在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

仮名手本忠臣蔵『天河屋義平(天野屋利兵衛)は、男でござる』~たとえ真実でもtwitterで不特定多数にバラまいたら犯罪。

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仮名手本忠臣蔵十段目。

赤穂事件、討ち入り直前。

大坂の商人・天河屋義平は、大石内蔵助から依頼を受けた武器を調達する。
そこへ幕府の捕り方(正体はどんでん返しだが)が急襲。
義平の子供を人質に取り「赤穂浪士の武器はどこだ!」と尋問する。
そこで義平一世一代の啖呵を切る。

天河屋義平(天野屋利兵衛)は、男でござる。

町人とは言えど、たとえ子供の命を失おうと、男と男の約束は守る。

 

「ヨッ!日本一!」 大向こうから声がかかりそうな名場面である。

 

私は、骨の髄から「吉良贔屓」であり(笑)、赤穂は大嫌いだ。

 

 

ドラマとしておかしい忠臣蔵~一人も殺されていない赤穂浪士VS基地外通り魔&逆恨みテロで惨殺された吉良上野介。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

刃傷「松の廊下」は浅野内匠頭の乱心である(それで不可解な点は何も無い)。元禄忠臣蔵、赤穂浪士、吉良上野介。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

高岡早紀のオッパイだけではない!~史実ゼロ(笑)で元禄赤穂事件の《真実》を暴く映画「忠臣蔵外伝四谷怪談」。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

#GoTo は医療ではなく経済ですらなく、意地とメンツで決まる。菅首相 #日本学術会議 任命拒否は「忠臣蔵」「韓国軍レーダー照射」である。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

とはいっても、いくら赤穂事件は嫌いでも、仮名手本忠臣蔵を知らずして、日本近世は語れない。 実は「現在」も語れない。

 

天河屋義平のモデル・天野屋利兵衛は実在の人物だが、史実では、赤穂事件にはまったく何の関係もない。

ゆえに天河屋義平は、戯作者の書いた100%フィクションのエピソードだ。

 

問題は、なんで、戯作者は、こんなエピソードを書いたのか?

それは「自分たち無関係な庶民も、赤穂事件に参加したかった」からだ。

 

赤穂事件自体は、赤穂藩と吉良家のトラブルであり、どっちも武家。このトラブルに庶民は全く関係ない。

しかし、仮名手本忠臣蔵の観客は庶民であり、まったく無関係な武家同士の争いじゃ、庶民は感情移入し難い。

庶民も赤穂事件に参加したい。そこで、赤穂側を応援する庶民代表として、「義商」天河屋義平が登場する。

 

私は、テレビゲーム、オンラインゲームをまったくやらないが、天河屋義平はRPGのキャラクターなのである。

プレイヤーが、ファンタジー世界や、戦国時代や、三国志や、世界大戦の、戦士を演じてプレイするのと同じだ。

文楽や歌舞伎の観客は、自分も天河屋義平になったつもりで興奮するのだ。

 

人間は、大事件があると、その世界に、その物語に、参加したくなる。

主役とは言わないが、登場人物になりたいのである。

私だって活躍したい! オレだって大暴れしたい! 他人に見て欲しい!

ただし、その欲望は、フィクション世界で留めておかないと大変なことになる。

 

バンビーノ石山が注意喚起!愛媛で火事場泥棒が出没 - 芸能 : 日刊スポーツ

2018年7月9日
 お笑いコンビ、バンビーノの石山大輔が、西日本豪雨の被害に見舞われている愛媛県に住む身内が“火事場泥棒”の被害に遭ったとし、注意を呼びかけている。
 愛媛県大洲市出身の石山は、現地にいる親戚や友人などから得た情報をもとに詳細な被害状況をツイッターで伝えている。
 9日には「普通の車に乗って消防士の人が助けにくることはほぼありません。身内も泥棒にあいました」と、災害の混乱に紛れ込んで泥棒をはたらく火事場泥棒が出没しているとして注意喚起し、「皆さんを信じて行動している人にとっては辛いことです。ナンバーを控えましたので、車を見つけましたら、通報して下さい!」と呼びかけた。 

 

バンビーノというお笑い芸人はぜんぜん知らないが、

彼は芸人としてのキャリアに致命傷を受けかねない危険な行為をしている。

 

というより、彼よりも、はるかに問題なのは「日刊スポーツ」である。

不幸な話ではあるが、彼が芸能人であるがゆえに、日刊スポーツが記事にしてしまった。

芸人さんには何の悪気もないが、日刊スポーツを批判するためには、彼の記事を引用するしかない。

 

当たり前のことを質問する。 

日刊スポーツは、この記事を書いた記者と、掲載を許可した編集部は、芸人さんのツイッターが「事実」であるという「ウラ取り」をちゃんと取ったんだろうね?

