在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

オバマ大統領初代首席補佐官→シカゴ市長~菅官房長官+小池都知事+蓮舫+田中角栄≒ラーム・エマニュエル。

こんな「興味深い名前」がニュースに出ても、

どうせ、移民がー、とか、犯罪がー、とか、法律がー、とか、ニッポン・ドメスティックな反応しか出てこないと思うので(笑)、ちょっと毛色の違う話を。

 

米シカゴがトランプ政権提訴へ、聖域都市への補助金停止方針巡り | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

2017年08月07日(月)
[シカゴ/ニューヨーク 6日 ロイター] - 米シカゴのエマニュエル市長は6日、トランプ米政権が不法移民に寛容な「サンクチュアリ・シティー(聖域都市)」を対象に治安関連の補助金交付を停止すると警告していることを巡り、訴訟を提起すると表明した。
セッションズ米司法長官は先月下旬、移民当局が各地の地元刑務所に無制限に立ち入る権利を各都市が認めなければ補助金を停止すると発表した。
民主党のエマニュエル市長は記者会見で「シカゴは住民の基本的な権利を侵害するようなことはしないし、移民に寛容な都市としての地位を放棄しない」と述べた。訴訟の目的はトランプ政権に補助金停止の前例を作らせないためだとした。

 

これはまた懐かしい名前だ。ラーム・エマニュエル。

彼は、日本で言えば、菅義偉官房長官小池百合子東京都知事蓮舫民進党代表、そして田中角栄を混ぜたような政治家である。

なんだそりゃ(笑)? 

 

皆さんご存知だろうが、シカゴはアメリカ・カナダ国境の五大湖に面する都市。

ニューヨーク、ワシントンなどの東海岸ロスアンゼルス、サンフランシスコなどの西海岸の次ぐ、アメリカ第3の大都市圏である。

 

ニューヨークが海外の金融ならば、シカゴは国内の食品と物流の街だ。

政治的には昔から、圧倒的に民主党が強い。民主党の牙城である。

 

ここがアメリカ政治の一番ややこしいところなんだが、アメリカ政治、共和党民主党の話をするには、「前置き」というか、前提説明が長くなる。それ抜きではアメリカ政治がクリアには判らないのである。

というのも、今と昔では、共和党民主党が、その基本理念から、その支持基盤まで、何から何まで、まったくのサカサマ、ほぼ正反対に入れ替わっているからだ。

 

トランプみたいな白人中心は共和党オバマみたいな白人以外は民主党

キリスト教原理主義共和党。他宗派やイスラムにも寛容な民主党

小さな政府、地方は独立独歩の共和党大きな政府、連邦が強い民主党

アメリカ中西部、南部が地盤の共和党東海岸、西海岸が地盤の民主党

 

今はこうでも、昔は、まったくの正反対。

上記から「共和党」と「民主党」の名前を入れ替えれば、少数の例外を除いて、ほぼ正しい。

昔の民主党=今の共和党、昔の共和党=今の民主党、なのだ。

 

だって、奴隷解放宣言のリンカーンは、オバマ民主党ではなく、トランプの共和党なのである。

南北戦争は、(宗教的にも、経済的にも)奴隷制度を認めない北部工業地帯の共和党リンカーン政権と、奴隷制度で綿花を作っていた南部農業地帯の民主党勢力の戦いであった。

 

それが21世紀になって、黒人混血オバマ民主党、移民は出て行けのトランプは共和党である。

 

タイムマシンに乗って、昔の南部の綿花農場主(もちろん白人)に、「これから150年後のアメリカ合衆国大統領は黒人混血だよ。しかも民主党」といえば、失笑するだろう。

「黒人が大統領(笑)?ひゃひゃひゃアメリカももう終わりだな。しかし、ウソを付くなら、もう少しリアルに付け。10000歩譲ってヤンキー野郎どもの共和党ならあるかもしれんが、オレたちの民主党からニガーが出てくるわけないだろう(笑)。だいたいニガーの方から逃げてくよ」

 

全てがひっくり返った大逆転は、つい最近、100年も経っていない。

だいたい、

戦前の大恐慌時代に対応したニューディール政策民主党フランクリン・ルーズベルト大統領から、

戦後の公民権運動に対応した民主党ジョン・F・ケネディ大統領まで、

第二次世界大戦をはさんだ、この数十年で、ソックリ入れ替わったのである。

   

