在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

トリレンマ映画「パレードへようこそ」(2014年)その3~[EU サッチャー]対[ #Brexit EU離脱 トランプ]対[ #LGBT ]

 

トリレンマ映画「パレードへようこそ」(2014年)その1~ #LGBT 対 鉄の女 対 白人労働者 #Brexit - 在日琉球人の王政復古日記

 

トリレンマ映画「パレードへようこそ」(2014年)その2~EU≒TPP 対 #Brexit 連合(共産党+トランプ) - 在日琉球人の王政復古日記

の続き。

 

これらの話を「保守・右翼VSリベラル・左翼」の「相反する2大勢力のジレンマ」で考えると判らなくなる。

「相反する3大勢力のトリレンマ」なのだ。

 それは、前々から書いてきた、政治思想の3大派閥とシンクロする話でもある。

 

ネオリベVSソシアルVSコンサバ~現実的な政治路線は「3つ」しかない。あるいは「3つ」もある。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

A.自由主義(ネオリベ)
B.社民主義(ソシアル)
C.保守主義(コンサバ)

 

政治思想は大きく分けて、この3つ=トリレンマである。

最初に書いた話も、それぞれ対応する。

 

★3つのEのトリレンマ。

A.経済成長(Economy Growth) = 自由主義(ネオリベ)
B.地球環境の維持(Envirnmental Protection) = 社民主義(ソシアル)

C.エネルギー・資源の確保(Energy Security) = 保守主義(コンサバ)

の3つを同時に実現させることは困難である。

 

国際金融のトリレンマ

A.自由な資本移動 = 自由主義(ネオリベ)

B.為替の安定 社民主義(ソシアル)

C.国家の独立した金融政策 保守主義(コンサバ)

の3つを同時に実現させることは困難である。

 

国際政治のトリレンマ。

A.グローバル化(国際経済統合) = 自由主義(ネオリベ)
B.民主主義(個人の自由) 社民主義(ソシアル)

C.国家主権(国家の自立) 保守主義(コンサバ)

の3つを同時に実現させることは困難である。

 

映画「パレードへようこそ」もトリレンマを描いた政治映画なのだ。

もちろん、映画の制作者は、ネオリベ批判の「アンチ・サッチャー映画」として作ったのだろう。

サッチャー新自由主義の横暴の前に、LGBTと白人労働者、異なる2つの立場は団結できる!

 

それはその通りなのだが、それは、目の前にサッチャーネオリベが立ちはだかっているからだ。共通の敵がいるから団結できたのである。

もしもネオリベがいなくなっても、LGBTと白人労働者の友情は不変だろうか?

 

目の前からサッチャーが消えて、トランプが登場しても、両者の友情は不変か?

不変ではなかったのだ。友情は失われ、対立が始まった。

それが、アメリカ大統領選挙であり、EU離脱なのだ。

 

アメリカ大統領選挙での東海岸や西海岸の大都市住人。

EU国民投票時のロンドン市民も同じカテゴリーだ。

そして、映画に出てくる1980年代ロンドンのLGBTが、彼ら彼女らの先輩だ。

ら彼女らは、リベラル民主党クリントンに投票し、移民を差別するトランプを罵倒し、移民や外国人を差別しないEU残留を支持し、人種差別的なEU離脱を否定しただろう。

映画のLGBTだって、クリントンに投票し、EU残留を支持したはずだ。

LGBTは、インターセクシャルであり、インターナショナルであり、インターレイシャルであり、トランスジェンダーであり、異なる他者を受け入れ、弱者を守り、外国人を差別しない人々だ。

 

しかし、アメリカ大統領選挙での五大湖周辺、錆びついた工業地帯=ラストベルトの白人労働者はどう行動したか?

