在日琉球人の王政復古日記

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《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記サウジアラビア編「少女は自転車にのって」(2012年)VSアメリカ編「ローラーガールズ・ダイアリー」(2009年)


【予告編】少女は自転車にのって

  


映画『ローラーガールズ・ダイアリー』予告編

 

この2つの映画、なんだか、共通点が多い。

 

女流監督。しかも初作品。

主人公は少女。田舎テキサスの一般家庭の長女 VS サウジの一般家庭の長女

主人公を愛している、やや保守的な母親。母娘の確執、そして和解。

優しいが、影が薄い、そしてホンネでは「息子」が欲しかった、父親。

成就しない(だろう)、幼い恋愛感情。

学校にいる主人公の天敵。スクールカーストのクィーン VS うるさい女校長。

保守的で、世間から誉められるけど、好きでもなくやってる競争。美人コンテスト VS コーラン暗唱コンクール。

野蛮で、世間から白い目で見られるが、彼女が心からやりたいこと。ローラーゲーム VS 自転車。

 

もちろん違いもある。

初恋の青年と水中セックスしちゃう(笑)テキサス娘 VS 手も握れないママゴトレベルのサウジ少女。

豚肉料理(笑)のお店でアルバイトのテキサス娘 VS まず豚肉を見たこともないだろう(笑)、ミサンガや音楽テープを作って小遣いを稼ぐサウジ少女。

最後に娘の夢を強力に応援するテキサス親父 VS 長男欲しさに第2夫人を作り、最後まで娘の自転車の夢なんか知らないまんまのサウジ親父。

 

21世紀の、同じ惑星の、同じホモサピエンスの、同じ少女の物語である。

確かに、地面のドコで生まれるかで、大きく初期条件や苦労は変わる。理不尽なまでの格差である。

しかし共通部分もないわけではない。少女たちは世間と戦うのだ。

 

私はみたいな、オンナゴコロなんてまったく解らない「東映ボンクラ小僧」でも、優れたガーリームービー(うわ、ガーリーだってヨ、野暮天のオッサンが笑)なら、感動することだってあるのだ。

 

さて、イスラム圏の映画なんてほとんど見てないが、これで「オトコの領域に侵犯しようとする少女」が主人公の映画を3本見たことになる。

 

サウジアラビア映画「少女は自転車にのって」 

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 イラン映画オフサイド・ガールズ」 

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アフガニスタン映画「アフガン零年」 

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サウジアラビア、イラン、アフガニスタン

同じイスラム諸国、同じ女性差別を描いてはいても、その過酷さ、残酷さには、国によって天地の違いがある。

 

《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記イラン編「オフサイド・ガールズ」 - 在日琉球人の王政復古日記

 

イスラム・ガーリームービー3部作」として、 

アフガン零年」についても、後日書かせてもらいたい。

 

《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記アフガニスタン編「アフガン零年」(2003年)その1~緑色の瞳は何を映したか? - 在日琉球人の王政復古日記

 

《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記アフガニスタン編「アフガン零年」(2003年)その2~マルクス共産主義にすら美点がある。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記アフガニスタン編「アフガン零年」(2003年)その3~フェミニズム、ジェンダーフリーはオンナに勝てるか? - 在日琉球人の王政復古日記

 

最後に、やっぱり、政治のお話(笑)。

 

実は、「少女は自転車にのって」には、日本の保守派の皆さんにとって、深刻な問題提起をしているシーン、セリフが出てくる。

 

その問題シーン、セリフは、アフリカの大虐殺を描いた、全く別の映画「ホテル・ルワンダ」とまったく同じだった。 

 

そして、これまた全然関係ないアメリカ映画「フローズン・リバー」にも似たようなセリフが出てくる。 

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これらは偶然ではない。
サウジのガーリームービーも、
アフリカの民族虐殺映画も、
アメリカ・カナダ国境の寂れた町のサスペンス映画も、
全部、グローバリズムと関係しているのである。世界のどんな場所も無関係ではいられないのだ。

 

ホテル・ルワンダ」もいつかご紹介したい。

 

映画「ホテル・ルワンダ」その3~アフリカ代理戦争~ナタを作る中国VSナタで殺すルワンダ。 - 在日琉球人の王政復古日記