恋愛映画というより政治映画である。
というか、優れた恋愛映画は、たいていが優れた政治映画になってしまう。
「ラブ・アクチュアリー」は「911テロ」から生まれた数多くの政治映画の中の一つだ。
911テロから14年。
同じ9月に、サッチャーの巨大なる政治遺産と戦う左翼政治家ジェレミー・コービンが労働党の党首になりそうなのも、神の配剤か、何かの因縁か。
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ずばり、「ラブ・アクチュアリー」は、反保守、反ブッシュ、反アメリカ共和党、反米、反ブレア、がかなり露骨なイギリスのリベラル映画だ。
恋人同士、家族同士、友人同士が出会い、笑顔で抱き合う、空港の風景。
・・・映画の冒頭シーンから、メッセージは明確、というか露骨だ。
このシーンは、飛行機乗っ取り自爆テロへのアンチテーゼなのだ。
飛行機は好きな人に会うために、愛の為に飛ぶのであって、憎悪のカタマリとなってビルに突っ込む為に飛ぶのではない、ということだ。
登場するカップルは、異なる人種、異なる国籍、異なる階層の混じり合い。
知的な黒人男性と美人の白人女性の新婚夫婦と、ダサい白人男性の友人。
知的なイギリス人男性と、肉体労働のポルトガル人女性。
見るからにイングランドな白人少年と、いかにもアメリカンな少女。
若いイギリス人首相と、おデブな女性秘書と、ガサツなアメリカ大統領。
リベラルの社会通念まる出しだ(笑)。
映画は、テロを引き起こしたアルカイダを批判した返す刀で、立場が反対の「ブッシュのアメリカ」も馬鹿にする。
イギリスのくたびれたロック歌手が、(当時の)アメリカを象徴するゴシップシンガー・ブリトニー・スピアーズを小馬鹿にする。
イギリスでは全然モテないダサい男が、(ブッシュに投票するような田舎者の住む)アメリカ中西部へ行けばアメリカ女にモテモテ。
まあ「反米」というよりは「笑米」、「笑・中西部(共和党支持基盤)」といったところか。
ヒュー・グラント演じる英国首相が、スケベで尊大な米国大統領に噛み付く。
あれは労働党を支持していた英国リベラル派が、当時のブレア首相に、戦争へ突き進むブッシュ大統領に対してやって欲しかった「願望」なのである。
つまり現実には、ブッシュに屈し、イラク戦争に加担したブレアへの批判でもある。
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もしあなたが政治的に親米派または保守派を自認しながら、「ラブ・アクチュアリー」を見て不愉快にならなかったら、あなたは政治にまったく向いていない。
または映画鑑賞に向いていない(笑)。