦」なアメリカが楽勝ではないのだ。

 

自衛隊集団的自衛権も行き着く先は、ハイテク化・専門化でもなんでもなく、おそらく、地雷を注意して、自爆テロに注意して、物陰から撃って来るカラシニコフを避けて、撃ち返す仕事になる。

失礼を承知で言えば、平成の自衛隊の相手は、心理状態も順法精神も戦略戦術も、大東亜戦争末期の大日本帝国陸軍に近いレベルの皆さんなのだ。

 

ヒゲの隊長は「穴を掘って近接戦闘で小銃を撃つ、という時代ならいざ知らず」と言うが、「いざ知らず」もクソも、21世紀のアメリカ軍は中東で「その通り」戦ってるのだ。塹壕を掘るか、ヘリが救援に来るか、の違いくらいだ。

そんなの、100年前の日露戦争から、支那事変、太平洋戦争、ベトナム戦争とどこが本質的に違うのか? 

もちろん医学も発達し、ロジスティックスも重視されてるから、無茶苦茶だった日露戦争や太平洋戦争みたいなほどの死傷者数にはならないが、それでも自衛隊員は敵のハイテク兵器で死ぬわけではない。

 

そういう現場に必要なのは、イスラム国ISISの連中と同じことができる人間であり、別に「高度な現代戦」を熟知した、ハイテク教育にお金をかけた志願兵ではない。ローテーション交換できるだけ人数のいるレベルの低い徴兵制で十分なのだ。

 

時代が21世紀というだけで、戦場も21世紀だという保証はない。

 

民主主義なら「徴兵制」である。資本主義なら「民間軍事会社」である。保守主義なら「士農工商」である。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

もし「徴兵制」が苦役でないのならば、逆に「徴兵制」は存在していない。 - 在日琉球人の王政復古日記