偶然にも、3人とも、似た、そして異なる、比較すると興味深い経歴である。
全国:04% NH:11% SC:10% NV:05%
南部・スイングステイト・元フロリダ州知事
全国:03% NH:08% SC:02% NV:05%
ジョン・ケーシック
全国:04% NH:16% SC:02% NV:00%
米大統領選 消えなかった「トランプ旋風」 次の南部州制すれば本命候補? (THE PAGE) - Yahoo!ニュース
そうしたなか、今ひとつはっきりしないのは「主流派」の動向だ。今回、ジョン・ケーシック氏が16%の得票率で2位につけた点は、前回アイオワ州で3位に躍進したルビオ氏同様、「主流派」にもまだ勝機があることを示している。ただ、「非主流派」内の「アウトサイダー派」がトランプ氏、「保守強硬派」がクルーズ氏にほぼ一本化されたのに対し、「主流派」はまだケーシック氏、ルビオ氏(11%)、ブッシュ氏(11%)、クリスティー氏(7%)と分散しており、結果的に「非主流派」を利する格好になっている。
というわけで、ワシントン右派の「オヤジ」たちについて。
アメリカ大統領選挙~アイオワ:民主党サンダースは共和党トランプより支持率が高い~ニューハンプシャー:ケーシックが2位! - 在日琉球人の王政復古日記
ケーシックは、日本では無名だが、実は、今回の中で、個人的に一番好きな候補なのだ。
前々回の共和党マケインや、出馬はしなかったが共和党パウエル元参謀総長と同じく、共和党にたまにいる「話の判るガンコ親父」系の人である。
アメリカ大統領選挙~レッドステイツでもブルーステイツでも人気1位のトランプ。「オヤジ」が足りないルビオ。 - 在日琉球人の王政復古日記
「アイオワで2位に落ちたトランプはもう終わり」という意見が、アンチ・トランプ派、特に共和党支持派(笑)から流されている。
確かにアイオワ以降、支持率は全国レベルで下落している。
(略)
しかしトランプは、民主党が強い青い州=ブルーステイツでも、共和党が強い赤い州=レッドステイツでも、宗教保守が強い州でも、弱い州でも、東海岸でも、中西部でも、どこでもまんべんなく人気があって、ほとんど1位なのだ。
だから、まだまだ当分、共和党はトランプに引っ掻き回されるだろう。
(略)
しかし、ルビオちゃん、前々から、個人的に、イマイチなのだ。
株のアナリストや専門家が、そろいもそろって、日経平均の予想を外しまくって絶賛炎上中なのに比べて、こっちは「予想」と「希望」がなかなか的中して、嬉しい。
日本じゃ、派手なトランプや、珍しいサンダースや、おなじみヒラリーが話題になる中、共和党主流派=ワシントン右派のオヤジたちがなかなか話題にならない。しかしアメリカ政治の上では彼らが本流なのである。
ワシントン派、ラジカルリベラル、宗教保守、リバタリアン、ポピュリスト~アメリカ大統領選挙候補「五大派閥」。 - 在日琉球人の王政復古日記
3人とも知事経験者。
ニュージャージーは民主党が強いブルーステイトだし、フロリダとオハイオは両党互角で選挙結果がコロコロ変わる、いわゆる「スイング・ステイト」だ。
逆にそういう不安定な州の知事をやれているということは、政治手腕があるという証明でもある。
この3人、宗教に関してが一番興味深いのだが、長くなるので別に書く。
カトリックVS聖公会(アングリカン、エピスコパル、英国国教会)~アノニマス、ケネディ~ジェブ・ブッシュVSクリスティVSケーシック。 - 在日琉球人の王政復古日記
血筋=エスニシティは見事にバラバラ。三者三様である。まるでアメリカ白人の見本市だ。
アメリカの民族別ランキングの中では(フランス系を別にすれば)トップ。一番初期からの移民で「人生勝ち組」の血筋だ。文句の付けようがない。ブッシュ家は「アメリカの貴族」といってもいい名門一族だ。まさに南部の貴族である。
こっちは、まるで絵に書いたような東海岸の貧乏白人「人生負け組」の血筋。しかし人口だけは圧倒的に多いので、その人数を武器にアメリカ社会の表舞台にのし上がってきた民族集団である。東海岸のイメージどおりである。
一番手のイングランド系、二番手のアイルランド系よりも、かなり遅れてやってきた東ヨーロッパ系は、白人の中ではさらに負け組で、到着した時には東海岸にもう居場所は無く、五大湖周辺に住み着いた家系だ。
クリスティは、ニュージャージー、アイリッシュ、イタリアン、カトリック、そしてデブ(笑)、あらゆる要素から見て、どうもクリスティに共和党のイメージがない。見るからに民主党である。
前回の大統領選では、こんな政治的スキャンダル(?)もあった。
米大統領と共和党のNJ州知事が呉越同舟-サンディ禍対応で - Bloomberg
2012/11/01
米国では、大西洋岸地域を襲った大型ハリケーン「サンディ」が死者や住宅被害をもたらした後、およそ奇妙な友情が芽生えた。来週の選挙で再選を目指す民主党のオバマ大統領と、かつて同氏を「大統領職を引き受ける上で最も準備不足の人物」と評したニュージャージー州のクリスティー知事(共和党)が手を組んだのだ。
(略)
