在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

#押井守 ケルベロス・サーガ~ #韓国映画 で実写版「人狼JIN-ROH」~警察、軍隊、第3の暴力装置・国家憲兵。

韓国で日本映画のリメークブーム | Joongang Ilbo | 中央日報

2018年01月29日
韓国映画界に日本映画のリメークブームが起きている。
2月14日に公開される『ゴールデンスランバー』(ノ・ドンソク監督)をはじめ、『リトル・フォレスト』(イム・スンレ監督)、『いま、会いにゆきます』(イ・ジャンフン監督)、『人狼』(仮題、キム・ジウン監督)など、日本映画を原作とする作品が次々と封切られる。

 

たった一か所だけ反応した(笑)。

が、その前に雑事を。

 

日本語記事なのに、わざわざ、こういう書き方をするから(笑)、

 

リメークのカギは日本カラーを極限まで薄めて韓国的情緒を加えること。素材と設定は借用するものの、全く違う映画を作り出す場合もある。

 

嫌韓派を刺激するのである。

どうも、韓国マスコミは、日本に対して、無駄なところで敏感すぎて、余計なところで鈍感すぎる(笑)。

 

まあ、そんな部分はどうでもいい。こっちだ。ここだけだ。

 

密偵』のキム・ジウン監督の新作であり、日本アニメ『人狼 JIN-ROH』が原作の『人狼ではカン・ドンウォンハン・ヒョジュチョン・ウソン、キム・ムヨル、ハン・イェリらが活躍する。カン・ドンウォンは2本続けて日本映画のリメーク作に挑戦する。

 

アニメ作家の押井守にはファンというより信奉者がたくさんいる。

それも道理で、客観的に見て、天才だろう。

 

個人的にも、アニメ「人狼JIN-ROH」、特にその世界観である押井守の「ケルベロス・サーガ」は、そのミリタリー嗜好(ぶっちゃけナチス)や、新左翼全共闘的テイスト(笑)もあって、趣味的に直球ど真ん中の大好物である。

うる星やつら」も「パトレイバー」も普通に好き。

とはいっても、押井作品には、熱狂的マニアの皆さんがいるので、皆さんに比べたら、薄っぺらいミーハーだ。

 

押井守の「ケルベロス・サーガ」は、パラレルワールドものである。

「この国」は大戦に敗北する。ただし相手は、アメリカではなく、世界覇権を握ったドイツだ。「この国」は、「ポツダム体制」ならぬ「ワイマール体制」下において、ドイツ文化の影響を受けながら、経済復興していく。

抑圧的な政治情勢と慢性的な経済不況は、左翼過激派のテロを産む。そして彼らに対抗するために、警察の権限と軍隊の装備を持つ中間組織「首都警」が誕生する。

 

https://pbs.twimg.com/media/C4ltE2XVYAAswTT.jpg

 

世界の国々には、警察がある。軍隊もある。

しかし、警察とも言えないし、軍隊とも違う、第3の暴力装置を持つ国も多い。

 

日本には無いし、日本が親しくしてきたアメリカやイギリスといったアングロサクソンもそういう組織を持つ伝統がないので、ますます馴染みがないのだが、

大陸ヨーロッパ、特にラテン系のフランス、イタリア、スペイン、その影響を受けたラテンアメリカ、そして、ロシアやトルコなどには、「国家憲兵」とか「内務省軍」「国境警備隊」「警察軍」と和訳される、警察と軍隊の中間にあたる暴力装置がある。

 

なんで、イギリスにはなく、フランスにはあるのか?、と言えば、歴史的経緯もあるが、大きな理由は、フランスなどは陸上に国境を持っているからだ。

地上で国境を接する隣国とトラブルになる。

しかし、警察は国内の治安であり、外国は取り締まれない。

しかし、軍隊を出してしまうと、戦争になりかねない危険がある。

国境は、国内と国外の中間、グレーゾーンなので、

警察と軍隊の中間、グレーゾーンの暴力装置を必要にするのだ。

 

また、国内に少数民族などの自治州や自治区がある場合。

トラブルが発生しても、地元警察は自治体が握っていて動かせない、しかし軍隊を出すと内戦になってヤバい、みたいなグレーゾーンも、第3の暴力装置を必要とするわけだ。

国内にややこしい民族問題をたくさん抱えるロシアはこのタイプである。

 

さらに、革命政党や独裁政権が、政権を握る前から存在する伝統ある国軍をイマイチ信用しきれてない場合、国軍への警戒・牽制のために、もう一つ自前の軍隊を作ってしまう。

ナチスドイツの親衛隊や、イランの革命防衛隊が、このタイプだ。

 

上で「アングロサクソンの伝統にはない」と書いたが、カテゴリー的には国家憲兵とは異なるのだが、アメリカにも「グレーゾーン」の暴力装置はある。

所属は陸軍ではない。しかし純粋に海軍の仕事とも言えない。そういうニッチの仕事を請け負うのが、アメリカ海兵隊である。

 

ケルベロス・サーガ」は、日本にも、こういう国家憲兵があったら?というミリタリー趣味をくすぐる設定である。

 

押井守は、日本に国家憲兵を登場させるために、日本の歴史を改造した。

しかし、「人狼JIN-ROH」をリメイクするらしい、韓国の場合は「そういう状況」が現実に有り得る。

 

「人狼」カン・ドンウォン&ハン・ヒョジュ&チョン・ウソン&SHINee ミンホ…夢のキャスティングが確定 - MOVIE - 韓流・韓国芸能ニュースはKstyle

