在日琉球人の王政復古日記

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李舜臣の亀甲船VS織田信長の鉄甲船VSペリーの黒船~そんなもんが動いたら大東亜戦争もなかった。

亀甲船、世界の海軍史上最も優れた7大「名軍艦」に選定-Chosun online 朝鮮日報

2016/04/11

李舜臣(イ・スンシン)将軍の亀甲船が歴史上の7大「名軍艦」の一つに選ばれた。9日(現地時間)、アメリカ海軍協会(USNI)が運営するUSNIニュースによると、このほど軍事専門家ら2万6000人を対象に実施したアンケート調査で、亀甲船は初の原子力潜水艦「USSノーチラス」をはじめとする米軍の航空母艦など近代的な軍艦と共に、歴史上で最も優れた7大「名軍艦」の一つに選ばれた。

 

この記事で怪しい数字は、「7」大名軍艦ではなく、「26,000」人のほうだ。

どのレベルまでを専門家と呼ぶのか難しいが、こんなアンケートに答える専門家が 26,000人もいるとなると、軍事という「業界」もかなりヒマである。

 

「秀吉軍を退けた」朝鮮水軍の亀甲船、世界の7大名軍艦に選定...:レコードチャイナ

2016年4月10日、韓国・ソウル経済などによると、李氏朝鮮時代に日本水軍を迎撃するために開発され活躍したとされる朝鮮水軍の亀甲船が、世界の海軍史上最も優れた7大名軍艦の一つに選ばれた。
9日(現地時間)、米海軍協会(USNI)が運営するUSNIニュースによると、このほど軍関係者や軍事専門家、一般読者ら2万6000人余りを対象に行ったアンケートで、16世紀末に活躍した亀甲船が、米英などの近・現代軍艦と肩を並べる結果を獲得した。

 

案の定というか、回答のほとんどは一般人だろう。

朝鮮日報は情報を都合よく省略しすぎである(笑)。

 

USNIニュースは、亀の甲羅状に船体上部を覆った亀甲船について「(敵軍による船内)侵入が事実上不可能であっただけでなく、スピードが速く可動性も優れていた」と説明、また「船首に装着された龍頭形の煙の噴出装置が強力な心理的武器」として働いたと評価した。さらにその歴史について、壬辰倭乱(文禄・慶弔の役)において「数の上で優勢だった豊臣秀吉の侵略軍を撃退するのに決定的な役割を果たした」と説明した。


これについて、韓国のネットユーザーがさまざまなコメントを寄せている。
「(亀甲船を開発したとされる)李舜臣(イ・スンシン)将軍万歳!」
「誇るべき僕らの歴史だ。当時、日本水軍は世界トップクラスの戦力と言われていたのに、李舜臣将軍は絶対的な数的劣勢の中でもそんな日本を壊滅させた。伝説的な将軍としか表現のしようがない人物だ」
李舜臣将軍は日本でも尊敬されていると聞いたよ」
「こんなに立派な将軍がどうして100ウォン硬貨の図柄なんだろう?5万ウォン札(韓国の最高額紙幣)に描くべきだ」
「韓国の歴史上、アンチがいないのは世宗大王(ハングルを生み出した朝鮮時代の王)と李舜臣将軍だけだ」
「こうしてみると、韓国人もポテンシャルがないわけじゃない。問題はいつも政治家にある」
「立派だった海軍が、どうしたことか今では不正の天国になってしまった」
そんなに優れていたはずの亀甲船が、壬辰倭乱以後は消え去った。いったい何が真実なんだ?

 

素人の私が、軍事専門家?に異議を唱えるのは心苦しいし、「USNIニュース」がどれほどの信用・信頼があるサイトかも知らないが、

 

スピードが速く可動性も優れていた

 

少なくとも、これは吞み込めない。だって、有り得ないからだ。

 

李舜臣が優れた武人だったのは事実だろうし、韓国人が民族の英雄に祭り上げる気持ちも解らんではないが、「亀甲船」が優れた軍事テクノロジーだったかどうかは、まったく話が違う。

というか、ぶっちゃければ、韓国人が夢想するようなスーパー兵器としての亀甲船」がホントに実在したかどうかは、思いっきり怪しい。

 

といっても、これは韓国人だけの話ではない。

日本にも、同じような怪しい話が、同じような時代に、同じようにある。

古い記事だが、これが典型例である。

 

織田信長だったら朝鮮出兵は成功させていたと落合信彦氏指摘│NEWSポストセブン

(略)

 原子力発電所を巡る騒動は、首相が代わっても収まりそうにない。事故が起きてもいない原発まで次々に止めようとした前任の菅は問題外だが、新首相の野田も反原発の連中の声に手を焼くことになるだろう。

(略)

