EP3「シスの復讐」は露骨過ぎる政治映画である。
公開当時の時事ネタ過ぎて、今から見ると出来が悪い。
リベラル政治映画「STAR WARS / スター・ウォーズ」(その2)~女王はダライ・ラマ+アウンサンスーチー。 - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
戦争の危機を前に、効果的に機能しない元老院(=SENATE、つまりアメリカ上院、それから国連)を尻目に、非常大権を握ろうとする最高議長(つまりはアメリカ大統領)・・・つまりは、どこからどう見ても、当時のブッシュ共和党政権批判である。
ジェダイの会話もアレ過ぎる。
ウィンドゥ「任期が切れても居座ってる怪しい議長を追い出す!」
パドメ「これで自由が失われた。万雷の拍手の中で・・・」
オビワン「ジェダイは共和国の平和とデモクラシーを守るためにある」
ウィンドゥはまるでマイケル・ムーアだし、
パドメはディキシー・チックスだし、
マスター・オビワンに至ってはデモクラシーの説教を始めるのだ。騎士なのに。
敵のドゥークー伯爵は、イラクのフセイン、またはパナマのノリエガではないか?
二人とも、元々は、裏ではアメリカと良好な関係だった。アメリカの庇護の元、縄張り内の汚れ役をやっていたのだ。しかし、徐々にコントロールが効かなくなり、アメリカを敵に回すことになる。
ただし共和国に反旗を翻す分離主義者たちは、イスラムの独裁者でもラテンアメリカの軍人でもない。
通商連合、テクノユニオン、つまりは「企業」ですな。
民主党的リベラル経済政策に反して、国外に産業を移転し、アメリカ国内の労働者の雇用を守らない自分勝手なアメリカ大企業。
不当に安い商品をダンピング輸出して、健全なアメリカ国内市場を混乱させるアジア系企業。
特に通商連合の正体は、EP1でもわかるようにズバリ華僑=支那でしょう。
しかし国家=善、企業=悪というのはアメリカ映画ではかなり珍しい。
で、「シス」とは何か?
「パルパティーン議長=ブッシュ大統領」だとすれば、「シス=ネオコン(ネオコンサバティブ・新保守主義)」だろう。
アメリカの思想集団・ネオコンは、共和党を応援しているし、一応「保守主義」とされてますが、その始まりは保守と正反対の極左思想の要素を濃厚に持ってる特異な政治思想だ。
アメリカでネオコン知識人と呼ばれる人物の多くは、若い時はリベラルどころかもっと左の社会主義者だった。それもソ連=スターリン主義に敵対する反スターリン主義つまりはトロツキスト(世界革命派)だったのだ。
彼らは「悪の帝国ソ連」打倒が最大の目標で、そのソ連に対して微温的対応しかできないリベラル民主党に失望し、対ソ連強硬派の共和党に鞍替えしたレーガンデモクラット(レーガンに鞍替えした元民主党支持者)なんですな。
そしてソ連打倒に成功した後、彼らネオコンの次の目標は全世界を、アジアも、アフリカも、中東も、(強制してでも)民主化すること=世界革命だった。
昔ながらの本当の保守主義ならそんなムチャは考えない。彼らはこの世界には冷酷な格差があることを当然とする。
他国の飢餓も、独裁も、内戦も、差別も、その国の自業自得。運命だと思って現地の人間だけで何とかしろ。こっちの知ったことではない。
世界に対して自国の利益にならない限り徹底して不干渉だ。たとえ民主主義であろうと全世界をその一色に塗り上げようとはしない。なぜならできないからだ。
そもそも民主主義なんて甘ったるいモノを信用しないのが保守主義の真骨頂だし。
しかしネオコンは、世界中に「民主主義」つまり「アメリカ」を押し売りした。言うことを聞かないパナマのノリエガやイラクのフセインを暴力で潰していった。
リベラルだって世界を民主化=アメリカ化することには賛成である。ただし問題はその手段で、無理やりな強制はできない。
例えばインドが理不尽なカースト制度を止めることを望みはするが、かといって平等を実行しないインドにアメリカ軍は送れない。
世界の民主化は遅々として進まない。飢餓も、独裁も、内戦も、差別もぜんぜん減らない。
ええい!めんどくさい!馬鹿な野蛮人どもはオレたちアメリカ人の言う通りにしろ!選挙をやれ!法を守れ!女を学校に通わせろ!子供を虐待するな!クジラを殺すな!文句を言うやつは海兵隊が叩きのめす!西部開拓時代もインディアたちをこうやって「民主化した」んだ!・・・これがネオコンだ。
もともとは平和でリベラルな共和国の守護者「ジェダイ」だったのに、あまりの世界の暗愚と無理解と非効率と失敗と見通しの暗さに、ダークサイド暗黒面の誘惑に堕ちていった「シス」。
「ジェダイ=民主党リベラル派」VS「シス=元左翼の現共和党右派・ネオコン」
という、偶然とは思えない露骨さである(笑)。
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に続く。
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