一連の行事終了後にブリガンチンでクリスティ知事は、オバマ大統領はニュージャージー州に必要な資源を提供するために「迅速な行動に出た」とした上で、「大統領が個人的に心配してくれたことに、感謝しきれない」と語った。オバマ大統領も、クリスティー知事は「卓越したリーダーシップ」を発揮し、「責任を持って今回の被災からの復旧を確実に行っていくことに積極的に取り組んでいる」と述べた。
(略)
米プリンストン大学のジュリアン・ゼリザー教授(歴史学・公共政策)は「共和党の幹部が民主党の大統領を称賛しながら並んでカメラのフレームに収まる光景は当然、ロムニー氏が望むものではない」と語った。
オバマとロムニーが大統領選で戦ってる真っ最中に、共和党のクリスティが民主党のオバマを賞賛したわけだ。
共和党支持者、特にオバマ嫌いのティーパーティーや宗教保守からすれば、クリスティの言動は共和党への裏切り行為である。共和党員ならば災害を利用してオバマの無能を叩くことが正しいのである。
しかし共和党支持者で無い立場から見れば、災害復旧に政治対立を持ち込まない、誠実な知事であり、優秀でマトモな「話の判るオヤジ」なのである。
ジェブ・ブッシュは、父のシニアも大統領、兄のジュニアも大統領、WASPで、先祖代々大富豪の名門一族の家柄である。一族の宗教はイングランド系らしくプロテスタントの聖公会だ。
しかし、ジェブは、わざわざ、カトリックに改宗している。
これは彼の奥さんがヒスパニックでカトリックだからだろう。イギリスのブレア元首相と同じで、奥さんのほうに宗派を合わせたのだ。
もちろん、地盤がフロリダなので、カトリックへの改宗は、ヒスパニック票を集めやすいし、選挙的にまったく不利とも言えないが、全国政治を考えれば、多数派プロテスタントから少数派カトリックへの転向でとても有利とは言えない。
しかしそれでも奥さんのために、先祖代々の宗派を捨てたわけだ。これだけでもジェブが誠実な夫で「話の判るオヤジ」なのが判る。
ブッシュ家の中では、お兄さんのジュニアのほうがぜんぜん馬鹿で、弟ジェブがブッシュ家本来の優秀さを引き継いでいるとされる。
しかし選挙では、共和党員が好む、愛嬌のある馬鹿な兄がすんなり大統領に当選し、知的でマジメなジェブが苦戦する。政治も人生も理屈どおりには行かないものである。
ちなみに、ジュニア兄さんも、改宗している。
若いころは、大統領になるならないどころの騒ぎではなく、学業は劣等生で、エリート一家の重圧に負け、酒に溺れ、アルコール依存症で苦しんだ。
その飲酒地獄から抜け出すために、家の宗派である「飲酒に寛容な聖公会」から、奥さんの宗派「絶対禁酒のメソジスト」に改宗して、なんとかアルコールから脱出したのだ。
どうもブッシュ家は愛妻家が多いようだ(笑)。
ジュニアは、禁酒の宗派に改宗したから、大統領になれたのだ。改宗してなければ、はるか昔に肝硬変でお父さんより先に墓の中だっただろう。
ちなみに、トランプさんなんか、見た目の成金趣味からは、酒もドラッグも快楽は何でもウエルカムのムチャクチャに見えるが(笑)、なんとビックリ、一滴も呑まない。まったくの禁酒・禁煙・禁ドラッグだそうな。
禁酒・禁煙・禁大麻・禁珈琲・言葉狩り~トランプは右翼でも保守でもない。ただしオバマよりもマトモな人物か? - 在日琉球人の王政復古日記
トランプさんの宗派はガチガチで堅苦しいカルヴァン主義の長老派である。
人は見かけによらぬものだ。
ニューハンプシャーで逆転2位のケーシックも「話の判るオヤジ」なのだ。
共和党は、同性愛を嫌い、同性婚を認めない。だから同性愛を攻撃すれば支持者に受けが良い。
しかし、地味で全国的に無名だった彼を有名にしたのが、共和党員が集まる、しかもゴリゴリの右翼メディア・FOX主催の討論会での、この発言だった。
Kasich defends stance on same-sex marriage | Fox News Republican Debate
私は英語がてんでダメなので、幸いにも、こういうブログを見つけた。
同性婚容認の共和党“大統領候補” ジョン・ケーシックとは何者か: みつよしのプロダクションノート
ケーシックは、FOXニュースの司会者メーギン・ケリーから「もしも自分の子どもがゲイかレズビアンだと判明したら、あなたは同性婚反対の理由をどのように説明するか」と問われた。
ケーシックは、連邦最高裁が同性婚をすべての州で認める判断を下したことに触れた。「ご覧の通り、私は昔かたぎの人間で、伝統的な結婚の価値観を信じている。しかし、私は裁判所が判決を下したことにも言及したい――そして、私はその判決を受け入れる」。
(略)
「私は娘たちを愛し続けるつもりだ。彼女たちが何をしたとしても愛情は変わらない。なぜだか分かるかい。それは、神様が私に無条件の愛を与えて下さっているからだよ。私は家族や友人や周囲の人々を愛し続ける」
共和党的にはブーイング確実の問題発言である。しかし予想に反して会場は万雷の拍手。FOX女性司会者(当然、同性愛が嫌い)がやや戸惑っている(笑)。
「もう、同性愛は許してやれ。好きにさせてやれ。そんなことより、アメリカ経済とイスラムテロのほうが重要だ」・・・共和党支持者の中でも宗教に狂ってない人々はいるのだ。
さすがリベラル派の多いニューハンプシャー州民は、若くて危なっかしいルビオではなく、「話の判るオヤジ」に投票したのだ。