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在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

#獄門島 (NHK-BS/2016年)長谷川博己VS(東宝1977年)市川崑&石坂浩二 #横溝正史 #金田一耕助 #黒蘭姫 #殺人鬼 #百日紅の下にて

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「片岡千恵蔵、高倉健」から「中尾彬、石坂浩二、長谷川博己、池松壮亮」へ #横溝正史 #金田一耕助 #獄門島 - 在日琉球人の王政復古日記

の続き。

 

ネタバレありで書く。ご注意、ご容赦。

 

NHK-BSの「獄門島」を見た。

まず、あの獄門島を2時間に収めた、脚本が見事だ。なかなかできない。

 

ただし、ナンクセを付ければ、あの必要十分のコンパクト脚本は、「一見さんお断り」「素人門前払い」ではなかったか?

NHK獄門島」の評判は良いようだが、そういう人は、原作を読んでいるか、少なくとも石坂金田一か古谷金田一は見たことがある、横溝ファンだろう。

しかし、原作は読んでない、石坂金田一も古谷金田一も稲垣金田一も見たことがない、そういう人を想定すると、あの2時間で、物語・面白さ・味わいが理解できただろうか?

 

まあ、これは、自分で言い出してナンだが(笑)、ナンクセである。

すでに横溝金田一は、忠臣蔵と同じ、日本のシェイクスピアである。今さら、吉良って誰?マクベスって誰?、なんていうレベルは共通認識ということを前提に作品は作られている。

横溝金田一も、あらすじは(結末も)誰でも知ってることを前提に作って構わない段階だろう。

 

ただし、もしも「横溝も金田一もぜんぜん初めて、もともと興味はなかったけれど、長谷川博己ファンだから見ました」なんていう人がいたら、そういう人でも、話の流れが理解できたか?、犯人の理屈が理解できたか?、その感想を聞いてみたい。

 

長谷川博己のエキセントリックな金田一も合格だと思う。

世間では石坂金田一が定番にされているが、大昔の千恵蔵金田一は拳銃バンバン撃つし(笑)、高倉金田一はオープンカー乗ってるし(笑)、それに比べたら大した改変ではない。

 

正直、役者さんは知らない人、少なくとも顔は知ってても名前は知らない人が多かった。

それも、こっち側の問題で、ドラマ側が悪いわけではない。

主演の長谷川博己も、ああ「シン・ゴジラ」の官僚か、と後から知ったくらい、私は最近の役者さんには門外漢である。それは私の方に問題がある。

 

戦争のトラウマを背負い、殺人の意味を問う、これもミステリの歴史からすれば、正統なキャラである。

英米のミステリ黄金時代は、第一次世界大戦のあまりにも無意味で無駄な大量殺戮に対して、「殺人=生命=人間には意味があるんだ!」というアンチテーゼだった、という説もあるくらいだ。

 

また、役者を知らないことは、映画やドラマとしては欠点なんだが、謎解きミステリとしては非常にメリットがある。

なぜなら、役者の「格」で犯人が推測できないからだ。

 

たとえば、まったく横溝金田一を読んだことがない人でも、当時の邦画好きなら、映画を見せなくても、石坂金田一「犬神家の一族」のキャストだけを見れば、おそらく犯人の目星が付くだろう。

なぜなら並みいる女優陣の中で高峰三枝子だけが「格上」だからだ。

まあ三國連太郎も怪しいが(笑)、監督が女優重視の市川崑じゃ、ますます高峰容疑者が疑わしい(笑)。邦画好きの推理なら、本命高峰、対抗島田陽子、大穴三國、ってところだろう。

石坂金田一悪魔の手毬唄」はもっと露骨で、あのキャストじゃ岸恵子以外にはあり得ない(笑)。

NHK獄門島」でいえば、原作を知らなくても、キャスト的には、まず奥田瑛二古田新太仲里依紗が重要参考人である(笑)。今さら瑳川哲朗はないだろうし。

 

個人的に、獄門島」には欠点がある、と思っている。

ドラマの方ではなく、原作にだ。

もちろん、原作の出来は、横溝作品を超えて、日本ミステリ全体でもトップクラスである。

しかし、それでも、個人的には欠点がある。それは犯人だ。

え? お互いにアリバイを保証し合う「犯人が複数」という設定の巧妙さが「獄門島」の素晴らしさじゃないのか?

いやいや、もちろん、犯人の人数や、了然和尚のキャラは、文句なしで満点だ。

 

問題は荒木村長と幸庵医師なのだ。

原作を読んでも、この2人は影が薄すぎる。キャラが立ってないのだ。

何本もある映画やドラマを見ても、ほとんど全てにおいて、2人の配役は、了然和尚より、数段「格落ち」である。

 

たとえば、犬神家の一族」の犬神佐清は、鮮やかにイメージがわくはずだ。

しかし、犬神佐武、犬神佐智、といわれてイメージがわくだろうか? ただ殺されるだけの役回りで、誰でも、どんな人間でも、配役が入れ替わっても、構わないだろう。

 

獄門島」も、了然和尚はイメージがすぐにわく強烈なキャラだが、荒木村長と幸庵医師は、誰でもいいし、どんな人間でもいいのだ。彼らであるべき必然性は乏しい。

それこそ、嘉右衛門に可愛がられていた、漁師の竹蔵や散髪屋の清公が、荒木村長と幸庵医師に入れ替わっても、ストーリーもトリックも、大きく破たんはしない。

 

おそらく、これが、石坂金田一の映画獄門島」の、ミステリとしての「失敗」につながるのだと思う。

犬神家の一族」は犯人を変更しようがない。犯人は仮面の男の母親の立場の女性しかない。

悪魔の手毬唄」も、犯人は腹違いの妹をぼこぼこ作った罪作りな男の妻しかない。

「女王蜂」も、犯人は絶世の美女の義父しかない。

しかし「獄門島」は、死んだ網元の遺言を守るような律儀な人間、ならば誰でも良かったわけだ。

 

映画は、小説とは異なり、ヴィジュアルだ。

映画「獄門島」を作る市川崑の立場からすれば、いくら原作とはいえ「犯人はおっさん3人」というのは、ヴィジュアル的にあり得なかったのだろう。

了然和尚は動かせないが、荒木村長と幸庵医師はどうにでも改変できる、というアイデアで、司葉子の出番になったのだと思う。

しかし、その改変が、獄門島」の「見立て3景-犯人3人」という美しいシンメトリー構造を壊してしまう。犯人が2人では、鬼頭3姉妹とのバランスも、アリバイ・トリックも台無しである。

改変は良いとしても、犯人は絶対3人にすべきだったが、そうなると、犯人に相応しい人物がいない。登場人物自体を大幅に変えなければならなくなる。

ストーリーもトリックも絶品だが、犯人のキャラとヴィジュアルが難点、それが「獄門島」だと思う。

 

趣味で申し訳ないが、獄門島」で一番好きなキャラは鬼頭3姉妹である(恥)。

だから映画やドラマでは彼女たちのキャスティングに注目するのだが、ある意味、ヨゴレ役なので、あんまり優遇はされてない。

キャラ的に大根でも務まるので(笑)、有名な女性タレント(芸能にはうといのでよく知らないが)、菜々緒でも、壇蜜でも、豪華絢爛な死体絵巻を映像化して欲しいものだ。

 

NHKの次回作は「悪魔が来りて笛を吹く」らしい。

これまた好きな作品なので、期待したい。

 

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に続く。

 

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