あちらを立てれば、こちらが立たず。両立困難なことを「ジレンマ」という。
これが3つになると「トリレンマ」となる。
国際経済の分野ではトリレンマが多いそうな。
★3つのEのトリレンマ。
A.経済成長(Economy Growth)
B.地球環境の維持(Envirnmental Protection)C.エネルギー・資源・食料などの確保(Energy Security)
の3つを同時に実現させることは困難である。
A.自由な資本移動
B.為替の安定
C.国家の独立した金融政策
の3つを同時に実現させることは困難である。
★国際政治のトリレンマ。
A.グローバル化(国際経済統合)
B.民主主義(個人の自由)C.国家主権(国家の自立)
の3つを同時に実現させることは困難である。
人間は、ジレンマなら簡単に理解するが、トリレンマはなかなか見えにくい。
しかし、実は、多くの政治対立も「右翼VS左翼」「保守VSリベラル」のジレンマではなく、トリレンマなのだ。
2016年は、アングロサクソンの歴史≒近代史に残る年になった。
2016年6月23日、イギリス国民投票、EU離脱派勝利。
2016年11月9日、アメリカ大統領選挙、ドナルド・トランプ勝利。
英米だけでなく、世界を、近代200年どころか、イギリスがスペイン無敵艦隊を破った16世紀末のアルマダの海戦以来なんと400年に渡って、「経済合理性」という鉄板にして冷酷で無敵の「法則」に従って支配・主導してきた、アングロサクソンのエスタブリッシュメントが、貧乏人の怨嗟という、わけのわからない情動に敗北した。
こっちもある意味「合理的」だった、大量殺戮の全面戦争に最適な政治体制という人間不在の機械的システム、食肉昆虫並みの倫理観と隣人愛しかなかったウラジミール・イリイチ・レーニンの共産主義にすら打ち勝った、あのアングロサクソンが「不合理」に負けたのだ。
映画「パレードへようこそ」は、前々から紹介している、
「トレインスポッティング」
「ブラス!」
「リトル・ダンサー」
「フル・モンティ」
「Vフォー・ヴェンデッタ」
「フットボールファクトリー」
「ディス・イズ・イングランド」
などなど、1980年代以降のイギリス映画、私が勝手に(笑)命名した「アンチ・サッチャー映画」の1つだ。
《アンチ・サッチャー映画列伝》「この道しかない(There Is No Alternative.)」VS「クソババアが死んだ(The Bitch Is Dead!)」 - 在日琉球人の王政復古日記
911映画「ラブ・アクチュアリー」(2003年)~アルカイダ、ブッシュ、ブレアを批判するイギリスのリベラル。 - 在日琉球人の王政復古日記
この実話を元にした映画「パレードへようこそ」のあらすじは以下の通り。
新自由主義ネオリベ路線の元祖ともいうべきサッチャーは、国際競争力のない国内炭鉱の閉鎖を強行する。
仕事を失う炭鉱夫たちはストライキで対抗。地方の炭鉱では連日、炭鉱夫と警官隊の衝突が繰り返される。
ロンドンでは、同性愛の権利と平等を主張するLGBTたちが活動していたが、
「炭鉱夫たちはサッチャーと警官を相手に戦っている。僕らと同じだ」
ということで、ゲイやレズビアンたちが、炭鉱支援の募金活動を行う。
しかし、LGBTへの差別と偏見は、炭鉱夫も政府と同じで、どこも相手にしない。
唯一、ウェールズの炭鉱が、カン違いから、支援を受け入れる。ロンドンの彼ら彼女らは、ウェールズの田舎町まで募金を届けに行く。
相手がゲイと知って嫌悪する炭鉱夫も続出したが、ロンドンの同性愛者とウェールズの炭鉱夫、まったく住む世界の異なる、同じイギリスでも出会うはずもなかった両者が、徐々にお互いの善意と友情を育み合う。
そして、翌年のロンドン・プライド・パレードの行進には、LGBTを支援するためにウェールズからやって来た炭鉱夫たちの姿もあった。
どうして、1980年代のロンドンのLGBTたちは田舎の炭鉱夫に同情したのか?