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当然ながらシカゴは、北部にあって、そもそもリンカーンの地盤である。

昔なら、あらゆる意味で共和党なのだが、しかし現実は、昔からずっと民主党の天下であった。

 

これは、北部工業地帯と南部農業地帯、白人と黒人を巡る対立ではなく、

白人内部の対立が背景にある。

古参の移民・WASP(イギリス系アングロサクソンプロテスタント)と、

新参者の移民・アイルランド、南欧イタリア、ポーランドなどの東欧(カトリック東方正教会)、そしてこれまた東欧が多かったユダヤ教徒

この間にも、凄まじい差別と対立があった。

色が白い、ってだけで一枚岩ではないのだ。

 

北部地盤の共和党は、工場を経営する、北部の勝ち組WASPの天下。

新参者で、カトリックアイルランド人、イタリア人、ポーランド人は、その下で働く労働者であり負け組。

彼ら新参者は、支配者WASPに対抗するために、共和党のライバル民主党を支持したのである。

 

昔の民主党という政党は、南部のプロテスタント農場主から、北部のカトリック労働者まで、かなり毛色の変わった、おそらくお互いでお互いを仲間だなんてぜんぜん思っていない(笑)、「しかし、とにかく、勝ち組ヤンキーだけは嫌いだ!」という一点で、呉越同舟した政党なのである。

 

北部にあるシカゴは、巨大食品産業、物流産業の街であり、アイルランド人、イタリア人、ポーランド人など「負け組白人」が下っ端労働者として汗を流した街だ。

南部の白人が、リベラルなケネディ民主党を嫌って、共和党に鞍替え大移動した後も、北部の労働者は負け組の貧乏人だったから、リベラルと相性がよく、そのまんま民主党に残った。

彼ら労働者が、戦前から戦後まで、ずっと民主党に投票したから、シカゴは民主党の牙城となったわけだ。

 

ハワイ生まれのオバマも、政治的には、奥さんの出身地であるシカゴが地盤だった。

そこで出会ったのが、シカゴ生まれのユダヤ民主党政治家・ラーム・エマニュエルというわけだ。

オバマはなんとなく新しいイメージがあるが、エマニュエルは正反対で、昔ながらの、いかにもシカゴらしい、ドロ臭い、民主党政治家である。

 

シカゴ民主党は、別名「シカゴ・マシーン」と呼ばれる、リベラルの看板とは似ても似つかない、強烈にドロ臭い、ドブ板選挙組織を持っている。

それは、日本の地方にいる自民党政治家の農業団体や業界団体を中心にした後援会組織にソックリの大規模バージョンである。

もちろん、ニューヨークだって、ボストンだって、ロスアンゼルスだって、サンフランシスコだって、デトロイトだって、マイアミだって、ニューオリンズだって、どこの街も似たような政治組織はあるのだが、シカゴはその規模とその強さが群を抜いていた。

 

昔のシカゴ民主党がやった、貧乏人バラマキ、あからさまな利益誘導型選挙は、食肉加工業の街だけあって「ポーク・バレル」(ブタ肉の樽詰)と呼ばれた。

そういう政治土壌なので、汚職スレスレ、というか、昔は、汚職の直球ど真ん中(笑)状態で、しかしポーク・バレルをたらふく食った警察や検察も、毎試合絶好球見逃し三振状態であった(笑)。

そのマシーンに乗っかってリチャード・デイリーという名物市長が、同じ名前の親子2代にわたって何十年もシカゴ市を牛耳ってきた。いやシカゴだけでなく、アメリカ全土の民主党に影響力を持った。

東海岸や西海岸のリベラルな民主党員は、グレーどころか汚職真っ黒けのシカゴ王国を、内心では毛嫌いしていたが、真っ黒デイリー市長の支持が無ければ、どこの出身だろうが、民主党大統領候補にもなれないわけで、シカゴ市長は単なる一地方の一市長では済まない、全国規模の政治力を持っていたのだ。

 

古くは月光仮面から、仮面ライダーまで、日本の等身大ヒーローは、正義のために戦うが、特別、この地域、この街のため限定では戦わない。

しかし、アメコミヒーローは、バットマンゴッサムシティが典型例だが、特定の街のために戦うことが多い。

それは「犯罪で街はムチャクチャだ。しかし地元警察は信用できない。あいつらも汚職市長の手下だから犯罪組織とグルだ」というアメリカ都市住民の不信感が背景にある。

そこで、政治と無関係な、民間人のヒーローを求める。

つまりバットマンは、街を牛耳るシカゴ・マシーンと戦う、自警団なのだ。

 

