在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

#横溝正史 #金田一耕助 #本陣殺人事件 VS #イスラム #ヒンドゥー ヤジディー #Yazidi #名誉殺人 事件

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社会の「暗部」照らすオスカー 名誉殺人テーマ「女性が団結するときだ」 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 第88回米アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門賞に2月28日、パキスタンなどで社会問題となっている「名誉殺人」の被害を訴えたパキスタン人女性映画監督シャルミーン・オベイド・チノイさん(37)の作品「ア・ガール・イン・ザ・リバー ザ・プライス・オブ・フォーギブネス」が選ばれた。女性への暴力の深刻さが改めて注目されそうだ。
(略)
 パキスタン政府は「国家の誇りだ」との首相特別補佐官の声明を発表した。一方、著名なイスラム教指導者のムフティ・ナイーム師は最近、チノイさんを「売春婦」と中傷していた。

 

パキスタンでまた「名誉殺人」か、娘が5時間の居所を説明できず (AFP=時事) - Yahoo!ニュース

 パキスタン東部のラホール(Lahore)で先月29日、父親が18歳の娘を射殺するという事件が起きた。地元警察が1日、発表した。いわゆる「名誉殺人」とみられる。
 現在行方不明になっている父親のムハンマド・ラフマット(Mohammad Rehmat)容疑者は、娘が約5時間の居所を説明できなかったという理由で殺害に及んだという。

 

実の姉妹2人を殺害、「名誉殺人」か パキスタン (AFP=時事) - Yahoo!ニュース

 パキスタンの警察当局は2日、実の姉妹2人を殺害した疑いで、きょうだいの男の行方を追っている。「名誉殺人」とみられている。
 事件は、パキスタン北部パンジャブ(Punjab)州サヒワル(Sahiwal)地区のヌールシャー(Noorshah)村で起きた。警察当局によると、モハマド・アシフ(Mohammad Asif)容疑者は、4~5年前にも母親を殺害したが、家族に赦免され、釈放されていたという。
「20代後半のモハマド・アシフ容疑者は1日夜、容疑者の姉妹2人の品格に疑問を持ち、さらに彼女たちの生活スタイルに反対して、2人を射殺した」と、地元警察当局のアラー・ディッタ・バティ(Allah Ditta Bhatti)氏はAFPに語った。姉妹2人は即死し、容疑者は逃走したという。

 

家族が女性を、夫が妻を、父や母が娘を、兄弟が姉妹を、不道徳な言動で名誉を傷つけたという理由で、焼き殺す、殴り殺す、いわゆる「名誉殺人」は、イスラムの専売特許ではない。

 

イスラム立教のはるか前、ユダヤ教時代に、すでに「名誉殺人」はあった。

ヨハネ福音書
8:3 そこへ、律法学者たちやファリサイ派の人々が、姦通の現場で捕らえられた女を連れて来て、真ん中に立たせ、
8:4 イエスに言った。「先生、この女は姦通をしているときに捕まりました。
8:5 こういう女は石で打ち殺せと、モーセは律法の中で命じています。ところで、あなたはどうお考えになりますか。」
8:6 イエスを試して、訴える口実を得るために、こう言ったのである。イエスはかがみ込み、指で地面に何か書き始められた。
8:7 しかし、彼らがしつこく問い続けるので、イエスは身を起こして言われた。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」

 

もちろん、コーランを含むイスラムの教えが、「名誉殺人」を抑制せず、煽ってる面は確かにあるが、出発点は預言者ムハンマドではない。

 

そしてユダヤ教など一神教が起源でもない。

ユダヤ教よりもっと古い多神教だって「名誉殺人」をやらかす。

 

中東クルド人地域にいる、ユダヤ教より古い、太古のゾロアスター教の末裔ともいわれる「Yazidi/ヤズディ/ヤジディ/ヤジディー」という特異な宗派は、圧倒的多数派であるイスラムからは、異端とも、まったくの異教とも見なされ、徹底的な迫害を受けている。

しかし、彼らヤジディ教徒だって、平和な宗教とはいえず、彼ら自身が、イスラムと寸分違わぬ「名誉殺人」で娘や妻を殺している。

 

