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在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

追悼 #渡瀬恒彦 ~東映「狂った野獣」「暴走パニック大激突」「銀蝶渡り鳥」「ずべ公番長」松竹「皇帝のいない八月」「配達されない三通の手紙」

 

皇帝のいない八月(予告) - YouTube

 

渡瀬恒彦さん死去…72歳、15年から胆のうがんで闘病 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース

2017/3/16(木)
「事件」「震える舌」「仁義なき戦い」シリーズなどの映画や「十津川警部」「おみやさん」をはじめとする推理ドラマでも活躍した俳優の渡瀬恒彦(本名同じ)さんが14日午後11時18分、多臓器不全のため東京都内の病院で死去した。72歳。島根県出身。2015年から胆のうがんで闘病中だった。葬儀は近親者のみで営む。喪主は妻い保(いほ)さん。兄の渡哲也(75)とはまた違った男の魅力で人気を誇ったスター俳優だった。

 

平成の皆さんにとっては、「十津川警部」「9係」など、テレビドラマの刑事役なんだろうが、申し訳ないが、私はテレビドラマをまともに観ていない。

私にとっての渡瀬恒彦は、やはり映画であり、変わり者、乱暴者、半分ヤクザ(笑)揃いのボンクラ東映役者陣の中でも突出した「狂犬」であった。

 

おそらく、映画界最強は、素手ゴロなら、渡瀬恒彦

ポン刀を持たせたら(笑)、近衛十四郎(故・松方弘樹のお父さん)だろう。

 

お兄さんの渡哲也は日活、弟は東映

しかし、知名度はともかく、ぶっちゃけて言えば、渡哲也も、渡瀬恒彦も、作品的には、あんまり恵まれた映画人生ではなかったと思う。

それは兄弟の責任ではなく、二人の登場は、残念ながら日本映画自体の黄金期が終わった冬の時代だったからだ。

日活で言えば、黄金時代は石原裕次郎小林旭

東映で言えば、黄金時代は千恵蔵、右太衛門、鶴田浩二高倉健であり、

渡哲也・渡瀬恒彦の兄弟は、その後の世代になる。

 

それでも、日活最後のトップスタアのお兄さんは主役を張っていたが、
弟は東映でも、たまに主演は張れても、多くは助演、ワキに回っいた。
それは、2人の才能の差ではなく、会社の規模と状況の影響だ。
東映は腐っても大所帯、渡瀬恒彦もワン・オブ・ゼムだったが、
日活は先細り、もはや頼れるのは渡哲也だけだった。

 

渡哲也の日活に関してはこちらを。

 

日活映画石原裕次郎列伝~一輪の花・芦川いづみVS大輪の華・浅丘ルリ子~昔の創価学会員って日活が好きだったんじゃないかな? - 在日琉球人の王政復古日記

 

ライアン・ゴズリング=日活無国籍アクション(笑)~ラ・ラ・ランド=東京流れ者(渡哲也/鈴木清順)~ドライヴ=ギターを持った渡り鳥(小林旭) - 在日琉球人の王政復古日記

 

《反米ナショナリズム映画列伝》角川「人間の証明」~青山ミチ、松田優作~大映「悪名」~日活「野良猫ロック・マシンアニマル」。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

東映映画の渡瀬恒彦は助演やワキが多い。

それも、よく名前が挙げられる、ユネスコ世界遺産仁義なき戦い」サーガは、東映でもレアなレジェンド的大傑作であり、渡瀬恒彦の出ていた映画はそんな高級なモノばっかりではなかった。

時代劇がはるか昔、任侠物も行き詰まり、実録路線が爆発するのと並行して、試行錯誤、というよりは、ヤケクソと表現した方がいいような(笑)、東映70年代バイオレンス映画が狂い咲いた時代である。

菅原文太「トラック野郎」「まむしの兄弟」、梅宮辰夫「不良番長」、若山富三郎「極道」のようなバイオレンス喜劇路線と、

池玲子杉本美樹「温泉芸者」「スケバン」、大信田礼子「ずべ公番長」、(日活からやって来た)梶芽衣子「銀蝶渡り鳥」「女囚さそり」などなど、ピンキー・バイオレス路線、

どっちも、地上波はおろか、BSでも放送できない(笑)、そういう映画の助演やワキを、渡瀬恒彦務めていた。

 


