在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

ドラマとしておかしい忠臣蔵~一人も殺されていない赤穂浪士VS基地外通り魔&逆恨みテロで惨殺された吉良上野介。

師走も14日。

 

なんでも「高低差ありすぎて耳キーンなるわ!」というギャグがあるそうだが、それを狙ったわけではないが、同じジャンルとは思えない高低差の2つの記事である。

 

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稲垣浩監督の『忠臣蔵 花の巻 雪の巻』(1962)を最後に女優としてのキャリアに幕を閉じ、翌年に行われた小津監督の葬儀以来、表舞台に姿を見せなかった。

 

紀里谷和明、感無量!深々と頭下げ感謝 (シネマトゥデイ) - Yahoo!ニュース

本作は、映画『CASSHERN』『GOEMON』の紀里谷監督が「忠臣蔵」の世界観をモチーフにハリウッドで制作。

 

いくら私が馬鹿映画好きでも、まさか「東京物語」と「キャシャーン」を比べるつもりはないし、東映ボンクラ小僧が「あの」原節子を語るのは失礼だし(というか、正直、この人の映画はあんまり見ていない(汗))、キャシャーンはすでに覚えていないので、そういう話ではない。

 

共通点は、季節的にも「忠臣蔵」である。

 

実は、私が歴史なんかに目覚めたキッカケは「忠臣蔵元禄赤穂事件」なのだ。

といっても、忠臣ファンではない。

全くの正反対で、日本史上、私が最も一番「嫌い」な事件だ(笑)。

 

遠い昔、小学生のころだったと思う。テレビで忠臣蔵をやっていた。誰が主役だったかも忘れたが、モチを食いながら見ていた。ということはおそらく正月だろう。

クライマックス「吉良邸討ち入り」。

雪の中、そろい装束の赤穂浪士。対する吉良側は2倍か3倍の数の用心棒たち。

チャンチャンバラバラの末、最後は炭焼き小屋に隠れていた吉良上野介を成敗して、ついに赤穂浪士堂々の御本懐。吉良の首級を先頭に、亡きご主君の眠る泉岳寺へ凱旋行進だ!

 

・・・しかし、ここで日本のロマンを解さぬ(笑)野暮な琉球人少年には、妙な「違和感」が残ったのだ。

その違和感が「地獄の釜口」とも知らずに。嗚呼ここで引き帰しておけば(笑)。

 

といっても、小学生のボンクラに、歴史的な学問的な違和感を感じるはずもない。

感じたのは、ドラマ作劇上の違和感なのだ。エンタメとしておかしいのである。

 

「ありゃ?赤穂浪士、47人もいて、一人も死んでないの?」

 

いや「主人公は強い」という《ドラマの法則》は、少年でも解る。

「最終的に主人公が勝つ」のも当然だ。

しかし「クライマックスのチャンバラで、主人公グループの人数がたくさんいるのに、誰一人死なない」のは、それこそ《ドラマの法則》として、変じゃないか? 

確かに、主人公がたった一人で乗り込むのなら、死ぬわけにはいかない。 

しかし47人もいれば、ドラマを盛り上げるために、

例えば「斬られそうになった味方をかばって死んでいく役」とか、

「敵のボスキャラの強さを表現するための斬られ役」とか、

「瀕死の重症で吉良の首級を見てホッとして死んでいく役」とか、

「一足先に殿の元へ参って、おぬし達を待っておるぞ、と笑って死ぬ役」とか、

主人公グループの悲壮感・悲劇性をアップする《ドラマ上の演出》があるはずだ。

それが全く無いのである。スカッとしない。 

 

だってさあ、47人の何倍もいるくせに、相手を1人も殺せないなんて、吉良軍団が弱すぎるだろう(笑)! 

吉良軍団サブキャラ・清水一学なんて二刀流で獅子奮迅の活躍なのに、結局、赤穂浪士の誰も斬ってない。なんだ弱いじゃん。

 

そもそも、主人公グループが47人もいるなんて、ドラマの設定上、多すぎる。

各々のキャラクターが全然立たない。普通なら、主人公は多くて4、5人。じゃないと主人公の見せ場が作りきれない。

 

あんなに弱い吉良を、誰も死なないくらい無敵の赤穂浪士(しかも47人!)で準備万端、完全武装、しかも深夜に急襲なんて、なんだか、吉良じゃなくて、赤穂のほうが「弱い者イジメ」じゃないか!

 

・・・そこでドラマを最初から思い出してみた少年は、愕然とする。

 

「うわ、結局、吉良側は、赤穂側を、ダレ一人、直接に殺してない!」

 

後日、少年は歴史の本を読む。「損益計算書」を書いてみる。

 

刃傷松の廊下:加害者=赤穂。被害者=吉良。
内匠頭の切腹:加害者=幕府。被害者=赤穂。
吉良邸の討入:加害者=赤穂。被害者=吉良。
47士の切腹:加害者=幕府。被害者=赤穂。

吉良側が殺した赤穂側の人数=ゼロ。
赤穂側が殺した吉良側の人数=吉良さん含めて約20人。重軽傷者多数。

 

なにこれ? 吉良側は一方的被害者で、全然悪くないじゃん(笑)!?

幕府に死を命じられた赤穂藩主も浪士も、斬首ではなく、名誉の切腹で、自殺であり、殺害ではない。一人も他人に殺されていない。

 

そして、

刃傷松の廊下は、長年の心神性疾患で精神錯乱状態になった青年・浅野内匠頭が、通りすがりのイジメも何もしていない老人・吉良上野介を、発作的に斬りつけた、つまり、赤穂が完全なる加害者で、吉良は全くの被害者の傷害事件。

吉良邸討ち入りは、用意周到・完全武装の赤穂軍団が、まったく無警戒(こっちこそ不運な被害者なんだから当たり前だ)な吉良家の寝込みを襲って、徹底的に集団虐殺した事件。

という説を知る。

忠臣蔵というフィクションからの心理的影響を排除して、第三者的に合理的に考えれば、まあ、これしかないわな。

 

刃傷「松の廊下」は浅野内匠頭の乱心である(それで不可解な点は何も無い)~いつの世も「陰謀論」はウンコ。元禄忠臣蔵、赤穂浪士、吉良上野介。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

そりゃ、突然襲われた吉良側に準備も意思も無いんだから、完全武装やる気マンマンの赤穂側に死者がいないのも当然である。

史実がそうなんだから、47士も名誉の戦死はできない。

そこでドラマでは、その前にいろいろとフィクションをてんこ盛りにして、赤穂側を善、吉良側を悪、として印象付けるのである。

 

斬られて、殺されて、死後も鞭打たれて。 

日本史上最悪、悲劇の冤罪者・吉良上野介様の御無念、いかばかりか。南無。

 

時は師走、処は八幡~一幕狂言富岡八幡宮(刃傷松の廊下+赤穂浪士吉良邸討ち入り)~平成仮名手本忠臣蔵。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

というわけで、忠臣蔵は嫌い(笑)。

時代劇は好きなのに、忠臣蔵関連はあんまり見ないで敬遠している。

 

それでも、さすがに忠臣蔵、好きな映画はある。

 

高岡早紀のオッパイだけではない!~史実ゼロ(笑)で元禄赤穂事件の《真実》を暴く映画「忠臣蔵外伝四谷怪談」。 - 在日琉球人の王政復古日記

に続く。