ジャーナリストとして、芸人さんにも取材して、芸人さんの親戚と友人にも取材して、愛媛県大洲市の市役所と警察署にも取材して、実際に、被災地に「泥棒」「窃盗」の被害があったことを、ちゃんと確認したんだよね?

まさか、ネットで見ただけを記事にしました、じゃないよね?

 

芸能人の熱愛だの不倫だの、そういう呑気な話とはワケが違う。

非常事態における治安不安地域の情報なのである。犯罪情報なのである。

「ウソでした」「又聞きです」「LINEにそう書いてありました」じゃ済まない。

 

すでに、ネットでは、「窃盗団」のデマが飛び交っている。

 

「窃盗グループが被災地に」デマ情報急速に拡散 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

2018年07月09日
 西日本の豪雨で、ツイッターでは「レスキュー隊のような服を着た窃盗グループが被災地に入っている」などの情報が急速に拡散している。しかし、警察は「そのような事実は把握していない」としており、不確かな情報に惑わされないよう注意を呼びかけている。
 ツイートは複数の人物が聞いたうわさが元になっているとみられ、被害の大きかった広島、岡山、愛媛の各県の地名を挙げ、「自衛隊を名乗っている」「消防団の服装をしている」などという内容もある。
 「窃盗犯は大阪ナンバーの車を使用」「崩れた家に入って窃盗している。たぶん中国人」などという記載もあり、投稿を見た多数の人にリツイート(転載)されている情報もある。避難所などでも話が広がり、広島県呉市もホームページで「窃盗団に注意して」などと掲載した。
 東日本大震災の際は、住人が避難中に空き巣被害が起きたが、広島県警は、ツイッターで多数の情報が流れていることについて「発信元を確認し、不確定な情報を拡散させないで」と呼びかけ、岡山、愛媛両県警も被災者らに冷静な行動を求めている。

 

日刊スポーツが記事にした芸人さんのツイッターの内容は、「消防団」だの、「車のナンバー」だの、読売新聞のデマの典型例とソックリなんだが、日刊スポーツよ、本当に大丈夫なのか? 記事に信頼を置いていいのか?

 

一般人のツイッターだけなら、まだマシなのだ。

芸人さんという有名人のツイッターでも、まだ何とかなる。

しょせん個人である彼らの行為は止めようがない。

「その情報のソースは何ですか?信用できるソースですか?」と反論もできる。 

 

しかし「はい。日刊スポーツがその内容を保証しています」と言われたら、アウトである。

マスコミが認めてしまったら、もう取り返しがつかない。

 

しかも、芸人さんは、すでにニュースソースを削除してしまっている。

 

バンビーノ石山 on Twitter: "不安にさせてしまうというのもあるので、ツイートは消しました。
でも、僕の同級生は実際に2.3人やられてはいます。
窃盗は本当みたいなので、皆さんには気をつけては欲しいです。わざわざありがとうございます。… "

 

バンビーノ石山 on Twitter: "ツイッターではないです。
lineの地元のグループの実際の現状なので、窃盗があるのは間違いないです。
何か他に気になることはありますか?… "

  

バンビーノ石山 on Twitter: "窃盗があるのは本当のことですが、番号は警察が確認中とのことですので、何分か前に削除しました。時間が勿体無いので、これ以上はすいません。… "

 

芸人さんは「僕の同級生は実際に2.3人やられてはいます」と書いている。

1つの街でたまたま1人が被害を受けたのではない。芸人さんの友人が2、3人ということは、他人も被害を受けてるだろうから、現場の被害総数はさらに多いことになる。

芸人さんのツイッターが事実なら、狭い地域で、連続して、大量の窃盗が発生していることになる。

 

もう遅いのだが、芸人さんの友人たちは本当に信用できる人物なのか?

「オレも盗まれた」「オレも」「オレも」は、本当に本当なのだろうか?