EU国民投票時の田舎に住むイギリス白人労働者も同じカテゴリーだ。

そして、映画に出てくる1980年代ウェールズの炭鉱夫が、彼らの先輩だ。

らは、労働組合を通じて支持していたはずの民主党を裏切り、国内産業保護を訴えたトランプに投票した。外国人労働者を制限できいないEUを嫌って離脱を選んだ。

映画の炭鉱夫だって、トランプに投票し、EU離脱を支持したはずだ。トランプなら炭鉱を守ってくれるからだ。

炭鉱夫は、男であり、ナショナリストであり、外国人や有色人種を受け入れず、ウェールズの白人だけで暮らしていきたいからだ。

 

LGBTが「インド系移民も友人だ」と説得しても、炭鉱夫は「奴らがオレたちの仕事を奪ったんだ」「外国人優遇なんて、お前らゲイも、サッチャーと同じ考えじゃないか!」と怒るだろう。

炭鉱夫が「テロが怖いから、イスラム野郎は入国禁止だ」と主張すれば、LGBTは「人間を肌の色や宗教で差別するなんて、君たち白人労働者も、同性愛を差別してきたイギリス政府と同じ考えじゃないか!」と怒るだろう。

  

1980年代から2016年まで、リベラル左翼は、前進して、停滞した。

同性愛・人種問題など文化的・社会的方面では、リベラル左翼は大きく成功したのだ。今や先進国で同性愛は犯罪ではない。

しかし、雇用・景気・格差など経済的方面では、リベラル左翼は挫折した。ネオリベ新自由主義のグローバル経済に有効な対策を打てず、その国の多数派民族の労働者の経済生活はどんどん悪化している。

その結果が、EU離脱とトランプ大統領である。

 

実は、LGBTはサッチャーをカン違いしていた。

もちろんサッチャーの個人的趣味は同性愛が嫌いだったと思うが(笑)、彼女は同性愛を死刑にしていた19世紀の政治家でも、同性愛を犯罪視していた1960年代の政治家でもないからだ。

彼女の首相在任は1979年。イギリスで同性愛の合法化、犯罪でなくなったのは1967年から1982年の間であり、彼女は政治家として首相として同性愛を合法化することに積極的に反対はしていない(まあ、賛成もしてないだろうが)。

もちろん犯罪ではなくなっても、同性愛への社会的偏見は消えたわけではないが、それは政治家サッチャーの責任ではなく、ウェールズの炭鉱夫を含む一般庶民の問題なのである。

  

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A.自由主義(ネオリベ)≒資本主義。
B.アンチ・コンサバ≒反右翼。ロンドンのLGBT。
C.社民主義(ソシアル)≒左翼。
D.アンチ・ネオリベ≒反資本主義。ウェールズの白人炭鉱夫。
E.保守主義(コンサバ)≒右翼。
F.アンチ・ソシアル≒反左翼。サッチャー

 

サッチャーは、LGBTの味方ではないが、敵でもなかったのだ。

しかし、炭鉱夫にとっては、サッチャー間違いない敵だった。

 

サッチャーの立場は、ネオリベとコンサバの中間、アンチ・ソシアルだった。どっちかと言えばネオリベ寄りといっていい。

LGBTの立場は、ソシアルと(実は)ネオリベの中間、アンチ・コンサバだった。ネオリベは同性愛を問題にしない。

炭鉱夫の立場は、ソシアルとコンサバの中間、アンチ・ネオリベだった。ネオリベ政策に対抗できないソシアルに失望して、徐々にコンサバに染まっていった。それはアメリカのラストベルトの白人労働者も同じである。

 

あれだけサッチャーに反発し、金持ち優遇の共和党を嫌っていたのに、左翼だったはずの彼らは、いつの間にか保守党のボリス・ジョンソンの言う通りEU離脱に投票し、共和党のトランプを大統領にしたのだ。

 

LGBTと炭鉱夫との間の政治的距離は、実は、サッチャー炭鉱夫との間の政治的距離と同じくらい離れており、LGBTとサッチャーの距離はそれほど離れてはいなかった。

 

優れた映画である。そして1980年代ネオリベ全盛時代の真実は描かれている。

しかし、リベラル左翼が、そして保守右翼も、経済問題に失敗した2016年、炭鉱夫たち労働者はポピュリズムの快感に溺れ、

ある意味ネオリベ的である、国境無き・民族フリーのLGBT的リベラルとの友情は、もはや成立しないだろう。

 

政治とは残酷なモノである。

 

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