同じ「保守」ということなんだろうが、産経の体現する「日本の保守」と、共和党の体現する「アメリカの保守」は、微妙に、しかし確実に価値観が異なる。
日本の保守が、神道を捨てて改宗するのならば、ベストパートナーだろうが、そうでない限り、必ず価値観が衝突する。
リベラル同士は、他国と仲良くできることが多いが、保守同士はそうは行かないのだ。
イスラム国ISISやワッハーブ派のサウジアラビアと、フランス国民戦線やアメリカのトランプさんは、お互い保守同士だけど、友人とは言えない。
ロシアのプーチンさんだって、色分けで言えば、保守だけど、産経の路線と相性がイイだろうか?
リベラルはインターナショナルな価値観だが、保守はナショナルな価値観だからだ。
【米大統領選】“伏兵”クルーズ上院議員、トランプ氏を抜く アイオワ州で支持率急上昇 「カーソン票」を吸収、高学歴層に人気(1/2ページ) - 産経ニュース
2015.12.8
米大統領選に向けた共和党指名争いで来年2月1日に初戦となる党員集会が開かれる中西部アイオワ州でテッド・クルーズ上院議員(44)への支持が急上昇している。7日に発表されたモンマス大学(ニュージャージー州)の世論調査では、不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)を抜いた。強硬な保守層の人気を集め、全米レベルでもトランプ氏をじわじわと追い上げている。
調査によると、党員集会への参加を予定する共和党支持層からのクルーズ氏の支持は10月の10%から24%に急上昇し、トップに立った。2位のトランプ氏は19%でほぼ横ばい。3位のマルコ・ルビオ上院議員(44)は10%から17%へと支持を拡大していた。
一方、前回、首位だった元神経外科医、ベン・カーソン氏(64)への支持は32%から13%に激減。自らの経歴に関する疑惑が浮上し、安全保障の知見にも疑問符が付いたことが影響したとみられる。
クルーズ氏は特に、カーソン氏を後押ししてきた聖書の教えに忠実なキリスト教福音派や保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会)からの支持を急拡大させていた。同大は「カーソン氏の人気が下がったことで、クルーズ氏がほとんどの有権者を囲い込めた」と分析している。
それはそれとして、とりあえず共和党を推したい産経から見ても、トランプさんのポピュリズムは付いて行けないので、次に有望なクルーズ推しなんだろうけど、トランプさんのド派手な狂気のせいで目立たないが、クルーズさんも別方向で立派に「狂人」である。世界にとっても、日本にとっても、「地味に」アブナイのだ。
狂気の3トップ、トランプ、クルーズ、カーソン。ブッシュ弟絶望?希望の星ルビオ~民主党ヒラリーが嫌いでも、共和党じゃヤバイ(笑) - 在日琉球人の王政復古日記
だいたい産経自体が、過去に、クルーズさんの困った価値観を記事にしている。
【アメリカを読む】共和党強硬派“鼻つまみ者のクルーズ”が投じた一石(1/3ページ) - 産経ニュース
2015.4.17
2016年の米大統領選へ最初に名乗りを上げた共和党のテッド・クルーズ上院議員(44)=テキサス州選出=のもくろみはひとまず当たった。「宗教保守」の支持を受ける他の有力候補から輝きを奪ったという意味においてだ。もちろん、本命になれるかどうかはこれからの戦い方に左右されるが、クルーズ氏を保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会)の支持を受ける強硬派として単純に切り捨ててしまうと、共和党の指名争いの構図が見えなくなる。
信仰前面に大統領選出馬
クルーズ氏が3月23日に出馬を表明したのは南部バージニア州のリバティー大学。聖書の言葉に忠実で、保守的な教義を持つ福音派のテレビ伝道師、ジェリー・ファルウェル氏が1971年に設立した。2007年に死亡したファルウェル氏はブッシュ前政権にも影響力を持った。
「ボーン・アゲイン(生まれ変わり)のキリスト教徒の約半数が投票していない。想像してほしい。信仰を持つ数百万の人々が家にいる代わりに投票所に赴き、私たちの価値観に投票することを」。クルーズ氏は演説でこう訴えた。
キリスト教の信仰による「生まれ変わり」の体験は、福音派を特徴付ける。クルーズ氏は敬虔(けいけん)なキリスト教徒が多いリバティー大学の学生たちに、キューバ移民である父が信仰に目覚め、一度は捨てた家族の元に戻った体験を語りかけた。(略)
鼻つまみ者から上位へ
12年の上院選で当選したクルーズ氏が知名度を上げることになったのは、13年9月の予算審議で、オバマケア(医療保険制度改革)に反対するために行ったフィリバスター(議事妨害)だ。21時間以上にわたって本会議場で演説し、政府機関閉鎖の立役者の一人となった。
