2016年はアメリカ大統領選挙。
2017年は韓国大統領選挙、そしてフランス大統領選挙である。
日本では、宗主国・同盟国アメリカや、敵国・友好的隣人(笑)韓国には、関心が高いが、フランスは遠すぎて、利害関係が不明で、いまいち関心が薄い。
私も詳しいわけではないが「革命の祖国」を軽視しては神様の罰が当たる(笑)。
フランス映画「アメリ」(2001)~人形が世界中を旅して旅行写真を送ってくる映画。 - 在日琉球人の王政復古日記
2017年フランス大統領選挙候補一覧
★★★:最有力、第2回投票戦進出ほぼ確実。
★★:著名、第2回投票戦進出かなり苦戦。
★:泡沫、第1回投票戦敗退ほぼ確実。
原則として右から左への順番で。
★★★ マリーヌ・ル・ペン Marine Le Pen
国民戦線(FN) Front national 1972年
「フランスのトランプ」を呼ばれる今回の台風の目。
といっても、これは表現がサカサマだ。だって、国民戦線は結党1972年、結構古い政党なのである。ぽっと出のトランプの方が「アメリカのル・ペン」なのだ。
マリーヌのご尊父が作った政党だが、ご尊父は、ナチスに好意的な発言をする(つまり反ユダヤ)など、冷戦時代前のアナクロ親父だったため、ある程度を限界に支持は伸びなかった。
そこで娘のマリーヌが、古いアタマの親父を追い出して、主張をソフト化・現実化して、党勢を拡大した。
大きく言えば、(欧米ではいまだ根強いが、もはや現実的意味はない)反ユダヤから、(現実の問題である)反イスラムへ、である。
主張は、反移民、反EU、反ユーロ、反グローバリズム、反ネオリベ、保護貿易、大きな政府、そして福祉国家。
リベラル派(特に日本の)には大きな誤解があるが、右翼はネオリベではない。
右翼は、小さな政府ではない。グローバリズムではない。
サッチャーやレーガン、アメリカ共和党は、右翼の中では非主流の、アングロサクソン的な「変わり種」なのである。
通常の右翼政党は、ナチスがそうだったように、大きな政府であり、「福祉国家」なのだ。
ただし、福祉の対象が、民族や肌の色や国籍や宗教や思想信条で限定され、それ以外は排除される、そこが左翼の福祉政策と違うだけだ。
移民、在留外国人排除の一点を除けば、経済政策において、
大した違いはないのだ。
★ ニコラ・デュポン=エニャン Nicolas Dupont-Aignan
立ち上がれ共和国(DLR) Debout la République 2008年
「立ち上がれ共和国」は、フランスにおける保守主義、ゴーリスト(ド・ゴール主義者)政党。ただし、泡沫候補で可能性はない。
フランス政治といえば「ド・ゴール主義」である。
ド・ゴール主義とは、昨今の流行で言えば、「Make France Great Again」であり、「フランス・ファースト」であり、「フランス第一党」なのだ。
トランプ大統領も、小池百合子都知事も、桜井誠さんも、偉大なる故シャルル・ド・ゴール将軍の不肖の弟子に過ぎない。
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だから、国民戦線だってゴーリストだし、後に出てくる共和党だって、左翼ですら、ある部分は非常にゴーリズムな傾向がある。フランスの「国体」的心情なのだ。
もっと簡単に言えば、ド・ゴール主義とは、反米、反英、反アングロサクソン、そして、反ユダヤ的心情も内在している。
当然、反グローバリズム、反EUである。
★★ フランソワ・フィヨン François Fillon
共和党(LR) Les Républicains 2015年
日本の自民党、アメリカの共和党、イギリスの保守党、ドイツのキリスト教民主同盟に該当する、中道右派最大政党。基本的に、親EUである。
フィヨンは党内右派。かなり保守的、ネオリベ的主張で、予備選を逆転勝利。
しかし、個人的には、「フランス共和党」と言われても、どうもピンとこない。
フランスの保守政党といえば、「なんとか連合」とか「かんとか連合」とか、「XX連合」という党名のイメージが強いのだ。
共和党も、国民運動連合(UMP)が、2015年に改名したそうな。
フランスの保守政党は、上で述べたようにゴーリズム政党から出発するんだが、ド・ゴールがいなくなると、外交、安全保障面ではソ連の脅威に対抗するため、経済面では自由市場経済が浸透してきて、徐々に、親米になり、保護主義が後退しネオリベ的性格を強めていく。ここら辺はジャポンの自民党と大筋で変わらない。
ドイツもそうだが、フランスも、ナチスと第2次世界大戦のせいで、保守勢力がいったんスクラップ&ビルドしているので比較的新しく、