イラク:少女を石打処刑-クルド当局は情報公開を : アムネスティ日本 AMNESTY

アムネスティ日本
2007年5月10日国・地域:イラクトピック:死刑廃止
ドゥア・ハリル・アスワドという17歳のヤズィード派(訳注:中東のイラク北部などに住むクルド人の間で信じられている多神教)の少女が先日石打処刑されたことについて、クルド地方政府(KRG)が公式に非難声明を出したことをアムネスティは歓迎する。
(略)
2007年4月7日、イラク北部の町バシカで、ドゥア・ハリル・アスワドが男性の集団によって公開石打処刑にされた。ドゥア・ハリル・アスワドはスンニ派イスラム教徒の少年と関係を持ち、イスラム教に改宗したと思われる。そのため、処刑した人びとの中には少女の親族も何人かいた。数百人がこの処刑を目撃した。携帯電話に処刑の模様を記録した人びともいた。地元の治安部隊もその場にいたようだが、介入して処刑を中止させたり、処刑人を逮捕したりすることはなかった。この処刑から2週間ほどたった4月22日、23人のヤズィード派の労働者が銃を持った集団に殺害された。石打処刑に対する報復行為であったと思われる。
イラクでは「名誉犯罪」の報告が多く、とくにクルド地域で頻発している。1969年イラク刑法には、挑発された場合や「名誉にかかわるような動機」がある場合は、「名誉殺人」の量刑を軽くするという条文がある(第128条)。イラクの裁判所は、数十年にわたり、「名誉殺人」を犯した人への刑罰を決める際に、情状酌量の余地があるとして殺人を正当化することを可能にするため、この条文を根拠にしてきた。

 

ヤジディ教徒の17歳の娘が、ムスリム男性と駆け落ちてイスラムに改宗した、と咎められ、彼女の兄弟親族(当然、ヤジディ教徒)によって、石打ち刑(Stoning)で殴り殺された。

 

https://bloggerpriest.files.wordpress.com/2010/08/stoning.jpg?w=460&h=253

 

キリスト教の聖書に登場する罪の女・マリアの殺害方法とまったく同じだ。

「21世紀のヤジディ少女」と「紀元前のマリア」の違いは、近くにナザレのイエスという男がいたかどうかだけだ。

 

パキスタンのお隣・インドでは、イスラムと敵対する多神教ヒンドゥー教徒が、自分たちの妻や娘や姉妹を、ペット処分並みのお気軽さで「名誉殺人」をやらかしている。

 

兄弟が女性焼殺、インドでまた「名誉殺人」 身分違いの結婚理由に 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

2016年3月7日
 インド西部ラジャスタン(Rajasthan)州の村で、家族の意向に反して異なるカーストの男性と結婚した女性が、兄弟に焼き殺される事件があった。地元警察が6日、明らかにした。インドでは、家族の名誉を汚したとの理由で身内を殺害する、こうした「名誉殺人」がしばしば起きている。 
 被害者のラーマ・クンワル(Rama Kunwar)さん(30)は8年前にカーストの異なる男性と駆け落ちして村を離れていたが、もう家族が結婚を許してくれることを期待して4日に帰省した。
 しかし、まだ怒りが収まっていなかった兄弟らは夫の親族宅にいたクンワルさんを家の外へ引きずり出し、村人らの前で火をつけた。

 

一神教でも、神秘思想でも、多神教でも、「名誉殺人」をやらかしてるわけで、宗教が「名誉殺人」の原因ではない。

 

「宗教」による分類より顕著なのは、「地域」である。

つまり宗教に関係なく、インド亜大陸から北アフリカにかけての南アジア・中東の地域に依存した風習なのだ。

 

人類の歴史の99%は男尊女卑だし、同じような「名誉殺人」は、昔なら人類の住む全地域、ヨーロッパでも東アジアでもアメリカ新大陸でもおそらく行われていただろうが、他の地域が捨てたその蛮習を21世紀まで維持し続けたのが、この地域=風土の特長ともいえる。

 

つまり、イスラムヒンドゥー教が「名誉殺人」をやらせてるのではなく、「名誉殺人」をやらかすような文化圏が、イスラムを受け入れやすかった、ヒンドゥー教が維持されやすかった、相性が良かった、ということだろう。

逆に、すでに「名誉殺人」が廃れた、忌避するような地域=風土には、イスラムヒンドゥー教は相性が悪く、浸透しなかった、と言い換えることもできるかもしれない。

 

「名誉殺人」。

 

日本を代表するミステリ作家・横溝某に、非常によく似たシチュエーションの有名作品がある。 

男がアクションを起こした動機は「恥を雪ぐため」であり、「名誉殺人」とよく似ている。

 

しかし、よく似ているようで、実は微妙に、そして決定的に異なる。 

こういうニュースがあった。

 