それは、炭鉱夫たちが、サッチャー政権や警官隊と戦っているからだ。
LGBTたちも、同じように、ずっと長年、イギリス政府や警察と戦ってきたのだ。
なぜなら、同性愛は、イギリスにおいて、嘲笑やからかいなんて話ではない。犯罪として取り締まられていたのである。
CNN.co.jp : 英政府、かつて同性愛で有罪になった数千人に恩赦
2016年10月21日
ロンドン(CNN) 英政府は20日、過去に存在した同性愛行為を禁止する法律の下で有罪となった同性愛・両性愛の男性を、死去した人も含めて恩赦の対象にすると発表した。
この措置は、第2次世界大戦中にドイツ軍の暗号を解読したことで知られる数学者のアラン・チューリング(2014年の映画『イミテーション・ゲーム』の主人公)にちなんで「チューリング法」と呼ばれている。チューリングは同性愛行為で有罪となり、化学的去勢の対象とされた後の1954年に自殺。2013年にエリザベス女王は、チューリングに死後恩赦を与えた。
これまでも内務省に申請すれば犯罪歴を抹消することはできた。だがサム・ジーマー司法次官によれば、チューリング法の下では「現在ではいかなる犯罪にも該当しないような」同性愛の性犯罪歴をもち、今も生存している人は自動的に恩赦の対象となるという。
21歳以上の男性による同性愛行為を犯罪とする法律は、イングランドとウェールズでは1967年に廃止された。だがスコットランドでは80年、北アイルランドでは82年までこの法律は存続した。
過去の法律で同性愛行為で有罪となった人々が恩赦を求める動きは近年、世界各地で起きている。
同性愛が合法になったは、この映画のたった数年前だ。
それまでのイギリスでは同性愛は犯罪で有罪。19世紀まで最高刑は死刑である。
殺人と同様の扱いを受けたのである。
日本が同性愛に平等かつ寛容というわけではないが、キリスト教文化圏の同性愛差別は殺すところまで行く。日本とは次元は違うのだ。
日本は「女装」「オネエ」に寛容なだけで、「同性愛」に寛容なわけではない。 - 在日琉球人の王政復古日記
つい最近まで、 LGBTたちは、警察におびえ、政府に弾圧され続けた。
彼ら彼女らにとって、政府と警察に痛めつけられる炭鉱夫の苦境は他人事ではなかったわけだ。
21世紀の現在、LGBTたちは、なんとか存在を認められるようになった。
対して、炭鉱夫を含む労働者たち。
映画は1980年代のイギリスだが、サッチャーも死んだ後、EU離脱を決めた2016年もウェールズの田舎の状況はあんまり変わらないままだ。
3つ仕事掛け持ちでも生活できず 貧困にあえぐ英西部で - BBCニュース
2016年09月7日
経済のグローバル化によって打撃を受けた製造業の衰退が地域社会をむしばむ状況は、英国も例外ではない。
英国民が6月の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を選択した背景には、雇用が不安定になる一方で生活費が上昇していることへの市民の高まる不満が指摘されている。ジョゼフ・ラウントリー財団は、推計1300万人とされる英国内の貧困層を助けるため「長期的な戦略」が必要だとする報告書を出した。
BBCのマーク・イーストン内政担当編集長が、英西部ウェールズ地方のポート・タルボットで取材。ウェールズ出身の俳優のマイケル・シーンさんにもインタビューした。
偶然とは恐ろしいもので、上記のBBCニュースに出てくる町は、前に日記で書いた、インド財閥の製鉄所のある町のようだ。
ガンジーの糸車は70年後を予測できたか?~インド財閥撤退でイギリス1万5千人失業の危機。 - 在日琉球人の王政復古日記
2016年3月31日
インドの鉄鋼大手タタ・スティールがイギリスからの全面撤退を検討していることが明らかになり、衝撃が広がっている。何千人もの従業員の解雇が予想され、イギリスの鉄鋼業界全体が大打撃を受けかねない。
タタの発表によると、サウスウェールズ地方にあるイギリス最大の製鋼所ポート・タルボット工場の再建計画は、インド・ムンバイで行われた取締役会で「コストがかかりすぎる」として却下された。
さらに偶然だが、映画「パレードへようこそ」の元となった実話の舞台である炭鉱町が、この製鉄所に近くにあるようなのだ。
映画の日本語サイトでは、
映画「パレードへようこそ」オフィシャルウェブサイト ★☆★☆ ストーリー ☆★☆★
ウェールズの炭坑町ディライス
英語のwikipediaでは、
Pride (2014 film) - Wikipedia, the free encyclopedia
Onllwyn, a small mining village in Wales,
イギリスの地理は門外漢だが、ウェールズにある「Onllwyn」という町の「ディライス炭鉱」なのかもしれない。間違っていたらご容赦。
そして、「Onllwyn」という町は、
Onllwyn - Wikipedia, the free encyclopedia
Onllwyn is a small village in Neath Port Talbot, Wales, near Seven Sisters.
「Neath Port Talbot, Wales」つまり、BBCニュースに出てくる英西部ウェールズ地方のポート・タルボットにあるようだ。
映画の炭鉱町と、BBCニュースの製鉄所は、ご近所と考えて間違いなかろう。
つまり、映画の舞台であるウェールズは、1980年代サッチャー時代から、およそ30年以上にわたって不況に喘ぐ、鉱業と工業が命綱の地方ということだ。産業構造が変わっていないわけだ。
トリレンマ映画「パレードへようこそ」(2014年)その2~EU≒TPP 対 #Brexit 連合(共産党+トランプ) - 在日琉球人の王政復古日記
トリレンマ映画「パレードへようこそ」(2014年)その3~リベラル左翼 対 ネオリベ 対 ナショナリスト右翼 #Brexit - 在日琉球人の王政復古日記
に続く。