左翼政党のドイツ社会民主党、フランス社会党の方が、戦前からの流れをくんで、歴史や伝統が古く、組織として長生きしている、
という、日本から見ると変なところがある。
伝統あるフランス社会党に対抗するために、保守勢力が合従連衡して新党旗揚げを繰り返す、というのがフランス政治の特色でもある。
★★★ エマニュエル・マクロン Emmanuel Macron
前進/オン・マルシュ(EM) En marche ! 2016年
現時点で、最も大統領に近い最有力候補。
現在の支持率は、国民戦線ル・ペンよりも低い。第1回投票では彼女に勝てないだろう。
しかし第2回投票では、反ル・ペンで固まった中道保守派と左派の票が大量に流れ込むので、逆転勝利しそうである。
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元・社会党。離脱して無所属立候補。
「前進/オン・マルシュ」は選挙母体だが、党名は、おそらくフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の歌詞から取ったのだろう。
日本の左翼リベラルは「君が代」の歌詞から党名を作ったりしない(笑)。
ここら辺が、君主を奉じる国と、君主をギロチンにかけた共和国の違いである。
ハンフリー・ボガート「カサブランカ」VSライザ・ミネリ「キャバレー」~モロッコに響くフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」 - 在日琉球人の王政復古日記
政策は、ずばり「第3の道」だ。
アメリカのビル・クリントン、イギリスのトニー・ブレアと同じく、旧来の左翼の「大きな政府」路線の行き詰まりを打開するために、リベラル派が「ネオリベ」に路線変更したのと同じである。
ゆえに、基本的に自由市場経済であり、緊縮財政、小さな政府、親EU、つまり非ゴーリズムとなる。
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フランス大統領は「ネオリベ=マクロン」と「ネトウヨ=ル・ペン」の決戦になりそうだ。
★★ ブノア・アモン Benoît Hamon
社会党(PS) Parti socialiste 1969年(旧社会党は1905年)
伝統ある中道左派(アメリカ基準、日本基準で言えば、立派に左翼)。
アモンはその中でも党内左派らしい。
本当ならば、中道右派=共和党フィヨンと、中道左派=社会党アモンの決戦になるのが当たり前なんだが、社会党は現職オランド大統領の(朴姐さん並みの)不人気の煽りで低迷し、共和党もフィヨンの汚職疑惑で迷走している。
もっとマクロに見れば、共和党も親EU、社会党も親EU、しかも両方「大きな政府」ということで、イスラム移民への対応など、細かい部分での対立はあっても、保守とリベラルの間に、明瞭な差が無くなってしまったのが、フランスだけでなく、イギリスやドイツも含め、ヨーロッパ諸国の不透明感の大きな原因なのだろう。
アメリカのように分断と対立ばかりでも困るが、大きな争点がないのに対立を演じてるだけ、というのも、政治を不健全にするのである。
★ ジャン=リュック・メランション Jean-Luc Mélenchon
不服従のフランス(FI) La France insoumise 2016年
左翼党(PG)/Parti de Gauche 2009年
さすがは革命の祖国、まだまだ左翼が元気である。
メランションは、左翼党(PG)/Parti de Gauche 党首。
メランションも元社会党で、そういう意味ではマクロンと同じなのだが、方向は「第3の道=ネオリベ」とは正反対の反ネオリベのガチガチ左翼。
大企業の国有化みたいな主張をしているようで、社会民主主義を飛び超えて、かなりマルクス主義的だ。
EUに関しては複雑で、ヨーロッパ共和国という理念は賛成だが、現状のブリュッセル官僚帝国には反対の立場。
ここで不思議なのが、フランス共産党(PCF)/Parti communiste français (1930年結成)である。
かつて、フランスの共産党は弱小ではなく結構な規模を誇っていたのだが、今回は大統領候補も出してない。
フランス共産党の特徴は、何といってもソ連べったりのスターリン主義政党だったことだ。ソ連解体で思想上の親分を失い、迷走したのだが、とうとう自前の大統領候補すら出せなくなってしまったようだ。
★ フィリップ・プトー Philippe Poutou
反資本主義新党(NPA) Nouveau Parti anticapitaliste 2009年
共産党よりも左だぜ(笑)!
