山の御大・片岡千恵蔵、北大路の御大・市川右太衛門、
萬屋錦之助、大川橋蔵、
鶴田浩二、高倉健、
菅原文太、藤純子、
などなど、東映を彩った綺羅星の如きスタアの皆さんには申し訳ないが、
「結局、東映映画とは、一言で言えば?」という質問への答えは、
「旗本退屈男」でも、「昭和残侠伝」でも、「仁義なき戦い」でも、「トラック野郎」でもなく、
これだ。
映画「温泉スッポン芸者」(1972年)
(♪ しーこ しこ しこ しーこ すっぽん! ×2 ♪)
ウソがオンナよ オンナがウソよ
泣いて 泣かせて 夜が更ける
いいじゃないのさ 明日のことは
(♪ ワワワワー ♪)
スッポン芸者に まかしとき(♪ しーこ しこ しこ しーこ すっぽん! ×2 ♪)
恋がおカネよ おカネが恋よ
抱いて 抱かせて 朝が来た
いいじゃないのさ この世のことは
(♪ ワワワワー ♪)
スッポン芸者に まかしとき(♪ しーこ しこ しこ しーこ すっぽん! ×2 ♪)
下手が上手よ 上手が下手よ
惚れた はれたは 心意気
いいじゃないのさ 昔のことは
(♪ ワワワワー ♪)
スッポン芸者に まかしとき(♪ しーこ しこ しこ しーこ すっぽん! ×2 ♪)
昨日は昨日 明日は明日
その日 その日が 人生よ
いいじゃないのさ 今夜のことは
(♪ ワワワワー ♪)
スッポン芸者に まかしとき
芸者姿でバイクを爆走。アナーキー&バイオレンス。これが東映である。
これが、東宝でもなく、松竹でもなく、大映でもなく、日活でもない、東映そのものだと思ってる。
東宝、松竹、大映、日活、東映。日本映画各社にはそれぞれ「得意分野」があった。つまり、背景に流れる「政治思想」が異なっていたのだ。
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私は、東映に育ててもらったボンクラ小僧だ。
時代劇(遠山の金さん、旗本退屈男)で始まり、
任侠路線(人生劇場、昭和残侠伝)で大当たりし、
実録路線(仁義なき戦い)で爆発した東映も、
1970年代、日本映画大不況時代に苦闘する。
1つはコメディ路線。実録路線で活躍していた役者で実録のパロディともいえるシリーズを作った。若山富三郎「極道」、梅宮辰夫「不良番長」、菅原文太「トラック野郎」。
もう1つが、ブルース・リーのカンフー映画をパクったにインスパイアされた、千葉真一、志穂美悦子(長渕剛の奥様)のカラテ・アクション。
これが表の看板だとすれば、
裏の顔が、「男の東映」が女性を主人公にした、お色気満載、ヌード満載のいわゆる「東映ピンキーバイオレス」路線となる。
まだまだアダルトビデオなんかない時代、ボンクラ小僧の股間を熱くした(馬鹿)、池玲子「女番長」、杉本美樹「温泉スッポン芸者」。
この遺伝子が、80年代の松竹・岩下志麻姐さん「極道の妻たち」に流れていく。
梶芽衣子「女囚さそり」は扱いが難しい。
女性が主役という意味ではピンキーバイオレンスなのだが、当たり前だが、元日活・梶芽衣子は脱がないわけで(笑)、映画としては名作にして王道ゆえに、ピンキーバイオレスとしては邪道、という困ったポジションである。
役者とは格を気にする人たちだ。
特に歌舞伎の流れをくむ東映がその傾向が強かった。オープニングのキャスト一覧で、名前が何番目に出るかで揉めたりする。
ちょん髷を結って化粧して時代劇には出ても、着流しでドス振り回しても、腹巻にダボシャツで拳銃振り回しても、
お笑いや、エロは、恥ずかしくてできない!という人が多かった。
また映画斜陽の時代、ギャラの高い大物は使えないという事情もあり、ピンキーバイオレンスは、無名の大部屋俳優たちや客演のコメディアンたちが支えた。
その中でも、名前の知られた役者で大看板だったのが、山城新伍とこの人だ。
名優・名和宏さん死去 「仁義なき戦い」、竿師段平…時代劇では名悪役/芸能/デイリースポーツ online
2018.06.27.
映画「仁義なき戦い」シリーズなどで知られる俳優・名和宏さんが26日午前7時32分、急性腎不全のため、都内の病院で死去した。85歳。熊本市出身。葬儀は近親者のみで執り行う予定。
1954年、新生日活の第1期ニューフェイスとして入社し俳優デビュー。二枚目スターとして活躍し、主演映画「地底の歌」(56年)では故石原裕次郎さんと共演した。
57年、松竹に移籍し、63年にはフリーに。以後、名脇役として映画、テレビで数多くの作品に出演した。
特に不良性感度の高い東映作品との相性は抜群で、深作欣二監督、石井輝男監督、鈴木則文監督といった娯楽映画の巨匠たちの作品には欠かせない存在に。「仁義なき戦い 広島死闘篇」、「仁義なき戦い 代理戦争」での村岡組長役、「温泉スッポン芸者」、「温泉みみず芸者」の竿師段平役は当たり役となった。
テレビドラマでは時代劇の名悪役として「水戸黄門」「大岡越前」などに出演した。
一般紙、スポーツ紙が、まるで判を押したように、名和宏なら「仁義なき戦い」の名前を出しとけばいい、みたいなイイ加減なスタンスなのに比べて、
「温泉スッポン芸者」と明記したデイリースポーツは本当に偉い! 担当記者が「東映」というモノをちゃんと理解している人だ。
裸になる役で、内容がバカバカしく下品で、ギャラも安そうな、大物役者が敬遠するピンキーバイオレンスに、名和宏は、まるで楽しんでるかのように、進んで出演した。こういう悪ふざけが好きなお茶目な性格だったんだろう。
東映のイメージしかない人だが、最初は日活、次に松竹だったんだね。
名和宏はちょん髷だけでなく、スーツも似合うので、裕次郎映画やアキラの日活無国籍に敵役で出てきてもハマりそうだ。それはそれで見たかった。
ご冥福をお祈りする。
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