ブルース・スプリングスティーン「ボーン・イン・ザ・USA」。
映画「ランボー」。
同じ、帰還兵の後ろ姿。しかし、目指す方向は180度違った。
#音楽に政治を持ち込むなよ ~騒動の根源は明治維新にある(笑)。 - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
2016年春、アメリカ大統領選挙も正念場だ。
共和党候補トランプさんも、集会のBGMとして、人気ミュージシャンのロックやポップミュージックをかけまくる。
先に書いたように、欧米のミュージシャンは大半がリベラル派だから、サンダースかクリントン支持だし、そうでなくとも、少なくとも共和党は嫌いだし、中でも人種差別や女性差別を叫ぶトランプみたいなのが一番嫌いである。
よって、ニール・ヤング、R.E.M.、アデル、ローリング・ストーンズ、エアロスミス、などなどビッグネームたちから「リベラルなオレの曲を、右翼な共和党の、よりにもよって、トランプの会場で使うな!」という抗議が殺到する。
だいたい、歌詞そもそもをよく読めば、共和党の政策やトランプさんの主張とは、まったく正反対なのはマル判りなのに、リベラルな歌手のリベラルな歌なのに、アンチリベラルの共和党トランプさんは、歌詞を無視して、平気で曲をかけまくっている。
【米大統領選】「俺の歌を政治利用するな!」 ロック界大御所たちがトランプ氏に激怒(1/3ページ) - 産経ニュース
2015.10.21
「俺たちの声や曲を、勝手に使うんじゃない!!」-。来年の米大統領選に向けた動きが活発になる中、選挙集会などでの音楽無断使用に、著名なアーティストが次々と怒りを爆発させている。今回、集中砲火を浴びているのが共和党予備選候補者のドナルド・トランプ氏(69)だ。曲を使われた側は“トランプ氏支持”と誤解されるなどとしているが、背景には無断使用だけでなく、メッセージの曲解などへの、アーティストのいらだちもあるようだ。
(略)
実は、大統領選に絡むこの手の話は、枚挙にいとまがない。84年の米大統領選では、再選を狙う共和党のロナルド・レーガン氏(1911~2004年)が、ベトナム帰還兵の悲哀を歌った米ロッカー、ブルース・スプリングスティーンさん(66)の大ヒット曲「ボーン・イン・ザ・USA」を愛国曲と曲解、無許可で選挙キャンペーンに使用し失笑を買った。
(略)
記事にある通り、この手の騒動で一番有名なのが、1984年、共和党レーガン再選時の、ブルース・スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・USA」だ。
サビの部分で、Born in the U.S.A.(オレはアメリカで生まれた)と連呼するので、なんだか、愛国主義の歌、アメリカ礼賛の歌のようにイメージされるが、歌詞の内容は、まぎれもなく、ベトナム反戦であり、アメリカ政府批判であり、アメリカ資本主義批判であり、反体制だ。
安保法反対の日本のSEALDsと方向は同じなのである。
和訳とともにお聞きください。
「BORN IN THE U.S.A.」ブルース・スプリングスティーン 日本語訳
#音楽に政治を持ち込むなよ は、SEALDsに言う前に、まず、露骨な政治批判を歌った30年前のブルース・スプリングスティーンに言うべきだった(笑)。
しかし、英語を理解してるはずの、レーガンも、共和党も、共和党支持者も、歌詞の全体像なんかあんまり気にしないで、サビのBorn in the U.S.A.!がアメリカ万歳!っぽい響きだから飛びついたわけだ。
そういう意味では、レーガンも、日本の洋楽ファンと、あんまり変わらない。
そこから、2008年、黒人のオバマが大統領に当選して、連邦最高裁が同性婚を公認するまで、
30年以上にわたって、クリントン旦那の時代も含めて、米ソ冷戦終結、湾岸戦争、イラク戦争、キリスト教原理主義の政治介入と、アメリカは共和党優位の時代だった。リベラル派にとっては冬の時代だ。これを「レーガン保守革命」とも呼ぶ。
それ以前は、第2次世界大戦も挟んで、戦前の大恐慌時代まで、ファシズムとの戦い、米ソ冷戦、日本と西ドイツの民主化、公民権運動、ベトナム撤退、イラン・イスラム革命と、民主党優位のリベラルな時代だった。
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そして、2016年、とうとう、GOP=グランド・オールド・パーティー=「古き良き」という尊称を自負する共和党が、異端児ポピュリスト・トランプに呑み込まれようとしている。レーガン共和党王朝の終焉である。
1984年の「ボーン・イン・ザ・USA」は、時期的にはレーガン保守革命時代の歌だが、スプリングスティーンはそれ以前のベトナム反戦の思想を引きずったリベラル派なのである。
そして、スプリングスティーンと選手交代するように、レーガン保守革命時代の到来を予感させたのが、、1982年のシルヴェスター・スタローン主演映画「ランボー」だ。
「ボーン・イン・ザ・USA」と「ランボー」の主人公は、まったく同じ、同一人物なのである。
ベトナム戦争帰りの帰還兵。戦場では英雄だったのに、アメリカに戻ったら名誉も尊敬もない社会の厄介者、就職先もない、ホームレス同然の生活。
スプリングスティーンも、スタローンも、冷たい社会を批判し、兵士への尊敬と生活の保障を訴えるのは同じなのだが、結論が180度正反対になる。
スプリングスティーンは、同じ悲惨を生まないように、もう二度と戦争は御免だ、平和と社会福祉を!とリベラルな主張になる。
「ランボー2/怒りの脱出」のラストシーン、孤軍奮闘で、アメリカ政府に見捨てられベトナムに幽閉された米軍捕虜を奪還し、上司の大佐から「(ヒドイ仕打ちをした)祖国を恨むなよ」と諭されたランボーは、ビックリしたように振り向く。
「祖国を恨む? (そんなことは思ったこともない。祖国のためなら)死んだっていい。オレたちはアメリカを愛している。ただ、アメリカにも、ホンの少しでいいから、オレたちを愛して欲しいだけだ」
正直、男泣き、である(笑)。これで泣かない奴はキンタマがない(笑)。
スタローンは、尊敬された戦場に戻してくれ、英雄を英雄のままでいさせてくれ、と、いう主張になる。これが、湾岸戦争、イラク戦争への道である。
スプリングスティーンの後ろ姿も、スタローンの後ろ姿も、同じベトナム帰還兵であるが、目指す場所は正反対に異なる。レーガン以前と、レーガン以後の分水嶺だ。
スタローンこそ、アメリカ映画の反体制運動だった「アメリカンニューシネマ」の時代を、そのアメリカンニューシネマの手法でブッ倒した名作「ロッキー」を生んだ、レーガン保守革命のアイコンである。
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レーガン時代を終わらせたオバマ時代に、レーガン時代の象徴「ロッキー」シリーズが完結したのは、なにやら因縁めいた話である。
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