新左翼ということは、マクロに見れば、日本の中核派や革マル派と同じ潮流から生まれた左翼である。
ヤンキーな #中核派 VSオタクな #革マル派 ~ #革共同 #革命的共産主義者同盟 の呪われた双生児。 - 在日琉球人の王政復古日記
昔からあった老舗の第4インター(つまりトロツキスト!)の組織・革命的共産主義者同盟(LCR)/Ligue communiste révolutionnaire(1930年結成)を母体にして旗揚げした、名前通りの反資本主義新党(NPA)。グローバリズムはおろか、資本主義を否定する。
もはや、EUがどうのこうののレベルではない(笑)。
★ ナタリー・アルトー Nathalie Arthaud
労働者の闘争(LO) Lutte ouvrière 1956年
そういう新左翼は何も1つとは限らない。
こっちも正々堂々トロツキスト(つまり反スターリン主義、つまり反フランス共産党)政党。
共産党は不調でも、左翼党(PG)、反資本主義新党(NPA)、労働者の闘争(LO)と、大統領選に3人も候補を出せるくらいフランス左翼はまだまだ死なないのだ。
ちなみに、左翼党(PG)、反資本主義新党(NPA)、労働者の闘争(LO)の間で、どういう思想の違いがあるのかはわからない。
路線的には、左翼党(PG)、反資本主義新党(NPA)が小異を捨てて大同団結路線で、労働者の闘争(LO)が純化路線なんだろうとは推測する。
ちなみに、内ゲバや殺し合いはやってないようで、それは素晴らしい。
★ ジャック・シュミナド Jacques Cheminade
連帯と進歩(SP) Solidarité et progrès 1996年
この人はよく判らない。
右翼でも左翼でもないようで、ある種の陰謀論的主張をしている人のようだ。
他に、共産党と並んで、ヨーロッパではエコロジスト政党が元気。
フランスにも、ヨーロッパ・エコロジー=緑の党(EELV)/Europe Écologie Les Verts (2010年結成) てのがあるようだが、今回は独自候補は出さず、社会党支援に回ったようである。
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上記を見ても判るように、フランスは宗教政党がない。右翼すら非宗教的で、政教分離=ライシテのお国柄なのである。とはいっても、カトリックは共和党支持者が多そうだが。
EUの命運を握る、という意味では、どっちが勝っても4年後か8年後には反動が起きる共和党民主党が盤石なアメリカ大統領よりも、国際政治への長期的影響が大きいかもしれないのが、今回のフランス大統領選挙である。
今のEUは事実上の「仏独同盟」なわけで、もし、ル・ペンが当選し、フランスが離脱すれば、現状のEUは崩壊である。
しかし、EU消滅にはならないと思う。
ドイツと、ドイツ経済に依存する北欧、東欧、スペイン、そして不透明なイタリア、などによる「小さなEU」が残る。さらに、未加盟だが心情的にはウクライナ、移民が多いトルコまで含めれば、エリア的に見れば、
偶然か否か、第二次世界大戦直前のナチス・ドイツ同盟国と重なる。
また、第一次世界大戦前のドイツ帝国「3B政策」とも重なる。
小さなEUとは、イギリスとフランス以外のヨーロッパはドイツのモノ、という意味になる。事実上の「ドイツ=徳川家による欧州幕府」の誕生だ。
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ハプスブルグ家が、神聖ローマ帝国で、オーストリア・ハンガリー二重帝国で、
ヴィルヘルム2世が、3B政策で、第一次世界大戦で、
どうしても果たせなかった「大ドイツ・ヨーロッパ帝国」の夢を、メルケル(またはその後継者)が、1個大隊の出兵も無しに、血を流さずに、実現するかもしれない。
続きは
フランス大統領選挙/仏大統領選挙2017(PART2)~泡沫候補~国家よりも郷土愛VS右翼と左翼は双子の兄弟。 - 在日琉球人の王政復古日記