「処女」とうそついて婚姻無効の判決覆される、フランス 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

2008年11月18日
【11月18日 AFP】フランスでイスラム教徒の夫が、妻が処女でなかったことを理由に婚姻無効を訴えていた裁判で控訴院は17日、結婚を無効とした一審判決を覆した。夫側の弁護士が述べた。
 4月に婚姻無効との判決が出されていたが、世論などの反発が強まったことから、当事者同士の望みに反し、政府が見直しを命じていた。
 この夫婦は2006年7月に民事婚したが、妻が処女でないことを知った夫は婚姻の無効を求めていた。妻は婚前交渉を認め、婚姻無効を受け入れていた。(c)AFP 

 

横溝の某作品に酷似したシチュエーションである。

 

もちろん、このイスラムの夫は、妻を殺さず、民事裁判に訴えている。西欧で教育を受け西欧風の倫理観が身に付いているのだろう。

もし彼がモロッコの田舎に済んでいたら、裁判なんて生ぬるいことをせず、殺していたかもしれないし、彼が人を殺せない優しい男でも、家族や縁者、ムラの有力者や地元のイスラム法学者が、なにより妻の実家が、アラーを侮辱した不貞のオンナをナントカしろ!お前がやらないのならオレたちが殺す!と、彼を追い詰めただろう。

 

小説に出てくる新郎も、自分で見つけた女性との結婚を予定している。

しかし、婚約発表の後になって、新妻が処女でなかったことを知ってしまうのも同じ。 

そして、新郎が新妻が処女でないことに異常なほどの嫌悪の情を抱き、自分が恥をかかされたと激怒し、どんなことをしても自分の名誉を回復せねばならないと思い込むのも同じ。

 

しかしここからが異なる。

 

イスラムの新郎は、新妻を殺すことによって、自分の名誉を回復できる。当然、新郎自身はそのまま生きている。
フランスでの裁判も意味合いは同じである。イスラムの新郎は離婚によって新妻を排除しようとする。新妻を排除できれば、新郎の名誉は(ある程度)回復するのだ。


そして、殺す場合でも、離婚する場合でも「このオンナは処女でなかった。ゆえに私の名誉は汚された。そのためオンナを消し去って、私の名誉を回復する」とその理由を周囲に知らせる必要がある。

理由を公表せず、ただ黙って殺しても名誉回復にならず、普通の殺人(=新郎が悪い)になってしまうからだ。

 

横溝作品の日本人新郎も、イスラムのように「殺人」で解決しようとする。
しかし、イスラムと違って、日本の場合、恥をかかせた相手を殺すことが第1目標ではない。
一番重要なのは「殺人の動機=新妻が処女ではなかったこと」は絶対の秘密であり、徹底して隠し通すことなのだ。

 
日本の場合、もし新妻が処女ではなかったことが他人にバレてしまえば、たとえ新妻を殺しても、離婚しても、新郎の名誉は回復されない。ずっと恥さらしで生きていくことになる。
確かに日本人新郎も、イスラム新郎と同じく、新妻を殺すのだが、理由が違う。

日本人新郎が新妻を殺す理由は、恥をかかされた怒りより、この秘密を知っている「関係者」として邪魔なのである。秘密を封じるために殺すのだ。 
だから、この秘密を知っている新妻を殺し、さらに同じく秘密を知る「関係者」である自分自身も殺すのだ。

秘密を葬り去るためには、秘密を知る自分も生かしておくわけにはいかない。

 

イスラムは名誉回復の為に、恥をかかせた相手を殺す。

殺した理由つまり恥の内容を公表しなければならない。というより公表しないと名誉は回復しない。

 

日本は名誉維持の為に、恥の秘密を抹殺する。

殺した理由つまり恥の内容は絶対に公表できない。というより公表したら名誉は回復しない。

 

ここら辺に、日本とイスラムの「名誉/恥」の観念の相違があるようで、興味深い。

 

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※追記

横溝ミステリは日本的要素が濃厚であるが、海外でも翻訳出版されてるそうな。
韓国でも「犬神家の一族」が出版されたと聞いたことがある。

しかし「犬神家の一族」は、話の流れで、実のイトコ同士の結婚が成立しまう部分がある。明々白々の近親婚である。

犬神佐兵衛翁は、自分の愛する孫娘を「畜生道」に落とそうとしているのである。

同姓不婚の倫理がある韓国人はこの辺をどう感じるのだろうか?

ご存知の方がいれば、ご教授いただきたいものである。

 

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