2017年07月18日
映画「人狼 JIN-ROH」(監督:キム・ジウン) がキャスティングを確定した。
人狼 JIN-ROH」は近い未来、韓国と北朝鮮が7年の準備期間を経る統一を宣布した中、反統一武装テロ団体セクトとそれに対応するための新しい警察組織である特殊機甲大隊、そして統一政策に反対する強力な権力期間である公安部の間で繰り広げられる暗闘と激突を描く。 

 

韓国にとって、北朝鮮は、タテマエでは統一を目指してるんだから外国扱いはできない。しかし現実には韓国の国家権力の及ばない番外地だ。

だから、タテマエ上、外交部(外務省)の担当にはできない。かといって行政安全部(内務省)では管理できない。ゆえに外務でも内務でもないグレーゾーンの官庁「統一部」で扱うことになる。

戦前の日本だって同じで、朝鮮半島は外国ではない。しかし国内扱いも難しい。外務省でもなく、内務省でもなく、朝鮮総督府を設置したわけだ。

 

つまり、グレーゾーンを抱える韓国なら「ケルベロス・サーガ」もリアリティがあるわけだ。

 

私は、K-POPに興味はない。

それはおそらく私が、曲より、歌詞に、興味があるせいで、歌詞が韓国語で判らないK-POPには興味を持ちにくい。ま、どうせ、色恋沙汰だろうし。

 

また、韓流ドラマも99%どうでもいい。

そもそも恋愛モノは苦手だし、歴史モノも、あの歴史的にあり得ない(笑)カラフルな染色チョゴリをみると、ちょっと付き合いきれない。

もちろん日本の時代劇もインチキだが(笑)、こっちは慣れ親しんでいる。

しかし、いまから韓国時代劇に慣れ親しむのはキツイ。どうせ、時代劇もやっぱり恋愛話だし(笑)。

 

しかし、この「1%」だけは別だった。熱狂した。

 


第5共和国

 

これぞ、韓国版「ケルベロス・サーガ」である(笑)。

 

どうせ見てる日本人はごく少数だろう。

前半は最高なんだが、後半は少々不満がある。

このドラマは、明らかに、主人公・全斗煥および朴正煕を否定的だ。

おそらく、製作したのが、昔の軍事独裁が嫌いで、今の文在寅政権を支持するような、韓国進歩派=韓国左翼だからだろう。

全斗煥政権前半の山場、1979年の軍事クーデタ、1980年の光州事件を、ねっとり描いていることからも判る。それはそれでいいのだが、

しかし、後半の山場、1983年のラングーン爆弾テロ事件、1987年の大韓航空機爆破事件が、非常にあっさりとしか描かれていない。

 

つまり、 韓国保守派・全斗煥の犯罪は糾弾するのに、北朝鮮の犯罪は免罪しているのだ。

オリンピックに向けて暴走している、文在寅政権の従北政策、現実を無視した北朝鮮への片思いの「のめり込み」と全く同じである。

 

朴正煕や全斗煥は権力亡者の乱暴者だった。少なくない人も殺した。

それは批判されてしかるべきだ。 

しかし、彼らにはそうするしかなかった必然もあったのだ。

彼らが命懸けで対峙していた、北の金さん一家は、朴正煕や全斗煥が無欲なジャイナ教徒に見えるような、比較にならないケタ違いの鬼畜外道だったのである。

北朝鮮という美点が皆無に近い殺人国家に対抗していたからこそ、朴正煕や全斗煥もたとえ人を殺してでも権力を維持する必要があったのだ。

そこを無視しては、朴正煕や全斗煥を正当には評価できない。

 

それは、韓国版「人狼JIN-ROH」のプロットも同じだ。

韓国と北朝鮮が統一できるパターンは、

北朝鮮が崩壊して、金さんが死んで、韓国が救済合併するか、

韓国が弱体化して、北朝鮮の金さんが赤化統一するか、

どっちかしかない。

両国対等の統一は、国際状況的にも、両国の国内事情的にも、あり得ない。

しかし、文在寅を支持する韓国進歩派=韓国左翼は、そういう荒唐無稽なファンタジーを半ば妄信しているのである。

これは、左翼思想の狂気でもあるが、民族主義の病理でもある。

 

話がそれてばっかりだが(笑)、K-POPや韓流ドラマはダメでも、韓国映画は別である。こっちは本当にスゴイ。

もちろん日本映画は100年の蓄積がある。20世紀のアーカイブを比較すれば、韓国なんて話にならない。日本の圧勝だろう。

しかし、ここ最近、21世紀に入ってからを比べれば、日本映画は、韓国映画に、ハッキリ負けている。

最近のは観てないんだが、

殺人の追憶」「母なる証明」「ほえる犬は噛まない」はスゲエ。

あの「オールド・ボーイ」すらトップではない。

シークレット・サンシャイン」「チェイサー」「復讐者に憐れみを」「息もできない」あたりもオススメである。

 

今の日本で、「人狼JIN-ROH」実写版、と言われても、よく知らない人のお通夜に行くような(笑)、駄作前提のどんよりとした気分にしかならないが、

今の韓国で、「人狼JIN-ROH」実写版、と言われれば、期待が膨らむ。

 

ただし、韓国映画にも「鬼門」があって、日本が登場する映画は、反日感情が悪さをするのか、総じてウンコな駄作が多い(笑)。

今回の韓国版 「人狼JIN-ROH」は日本が出てこなそうなので、期待大である。

 

さて、そっちはいいとして、本丸は押井守だ(笑)。

 

#押井守 「機動警察パトレイバー」(1989/1993)~観念の戦争/戦争の観念~帆場暎一と柘植行人の支離滅裂。 - 在日琉球人の王政復古日記