この2つの映画、なんだか、共通点が多い。
女流監督。しかも初作品。
主人公は少女。田舎テキサスの一般家庭の長女 VS サウジの一般家庭の長女。
主人公を愛している、やや保守的な母親。母娘の確執、そして和解。
優しいが、影が薄い、そしてホンネでは「息子」が欲しかった、父親。
成就しない(だろう)、幼い恋愛感情。
学校にいる主人公の天敵。スクールカーストのクィーン VS うるさい女校長。
保守的で、世間から誉められるけど、好きでもなくやってる競争。美人コンテスト VS コーラン暗唱コンクール。
野蛮で、世間から白い目で見られるが、彼女が心からやりたいこと。ローラーゲーム VS 自転車。
もちろん違いもある。
初恋の青年と水中セックスしちゃう(笑)テキサス娘 VS 手も握れないママゴトレベルのサウジ少女。
豚肉料理(笑)のお店でアルバイトのテキサス娘 VS まず豚肉を見たこともないだろう(笑)、ミサンガや音楽テープを作って小遣いを稼ぐサウジ少女。
最後に娘の夢を強力に応援するテキサス親父 VS 長男欲しさに第2夫人を作り、最後まで娘の自転車の夢なんか知らないまんまのサウジ親父。
21世紀の、同じ惑星の、同じホモサピエンスの、同じ少女の物語である。
確かに、地面のドコで生まれるかで、大きく初期条件や苦労は変わる。理不尽なまでの格差である。
しかし共通部分もないわけではない。少女たちは世間と戦うのだ。
私はみたいな、オンナゴコロなんてまったく解らない「東映ボンクラ小僧」でも、優れたガーリームービー(うわ、ガーリーだってヨ、野暮天のオッサンが笑)なら、感動することだってあるのだ。
さて、イスラム圏の映画なんてほとんど見てないが、これで「オトコの領域に侵犯しようとする少女」が主人公の映画を3本見たことになる。
サウジアラビア映画「少女は自転車にのって」
同じイスラム諸国、同じ女性差別を描いてはいても、その過酷さ、残酷さには、国によって天地の違いがある。
《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記イラン編「オフサイド・ガールズ」 - 在日琉球人の王政復古日記
「イスラム・ガーリームービー3部作」として、
「アフガン零年」についても、後日書かせてもらいたい。
《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記アフガニスタン編「アフガン零年」(2003年)その1~緑色の瞳は何を映したか? - 在日琉球人の王政復古日記
《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記アフガニスタン編「アフガン零年」(2003年)その2~マルクス共産主義にすら美点がある。 - 在日琉球人の王政復古日記
《ガーリームービー列伝》イスラム少女戦記アフガニスタン編「アフガン零年」(2003年)その3~フェミニズム、ジェンダーフリーはオンナに勝てるか? - 在日琉球人の王政復古日記
最後に、やっぱり、政治のお話(笑)。
実は、「少女は自転車にのって」には、日本の保守派の皆さんにとって、深刻な問題提起をしているシーン、セリフが出てくる。
その問題シーン、セリフは、アフリカの大虐殺を描いた、全く別の映画「ホテル・ルワンダ」とまったく同じだった。
そして、これまた全然関係ないアメリカ映画「フローズン・リバー」にも似たようなセリフが出てくる。
これらは偶然ではない。
サウジのガーリームービーも、
アフリカの民族虐殺映画も、
アメリカ・カナダ国境の寂れた町のサスペンス映画も、
全部、グローバリズムと関係しているのである。世界のどんな場所も無関係ではいられないのだ。
「ホテル・ルワンダ」もいつかご紹介したい。
映画「ホテル・ルワンダ」その3~アフリカ代理戦争~ナタを作る中国VSナタで殺すルワンダ。 - 在日琉球人の王政復古日記