こういう昔話がある。
若き天才を自称する者が「私の質問に答えられる者がいるか?」と自慢した。
そこへロバに乗った老いた隠者が通りかかる。
「そこの老いた隠者よ、答えてみよ。我々が住むこの大地の中心はドコにある?」と、若き天才が問う。
「ワシのロバの後足が踏んでる場所がちょうど中心じゃよ」と、老いた隠者は即答した。
「そんなわけがあるか?!」と、若き天才が嘲笑した。
「お疑いなら、あなたが実際に計測すればよかろう」と、老いた隠者は返答した。
若き天才は言葉につまり、老いた隠者は《大地の中心》を引きずりながら、ロバと共に去って行った。
昔話の若き天才が敗北した理由は、「知恵」が足りなかったのではない。「根性」が足りなかったのだ。
真の意味で「知恵」があったのかどうか?は、歴史学でもまだ結論が出てないが、フランスの革命家たちは、とりあえず、ブルボン王朝をひっくり返すくらいの信念と根性と資金と行動力だけはあったので、とうとう、昔話のロバの隠者に打ち勝つ。
「実際に計測すればよかろう」・・・革命家たちは実際に計測した。
第9惑星VS人間~「天動説」は本当に間違っていたのか?~コペルニクスが生んだ「もう一つの地動説」。 - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
彼ら革命家たちはマジで地球の北極点から赤道まで航海し、距離を測り、そこから新しい長さの単位を作った。われわれも使ってる「メートル法」である。
フランス革命は、
昔からの王様を、政治の中心から追い出しただけでなく、
昔からの度量衡も、科学の中心から追い出す。
昔から続いてきた、なんていう薄弱な根拠だけでは、王制の正統性は認めない。
昔から使ってきた、なんていう薄弱な根拠だけでは、フィートもポンドも認めない。
フィートは人間の足のサイズから生まれた単位であり、ポンドも人間が1日に食うムギの量から生まれたらしい。
フランス革命は、人間が慣れ親しんだ身体感覚、日常生活から生まれた単位を否定し、わざわざ、人間の感覚からかけ離れた距離から、人間とは無関係な単位をデッチ上げる。
人間の身体性を、科学や経済の判断の中心から排除する。
ここでも、コペルニクスの地動説とまったく同じく、世界の中心にいた人間を、世界の隅っこに追いやったのである。
知恵の実を食ってしまったアダムとイブは、エデンの楽園から追放されたのだ。
単なるサルにしか過ぎない、偏見や思い込み、判断ミスの常習者である人間を、宇宙秩序の中心から外す。
代わりに、普遍的なモノ、人間の伝統や歴史(つまり偏見と因習)から自由なモノ、自然科学的なモノ、を世界の中心に置く。
人間を否定し、神を排除し、理性と科学を狂信する。これが「近代」だ。
第9惑星を予測したカリフォルニア工科大学は、メートル法と同じように、人間の感覚からかけ離れた天文単位で計測しているはずである。第9惑星の公転軌道を、ヤードだのマイルだので計算しないだろう。
しかし、カリフォルニア工科大学がある同じ合衆国のど真ん中に住んでいるアメリカ人のおよそ半分は、地球が太陽の周りを公転していることを知らない。人間が原始的な生物から進化したことを認めない。そして、今でもメートル法を使わない。
彼らアメリカ人は、
リットルではなく、パウンドやオンスでビールを飲み、
10メートルではなく、10ヤード単位のアメリカンフットボールを見て、
聖書を読み、教会で絶叫し、同性愛を嫌悪して、
「アフリカ」を国の名前だと平然と答えたサラ・ペイリンが熱烈に支持する、ドナルド・トランプにICBM核弾頭の発射ボタンを渡そうとしている、
CNN.co.jp : ペイリン氏、トランプ氏支持を表明 米大統領選
CNN.co.jp : 序盤州支持率、トランプ氏が首位 クルーズ議員ら引き離す
アメリカは、宗教を政治から排除したフランス革命とは、最初からウマが合わないのだ。