Wandering Ginza Buterfly (Gincho wataridori) Trailer

 


Delinquent Girl Boss: Worthless to Confess (1971) Japanese Trailer - Color / 2:45 mins

 

渡瀬恒彦自身は、文太や梅宮や山城新伍みたいな喜劇の才能も乏しく、当然だが(笑)ピンキー要素もないわけで、もっぱら得意のバイオレンス担当であった。

 

あんまり多くない主演で、渡瀬恒彦の狂気のバイオレンスな魅力が爆発してるのが、東映カーアクション映画

狂った野獣」(1976年)
暴走パニック 大激突」(1976年)

の2本。

 


狂った野獣(プレビュー)

 


暴走パニック大激突(プレビュー)

 

どうだ。とても、十津川警部には見えないだろう(笑)。

 

渡瀬恒彦はヤクザ映画の役者」というのは誤解である。

高倉健のような侠客ではなく、菅原文太のようなヤクザでもなく、

渡瀬恒彦の役は、組織からはぐれた一匹狼のチンピラ、銀行強盗などの犯罪者であり、ヤクザよりもさらに反社会的な役柄が多かったのだ。

 

そして、こんなムチャクチャな映画を同じ年に立て続けに撮っている。

現在の映画製作スタンスとは全然違う。テレビドラマよりも無茶なスケジュールで映画を量産していた時代である、

 

しかし、この渡瀬恒彦の野獣テイストがいかんなく発揮されたのは、実は、出身の「東映」ではなく、毛色が東映とは正反対の、お上品な「松竹」だったような気がする。

 

そもそも東映と松竹は、そして東宝も、底流に流れる「政治思想」(←はあ?)が異なる。

東宝は、資本主義万歳のネオリベ路線、

松竹は、格差反対の社会民主主義路線、

東映は、アウトローアナキズムファシズムの反体制路線、

なのだ。

 

ラブゲーム東宝「社長、駅前、若大将、無責任」VS純愛松竹「寅さん」VS売春東映「トラック野郎、まむしの兄弟、不良番長」 - 在日琉球人の王政復古日記

 

その東映素手ゴロ最強・渡瀬恒彦が、お上品な松竹に参戦!

上記の東映狂った野獣」「暴走パニック大激突」からたった2年後である。

 

事件」(1978年)

 

渡瀬恒彦東映以外の初作品のはず。

 

個人的には、この後の映画で、戦後日本を二分する思想的大激闘を演じる、

「松竹イズム・インテリ・山本圭」VS「東映イズム・狂犬・渡瀬恒彦

の異質過ぎる初顔合わせという意味でもワクワクである(笑)。

 

ただし、この映画の見どころは、何といっても、バケモノ・大竹しのぶの凄すぎる名演っぷりである。こんなに演技の上手い女優さんは、東映にはいない(笑)。

 

彼女だけでなく、当然のことながら(笑)、エレガント松竹の俳優さんは、ボンクラ東映の役者たちより演技が上手だとは思う。

しかし、この作品の渡瀬恒彦のヤクザ演技を、他の松竹男優陣で代役できるか?と言えば、ちょっと思いつかない。

松竹はお上品過ぎて、ヤクザを体現できる俳優さんがいないのだ。

逆に、東映の役者にスーツを着せてもサラリーマンには見えないが(笑)。

 

配達されない三通の手紙」(1979年)

 


The Three Undelivered Letters (1979) - Teaser

 

やっぱ、松竹は女優を綺麗に撮る。

東映ピンキー・バイオレンス女優とは、人間としての扱われ方が違う(笑)。

狂犬・渡瀬恒彦はここでは慣れないエリート検事役で、小川眞由美、栗原小巻松坂慶子といったトップクラス看板女優陣相手に、東映仕込みの野獣フェロモンむんむんで対抗している。

