在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

「ケインズは死んだ」レーガン保守革命から、「ハイエク行方不明」トランプ・ポピュリズム内乱へ。


ケインズvsハイエク

 


ケインズvsハイエク 第2ラウンド

 

運命論は信じないが、ちょっと出来過ぎの感はある。

 

レーガン元米大統領夫人死去=「ホワイトハウスの女帝」、94歳 (時事通信) - Yahoo!ニュース

米共和党の故レーガン元大統領の妻、ナンシー・レーガンさんが6日、うっ血性心不全のため死去した。94歳だった。米メディアが報じた。

 

1930年代、大恐慌時代から、自由放任の共和党全盛時代は終わり、ニューディール政策民主党が天下を獲った。

その流れは、1960年代から70年代初頭、公民権運動、ベトナム反戦運動カウンターカルチャー、ピッピームーブメント、アメリカンニューシネマ、で頂点に達する。

 

映画「アラバマ物語」~黒人をリンチした南部白人の支持政党は、オバマを大統領にした民主党。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

しかし、末期のカーター政権は、ホメイニイスラム革命で、中東の大国イランを失う大チョンボを引き起こす。

 

イランをどうするかは、21世紀の今でも、アメリカ外交の悩みのタネである。

1970年代以前なら、アメリカの失敗は、ソ連の利益であった。逆もまた真である。

しかし、当時を振り返ってみると、イラン・イスラム革命で、確かにアメリカは痛手を負ったが、その分、ソ連が得をしたわけでもなかったのだ。

アメリカの損がソ連の得にならない、実はすでに米ソ二極構造は終わりつつあった。その時点で、ある意味、米ソの勝敗は実質的には付いていたのかもしれない。

米ソは、近未来の共通の敵・イスラム原理主義の勃興に、まだ、注意を払っていなかった。

そしてソ連は破滅への道、アフガニスタンの泥沼に頭から突っ込んでいく。

 

1980年代、共和党の巻き返し、大きな政府から小さな政府へ、米ソデタント路線から対ソ強硬路線へ、キリスト教福音派の政治参加、そしてアメリカ南部は民主党から共和党へ地殻変動、イギリスのサッチャー改革と連動した、いわゆる「レーガン保守革命」の時代だ。

レーガンサッチャーは、ついに、にっちもさっちも行かなくなっていたソ連を崩壊させ、米ソ連戦時代を終わらせる。

 

勢力を失ったリベラル派は試行錯誤の末、イギリスはブレアの「第三の道」、アメリカもクリントン旦那の「ニュー・デモクラッツ」で政権は奪還したが、彼らの政策は、看板はともかく、要は「大きな政府路線の挫折」「社会福祉の削減」である。つまりはサッチャリズムレーガン保守革命への土下座であった。

 

レーガン保守革命の時代、戦前のニューディール政策から1970年代まで先進国の基本路線だったケインズ経済学がケチョンケチョンに批判され、「ケインズは死んだ」とまで宣言された。新自由主義の時代である。

 

レーガン保守革命は、

共和党の伝統である、自由市場経済、小さな政府、減税と財政均衡財政タカ派、経済保守路線、に加えて、

ソヴィエト共産主義を始末するため、アメリカが世界を一元管理するための、ネオコン思想、軍備増強、外交タカ派路線、

そして、それらを実行する政権の安定のため、キリスト教福音派の選挙への大量動員、レーガンに投票する南部民主党員(レーガン・デモクラット)の誕生、

つまり、経済保守(タカ派)、軍事保守(タカ派)、社会保守(タカ派)、三位一体の政治革命であった。

 

しかし革命に永遠はない。

ネオコン路線の湾岸戦争イラク戦争財政均衡は崩れ、自由放任のやりたい放題でウォール街が踊り狂って大暴走、ついにリーマンショックをやらかす。経済格差は拡大し、社会の中間層は没落する。

そして、レーガンたちが、内心、バカとハサミは使いよう、と思って操っていたつもりのキリスト教福音派が、徐々にコントロールできなくなっていく。

現実を無視した経済政策・文化政策を強要するティーパーティー派が、共和党内部で大暴れ、マトモな穏健派議員が予備選で落選し、サラ・ペイリンを典型とする言動が無茶苦茶なポピュリストが共和党を乗っ取り始める。

さらに、よせばいいのに、FOXニュースが、ありがた迷惑、贔屓の引き倒しのニュースを垂れ流し、共和党からマトモな議員が消えていく。

 

マトモな保守政治家ジェブ・ブッシュを恥辱まみれにし、暴言天下御免トランプと、宗教基地外クルーズが、トップを争うような「お笑い共和党」の現状を作ったのは、元をたどればレーガン保守革命のドーピング選挙の強烈な副作用、自業自得・自縄自縛なのだ。

 

今や、死んだはずのケインズは黄泉返り、日本も、ヨーロッパも、ケインズ死刑宣告したはずの保守メディアも、左翼を叩きまくってきた政治評論家も、非主流派のメディア出たがり経済学者も、「財政出動財政出動」の大合唱である。

 

(まとめ)アベノミクスは【リベラル左翼】である。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

しかし「ケインズは死んだ」はずじゃなかったのか? そう公言した連中はどこへ行ったのか?

 

保守派のはずの産経新聞は、今や、イギリス労働党コービンと同じ、アメリカ民主党系経済学者のクルーグマンと同じ、「金融緩和」と「財政出動」を連呼する。産経はすこし前まで「行政改革」つまり小さな政府・財政健全化をキャンペーンしていたのである。この路線変更の説明はいつやった? 「行政改革」はどこへ消えた?

肥大する社会福祉と無計画な財政出動で深刻な財政赤字が蔓延した、リベラル全盛時代への批判や反省や責任はどこへ行ったのか? 

 

どうやら、今度はハイエクが行方不明になったらしい(笑)。

 

小さな政府と、軍事タカ派と、宗教保守の、レーガン保守革命から、

国境に万里の壁、中東なんかプーチンに任せろ、イスラム入国禁止の、トランプ・ポピュリズム内乱へ。

 

レーガン未亡人が、夫が作り上げた共和党をトランプが無茶苦茶にかき回すのを見ずに済んだのは、神のご加護やも知れぬ。

 

(まとめ)2016年アメリカ大統領選挙~民主党VS共和党~ワシントンVSラジカルレフトVS宗教保守VSリバタリアンVSポピュリスト - 在日琉球人の王政復古日記