クルーズ氏ら茶会系の非妥協的な姿勢は、共和党に対する世論の反発も招いた。クルーズ氏の名前を挙げると、熱心な共和党支持者でさえ、眉をひそめて薄ら笑いを浮かべるほどだ。上下両院で過半数を握り、次期大統領選をにらんで「政権担当能力」を見せなければならない議会指導者にとっては、やっかいな存在だった。
最近、このリバティ大学が記事になっていた。
CNN.co.jp : 米大学学長、学生に銃の携帯を呼びかけ - (1/2)
2015.12.08
米国内で相次ぐ銃乱射事件に対して銃規制強化を訴える声も高まる中で、米バージニア州のリバティ大学のジェリー・ファルウェル学長が学生に対し、銃を携帯するよう促した。
カリフォルニア州サンバーナディノでは2日、男女の2人組が銃を乱射して14人を殺害する事件が発生。ファルウェル学長は4日の学生集会で数千人の学生を前に、「もっと多くの善良な人たちが銃を隠し持つことを許可されれば、あのようなイスラム教徒による侵入や殺害は阻止できると常々考えていた」と語って盛大な拍手を浴びた。
この記事は、アメリカ人以外には不親切である。誤解を生む。
だって、普通の日本人は、「リバティ大学」がどういう大学か?知らないからだ。
この内容だと、たとえば日本なら明治や法政や同志社や関西学院みたいな、アメリカの普通の大学の学長が、こういう発言をして、学生が支持した、みたいに読めるが、
リバティ大学は、かなりユニーク(笑)な大学なのである。
誤解を恐れずいえば、日本なら「幸福の科学大学」みたいもんだ(笑)。
「宇宙が誕生して6000年。聖書に書いてある」
「計算上、当然、人間と恐竜は同じ時代を生きていた」
「ノアの方舟にはティラノザウルスも乗船していた」
みたいな話を、宗教学や民俗学ではなく、考古学や生物学で教える大学だ。
イスラム国ISISジハーディ・ジョンVSアメリカ創造博物館~「神の国」を目指す気持ちは同じ。 - 在日琉球人の王政復古日記
リバティ大学は、キリスト教プロテスタント・南部バプテストのテレビ伝道師ジェリー・ファルウェル牧師が作った大学。今回の学長はその息子である。
ジェリー・ファルウェル牧師は、アメリカじゃ誰でも知っていた有名人。
イギリスBBCの子供番組「テレタビーズ」のティンキーウィンキーを、
「ホモを象徴する紫色。逆三角のアンテナもゲイのシンボル。男のクセに赤いハンドバッグを持っている。BBCはアメリカの子供たちを同性愛に洗脳しようとしている!」
と放送中止を呼びかけた人物だ。
南部バプテストはアメリカ最大のプロテスタント。
カトリックは一つだが、プロテスタントはいろいろな宗派に分かれる。
そして宗派によって個性が違う。
聖公会、ルター派、長老派、みたいな系統は、高学歴、ホワイトカラーの白人が多く、ズバリ「人生勝ち組」の宗教だ。穏健派であり、あんまり政治に影響はない。この系統の政治家は政治に宗教を持ち込まない。
カトリックは、アイルランド系、ポーランド系、イタリア系、そしてヒスパニック。どっちかと言えば「人生負け組」そして民主党系である。個人選択というより家族の宗派であり、習俗・文化になってるが、あんまり政治には持ち込まれない。
ユダヤ教も、ほとんどが家族の宗派である。
しかし、バプテスト、ペンテコステ、セブンスデー・アドベンチスト、モルモンなどは、クセが強く、エグ味があり、熱狂的で、露骨に政治や文化に介入してくる。
リバティ大学とは、そういう大学、そういう学長、そういう学生なんだから、銃の保有を支持するのが当たり前なのだ。
そして、学長のいう「もっと多くの善良な人たち」とは、イスラム教徒と対になってることで明白なように、「キリスト教徒」の意味である。
仏教徒やヒンドゥー教徒、無心論者、そしておそらくユダヤ教徒も、「善良な人たち」に含まれない 。下手したら民主党に投票する人も含まれない(笑)。
クルーズさんはキューバ系で、そのままならカトリックだったはずである。それがアメリカ最大の宗派・南部バプテストに改宗している。つまり宗教を意識的に選択した人なのだ。
トランプさんは、有権者から支持を受けるためなら、自分が信じてないことでも平気で主張するような人だが(笑)、
しかし、クルーズさんは正直者だと思う。
支持者に受けようが、不利になろうが、自分が信じることを主張し、信じないことには反対する。
ただしその信念の根拠が「聖書と矛盾するから、ダーウィン進化論も、宇宙のビッグバンも、ありえない」「テレタビーズは同性愛者の陰謀」というタイプだから厄介なのだ。
イスラエルを助けるために、ホンキでイスラム相手に、ハルマゲドンをやりかねないのである。