 信長は、伊勢の大名・九鬼嘉隆に命じて、史上初めての鉄甲船を建造させる。毛利水軍の火矢も、鉄板で覆われた船には効かない。こうして2年後の第2次木津川口の戦いでは、毛利水軍を撃破。大坂湾の制海権を信長は奪取。本願寺の攻略にも成功することとなる。
 恐れおののいてリスクを取らないだけでは、進路は開けない。大胆に進み、かつ独創的なアイディアで突破口を開くところに、信長の強さはある。
SAPIO2011年10月5日号 

 

落合信彦、というだけで、あとは説明不要という気もせんではないが(笑)、「英雄とスーパー兵器」の組み合わせということでは韓国ソックリである。史実上の信用度も同等だ。

 

私が、日本史の登場人物で一番嫌いなのが織田信長で、次点が坂本龍馬だ(笑)。 

もちろん、本人たちが悪いのではなく、戦後高度経済成長以降から平成までの日本人の彼らに対する過大評価があまりにヒド過ぎるからだ。

 

織田信長は、普通に優れた戦国大名の一人だったと思うが、スーパー天才ではない。なにより、結果論として、彼は天下統一前に挫折しているではないか。彼は志半ばで倒れた敗者なのである。そういう意味では、信長と桶狭間で散った今川義元とあんまり違いはない。

まあ織田家も家名はかろうじて残ったが、天下取りからは完全に脱落した。つまり織田家は最終的に失敗したのである。

特に人心掌握と部下統制に関して、信長はかなり問題があった。それが最終的に命取りになっているし、その面を含めて総合力では豊臣秀吉のほうがよっぽど優れていると思う。

 

韓国の英雄・李舜臣のスーパー兵器・亀甲船。

日本の英雄・織田信長のスーパー兵器鉄甲船

ほとんど同じ時代の、同じような話だ。

李舜臣亀甲船がかなり怪しいのと同じく、織田信長鉄甲船も怪しい。

 

実際、李舜臣亀甲船も、信長の鉄甲船も、ホントに活躍したのかね?

両方とも船として実在しなかったとまでは言わないが、韓国人や日本人が夢想するような、歴史を変えるようなスーパー兵器だったとはまったく思えない。

 

それは歴史学ではなく、物理学的な問題があるからだ。

 

韓国のセウォル号だって、操船ミスもあるが、客室拡張などムチャな改造で、船の重心が高くなり過ぎて安定性を失ったトップヘビー状態だから、転覆したのである。

亀甲船も鉄甲船も、石炭も蒸気機関もない時代に、鉄板で自重を重くした不安定な大型船を、人力と風力だけで、どうやって自由に操船できたのか? というか、人力や風力で本当に動くのだろうか? 

 

ペリー提督が太平洋を横断して江戸湾までやってこれたのは、彼が天才だったからではなく、黒船が蒸気機関だったからだ。

欧米が世界を支配できたのも、彼らの肌が白いからではなく、蒸気機関という人類史上画期的なスーパーパワーを発見・発明できたからである。

 

李舜臣織田信長がいくら天才だったとしても、蒸気機関や石炭、後の石油というエネルギー革命に、人力で打ち勝つことは不可能だ。なぜなら、この地球上の全ては物理的に動いているからだ。

人力で動く(かどうかも、かなり怪しい)李舜臣の亀甲船や織田信長鉄甲船では、蒸気機関で動くペリー提督の黒船には絶対に勝てない。

なぜなら、ペリー提督の黒船こそが、人類の歴史を変えた、ホンモノのスーパー兵器だからだ。

 

だいたいが、落合さんは、「原子力発電」から話を始めてるクセに、なんで、日本が、というか、人間が、無理をしてまで原子力で発電しなければいけないのか?、という、どこまでも唯物論的な「歴史を動かしてきたエネルギー革命」をまったく考慮しないで、観念論的な「英雄ファンタジー」で歴史を語り出すのである。

 

石炭や石油や原子力を無視して歴史を語っていいのなら、

そもそも、黒船は江戸湾までやってこないし、明治維新も無かったし、

日本が朝鮮を併合することも、秀吉時代と同じく、再びムリだったろうし、

石油が手に入らないなんて理由で大東亜戦争も起きてないし、

原爆がない世界ならヒロシマナガサキもそのまんま平穏だった。

ペリー提督の後継者であるケリー国務長官ヒロシマに来ることもなかったわけだ。

 

そんなに優れていたはずの亀甲船が、壬辰倭乱以後は消え去った。いったい何が真実なんだ?

 

誠に正しい疑問だ。

朝鮮の亀甲船は、たとえ実在したとしても、大して優れたモノではなかったから、歴史の波に消えたのだ。

それは、第2次木津川口の戦い以降、大事な海戦であるはずの秀吉の朝鮮出兵にも登場しなくなる、日本の鉄甲船も同じである。

そして、蒸気機関の黒船だけは、歴史に名を残し、そして歴史を生き続け、その技術的・思想的後継船が、今でも世界の海を支配しているわけだ。

 

李舜臣の亀甲船VS織田信長の鉄甲船~架空戦記「日系イスラム王朝VS朝鮮系征夷大将軍」 - 在日琉球人の王政復古日記

に続く。