もちろん、彼の友人たちは普段は信用できる人物だろう。

しかし今現在の友人たちは普通じゃない。水害直撃で、パニック状態にあるはずだ。

人間はパニック状態になると、何でも言ってしまう動物なのだ。

 

ハーメルンの笛吹き男VS古今東西「悪魔憑き/狐憑き/神がかり/過呼吸」少女。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

芸人さんが報告した、現地で発生した(かどうか、非常に疑わしい、と私は予断と偏見を持つ)ことは、刑法の犯罪だ。

「もうツイッターは削除しました」じゃ済まないのである。

 

しかも、ちゃんと印刷した新聞紙を全国で売っている新聞公認の情報になってしまっている。

だから、一番の責任は、芸人さんではなく、日刊スポーツにある。 

 

こういう災害時のデマは、

スタートは「悪意のある愉快犯のイタズラ」かも知れないが、

拡散するのは、「悪党」じゃない。「善人」なのだ。

「危ない!」「許せない!」という「善意の義憤」が、事態をさらに悪化させる。

 

関東大震災当時の「朝鮮人が井戸に毒入れた」も、「悪意のイタズラ」ではなく「善意の義憤」だった。

余命三年時事日記が煽った13万件の弁護士懲戒請求も、「悪意のイタズラ」ではなく「善意の義憤」だった。

オウム真理教のハルマゲドンだって、麻原本人と教団幹部にとっては、「悪意のイタズラ」ではなく「善意の義憤」だったのだ。

 

東日本大震災でも同じことが起こった。「悪意のイタズラ」ではなく「善意の義憤」だった。

 

《東日本大震災2011/03/19》善意だろうがデマはデマだ!馬鹿野郎! - 在日琉球人の王政復古日記

震災の前から書いているが、何が「マスコミ不信」だ、馬鹿野郎! 
「ネット言論」の方がはるかに虚偽とデマだらけではないか。

震災前だろうが、震災後だろうが、ネット情報が、マスコミ情報より、マトモだったり、正確だったりした事例がいったい何個あるというのか? ゼロだ、ゼロ。

 

非常時に必要なものは「情報」ではない。「正確な情報」である。 
非常時に必要なものは「食料」ではない。「安全な食料」である。

「食料」ならなんでもいいと「食中毒を起こす食料」をまくのは犯罪であるように、 
「情報」ならなんでもいいと「未確認の虚偽情報」をまくのは犯罪である。

 

悪意だろうが、冗談だろうが、デマはデマ。 
善意だろうが、誠実だろうが、デマはデマ。

 

被災地の友人から窃盗団情報を受け取った芸人さんはどうしたらよかったか?

たとえ、それが真実でも、たとえ物的証拠があっても、その情報を、不特定多数のバラまいては、絶対に、いけない。ツイッターは厳禁である。

その情報は、現地(じゃなくてもいい)の役所と警察署に送るのだ。

それで終わりだ。それ以上はやってはいけない。

公的機関「以外」への情報拡散だけは、たとえ事実でも、絶対にやってはいけない。

 

人間は誰でも、大事件の、つまり「物語」の登場人物になりたい。

オレだって普通の凡人じゃない!物語で活躍したい!

江戸時代の町人だけでなく、平成の庶民だって、天河屋義平になりたいのだ。

 

しかし、天河屋義平は舞台の上の架空の人物であり、観客席の人間が、現実に、演じてはいけないのだ。

「被災地にいない」たくさんの第三者が、天河屋義平になって、義侠心を爆発させて、やりたい放題大暴れして、ネットで啖呵を切り始めたら、もう手が付けられない。

 

「物語」は恐ろしいのだ。人間を「虜=奴隷」にしてしまうからだ。

宗教も、歴史も、国家も、民族も、思想も、恋愛も、家族も、「物語」なのだ。

恐ろしいけれど、「物語」がないと、人間は生きていけない。生存できない。

人間は、「物語」と、細心の注意を払いつつ、永遠に付き合っていく。

 

芸人さんに傷を付けないためにも、日刊スポーツは、今からでも、ウラ取りして、訂正記事を出すべきである。

 

もう一度書く。

現時点では、たとえ窃盗団が、本当でも、事実でも、真実でも、

個人が、不特定多数に、ツイッターで流してはいけない。

マスコミは、ツイッターだけをネタに、記事を書いて掲載してはいけない。

 

※追記 そして、実例が出てきた。

 

日刊スポーツは至急ウラ取りすべき。TBSラジオの東広島市窃盗団は誤報デマで、バンビーノの愛媛県大洲市泥棒は事実なのか? - 在日琉球人の王政復古日記

 

こうなるような、イヤな予感がしていたのだ。