ラーム・エマニュエルも、シカゴ・マシーンの所有者ではないが、優秀な「エンジニア」として、大統領選挙で勝てるタマ・オバマを見出し、マシーンをフル回転させて選挙資金を集め、民主党だけでなく共和党も含めて政治人脈を駆使した。

オバマは、演説は上手く、理知的ではあるが、泥臭いことが苦手で、政治経験も浅く、政界奥の院の魑魅魍魎の恐ろしさを知らない。そのダーティな暗黒部分を埋め合わせたのが、泥沼の世界を泳いできたエマニュエルというわけだ。

ゼニと利権を駆使して、敵の共和党を、共和党顔負けのド汚い手法で叩き潰す、エマニュエルは、シカゴの闇将軍・田中角栄なのである(笑)。

 

オバマは、大統領選挙勝利の貢献を認めて、さらに奇怪なワシントンの政治ジャングルを突破するためにも、海千山千の真っ黒けエマニュエルを、ホワイトハウス初代首席補佐官に任命した。

大統領首席補佐官とは、日本なら内閣官房長官菅義偉さんだ。政権ナンバー2だ。

 

しかし、中央政界、オバマ政権のナンバー2だったエマニュエルは、2年足らずで辞任する。

シカゴの親分デイリー市長の不出馬を受けて、彼の後継者として、シカゴ市長に立候補するのだ。

国会から地方へ。小池百合子都知事とよく似ている。

 

ただし無役の国会議員から首都の知事ではない。天下の首席補佐官から大都市とはいえ地方の市長である。

いくら生まれ故郷とはいえ、州知事でもない、しょせんは市長。しかし、エマニュエルは、アメリカのナンバー2より、シカゴのナンバー1を選んだ。

個人的な好き嫌いや資質もあるんだろうが、ここら辺がアメリカ政治と日本政治の違いなんだろう。エマニュエルは、伝説のデイリー親子を超える、シカゴ最強の長期政権を目指しているのかもしれない。

 

さらに、エマニュエルはユダヤ系であるだけでなく、イスラエルの兵役ボランティアに付いたこともあるので、アメリカとイスラエル二重国籍らしい。

つまりは、アメリカ版・蓮舫さんなのだ(笑)。

 

アメリカのユダヤ系は、基本的にリベラルが多く、民主党支持である。

しかし、中には、シオニストイスラエル絶対支持)もいる。

彼らは、同性愛、銃規制、貧困問題、社会福祉、人種問題、他の話題なら、とことんリベラルなのに、イスラエルパレスチナ問題になると、途端に、共和党右翼のキリスト教福音派と変わらないくらい、イスラエル支持、パレスチナ否定の態度を取ることがある。

他の政策はずべて気に入らないが、イスラエルパレスチナ問題、たったそれだけの理由で、イスラエル寄りの共和党を支持するユダヤ系も多い。

 

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エマニュエルも、アイルランド系、ポーランド系、黒人、ヒスパニック、シカゴの貧乏人の味方で、イスラム系だって、アメリカに住んでる限り基本的には支持者なんだが、パレスチナ外交問題だけはゴリゴリのタカ派路線なわけだ。

おそらく、パレスチナ問題だけは、オバマと話が合わなかっただろう。

 

そういう彼が、トランプの不法移民イジメに反対している。

アメリカ全体がそうだが、シカゴは特に移民の街だ。それも新参者と負け犬がたどり着いた街だ。だからこそ、移民や弱者を大事にするのである。

エマニュエルのやってる資金集め、選挙運動、政治手法は、トランプもビビるくらい黒に近いグレーなんだが(笑)、その結果としての政策は、間違いなく、リベラルで弱者に寛容なのである。

 

もちろん、キレイごとだけではない。民主党シカゴマフィア(笑)の打つ手が正義なだけのわけがない。民主党としてのトランプ攻撃、共和党攻撃であり、中間選挙や、次の大統領選挙をにらんでの政治宣伝でもある。

 

エマニュエルも、トランプも、バットマンの世界なら、間違いなく倒すべき悪役なんだが(笑)、悪役にもいろいろあるというお話である。

 

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