 

マジメにミステリ映画として好きな作品だ。さすが原作がエラリー・クィーンだけのことはある。

 

そして、何といっても、渡瀬恒彦の松竹作品といえば、 これだ。

 

皇帝のいない八月」(1978年)

 

渡瀬恒彦だからできる。松竹の男優に、吉永小百合を強姦できる役者はいない。

やはり、女性相手に暴力を振るわせたら、東映の右に出る者はない(笑)。

 

吉永小百合は、評価の難しい女優さんだ。

日活時代は確かにアイドルでありスタアだった。

しかし、歳を取ってからは、ロクな映画に出ていない。

どんなに名監督でも、主演の彼女に焦点を当てれば当てるほど、駄作・凡作の乱れ打ちになる。

特に、近年の「吉永+東映」のコラボは、「ウナギ+梅干」以上の破壊力で、金券ショップの邪魔者になっている(笑)。

理由はホントによく判らない。

彼女の演技が上手いとは言わないが(笑)、間違いなく問答無用で美人だし、彼女並みの演技下手な女優さんでも、映画自体は面白い、という女優や映画は山ほどあるのに、不思議である。

この映画でも、彼女が主役級ではあるが、基本的に男の映画なので、吉永小百合に焦点が当たってない分、かろうじて、助かっている。

 

《在日コリアン映画列伝》日活「キューポラのある街」(1962)吉永小百合VS「Triumph des Willens」(1934)VS「風と共に去りぬ」(1939) - 在日琉球人の王政復古日記

 

自衛隊のクーデタ。

これほど、ミリタリー好きのボンクラ小僧をワクワクさせるコンセプトはない。

 

それを、天下御免の左翼思想の監督・山本薩夫がメガホンを取る。

平成のネトウヨの皆さんには誤解があるかもしれないが、日本の右翼軍人や保守政治家を、一番カッコ良く、ふてぶてしく、老獪で、強そうに見せるのは、実は思想的に敵対してるはずの左翼監督なのである。左翼だからこそ、右翼の強さ、強靭さ、懐の深さを、一番理解しているのだ。

これを右翼思想の監督が撮ると、贔屓の引き倒しになって、右翼軍人が聖人君子のお坊ちゃんになって弱弱しく薄っぺらになってしまう。

 

そして、画面の中の山本薩夫の代理人とも言うべき、9条護憲・反戦平和・市民運動・インテリ左翼を演じせたら日本最高の俳優・山本圭が、

ヤクザ、銀行強盗、人殺し、逃亡犯、自動車暴走、強姦魔、そして狂気の軍人を演じるためだけに生まれてきたような、素手ゴロ天下無敵の渡瀬恒彦と、

爆走する夜行列車の狭い車内で対決するのである。

 

山本圭こそ、日本が誇る最高の左翼俳優である。

山本圭が左翼なのではない。左翼思想が血肉化すると山本圭になるのだ(笑)。

 

田中邦衛60年代映画地獄巡り(その2)~東宝「若大将」VSフジテレビ俳優座「若者たち」VS東映「網走番外地」 - 在日琉球人の王政復古日記

大学生・佐藤三郎役の山本圭。さすがは血筋、左翼インテリを演じさせたら問答無用で「日本一」である(笑)。どこから見ても、どこを切っても、左翼以外の何者でもない。左翼思想の擬人化といっても過言ではない。彼を超える役者はいないだろう。
「若者たち」山本圭は、大学に行って「学生運動」ばっかりやってる。
「若大将」加山雄三は、大学に行って「学生スポーツ」のエースである。
昭和の「運動」と「スポーツ」は、かなり違うモノなのだ(笑)。

  

これは「キングコング対ゴジラ」「座頭市対用心棒」「エイリアンVSプレデター」「フレディVSジェイソン」なのだ(笑)。

 

後年、これも松竹だが、監督も役者も東映丸出しだった、この映画にも渡瀬恒彦が出演している。

 

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とにかく、見る機会があるのなら、オススメしたい映画ばかりだ。

 

ご冥福を祈る。合掌。

 

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