在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

ロンドン市長選~労働党イスラム貧乏人サディク・カーンVS保守党ユダヤ大富豪ザック・ゴールドスミス(シーシェパードのスポンサー)

 

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CNN.co.jp : ロンドン市長にサディク・カーン氏、初のイスラム教徒 - (1/2)

2016.05.07

ロンドン(CNN) 5日に投票が行われた英国の統一地方選で、ロンドン市長選では6日、労働党のサディク・カーン氏が当選し、イスラム教徒として初めて欧米の主要都市の首長となった。ロンドンはイスラム教徒が人口の12%を占める。
カーン氏はロンドン生まれで、パキスタン移民の父を持ち、6人のきょうだいとともに公営住宅で育った。法律を学び大学講師などを務めた後、2005年の英下院議会選で当選した。
今回のロンドン市長選では、資産家を父に持つ保守党のザック・ゴールドスミス候補との間で激しい選挙戦が展開。人種や宗教といった争点をめぐり激しい応酬があった。

 

ロンド市長選の話だが、上記の絵画はロンドンではない。英国でもない。

 

ロンドン市長選に勝った労働党のサディク・カーンは貧乏人である。

カーン氏のお父さんは、パキスタンからロンドンに流れてきて、貧乏移民用の低所得者公共住宅に暮らした。

 

負けた保守党のザック・ゴールドスミスは大金持ちである。

しかし、ゴールドスミスのご先祖も、大都市の隔離区画、徹底的に差別された衛生状態最悪の狭い空間で暮らしていた。

 

ゴールドスミスのご先祖の暮らしは、20世紀ロンドンのパキスタン移民よりもはるかに過酷だった。カーン氏同様「人種や宗教といった争点をめぐり激しい応酬があった」中で生きてきたのである。

 

先日の英国地方選挙は、イスラム初のロンドン市長だけではなく、英国だけの話でもない、もっと広く欧米の複雑な歴史を背景にした興味深い話である。

 

ロンドン市長選でカーン氏が当選、初のムスリム市長に 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

2016年5月7日

 仏パリ(Paris)のアンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)市長や、米ニューヨーク(New York)のビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長も早速カーン氏を祝福した。デブラシオ市長は、「ロンドンの新市長で、同じ適正価格住宅の支持者であるサディク・カーン氏を祝福する」と述べた。 

 

カーン・ロンドン市長は、英国労働党ということで、もちろんリベラル派ということになるが、祝福した外国の市長もリベラル派だ。

 

イダルゴ・パリ市長はフランス社会党エスニック的にはフランス人ではない。スペインからの亡命者である。

 

デブラシオ・ニューヨーク市長はアメリカ民主党。若い頃ニカラグアサンディニスタ民族解放戦線を支持してたというから、リベラルというよりハッキリ左翼である。本人はドイツ系+イタリア系の白人だが、奥さんはアフリカ系黒人である。市長就任のときに、頭がふわふわのアフロヘアの息子さんが登場したのを憶えている。

 

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ロンドンも、パリも、ニューヨークも、そういうバックグラウンドを持って当選している市長さんである。

同じ地方自治、同じ首都の首長の話だが、日本と英国・フランス・アメリカ、東京とロンドン・パリ・ニューヨークでは、背景にある「歴史の味わい」「政治の深み」が、もう比較するのが馬鹿馬鹿しくなるくらい次元が違う。

舛添さんが公金を私物化して温泉通いしたからって、それがいったいナンだというのか? 単なる汚職というだけのチンケな話である。汚職なんて後進国の政治家でもできる。

 

さて、話題はどうしても、選挙に勝った、パキスタンからの移民を父に持つイスラム教徒、労働党サディク・カーンに集中する。

しかし、ルーツ・家系という意味では、負けた保守党ザック・ゴールドスミスのほうがよっぽど特殊だ。

 

ロンドンに史上初のムスリム市長誕生か、英統一地方選 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News

2016年5月5日
 ロンドン市長の座を争う労働党カーン氏と保守党ゴールドスミス氏の経歴は、対照的だ。公営住宅で育ったカーン氏は、人権派の弁護士から労働党政権の閣僚へと上り詰めた。一方のゴールドスミス氏は、富豪投資家の故ジェームズ・ゴールドスミス(James Goldsmith)氏の息子で、環境活動家から議員となったが、労働党からは世情に疎い人物だと批判されている。

  

白人に見える保守党ザック・ゴールドスミスも、実は、労働党サディク・カーンと同じで、生粋のイングランド人(アングロ・サクソン)ではない。

 

まず、ザック・ゴールドスミスという名前は、明らかにユダヤ系の名前である。

彼のお祖父さんはドイツ・フランクフルト生まれだ。だから名前も本来ならばドイツ語綴りであり、「ザカリア・ゴールドシュミット」となる。

 

そしてゴールドスミスは、記事にある通り富豪の子息だが、単なる金持ちではない。そこらへんの成金とはワケが違う。

彼は、こっちも同じドイツ・フランクフルト出身、あの有名なロスチャイルド家とも姻戚関係にある、ヨーロッパ有数の貴族的大富豪ゴールドシュミット一族なのである。

一族の起源はなんと14世紀まで遡れるそうな。日本なら鎌倉、南北朝時代である。つまり徳川松平氏)よりも古い。古さでいうなら、これも同じドイツ・ハノーヴァー出身のエリザベス女王の英国王室と、どっこいどっこいだ。

何しろ取引相手が神聖ローマ帝国皇帝だったりオスマントルコ帝国だったりした金融業者だ(笑)。経済雑誌なんぞではなく、中世史の歴史書に載るレベルの家系なのだ。

同じ金持ちでも、たかが2代、3代前からの不動産屋にしか過ぎないアメリカのトランプさんなんかとは、そもそも血筋が違うのである。

 

そして、皇帝相手に金を貸し、国家の財政顧問を請け負うような、中世最大級の大金持ち、スーパー銀行家も、自由に広大な邸宅には住めなかった。大邸宅をいくつでも買えるカネは持っていたのに。

なぜならこの一族はユダヤ人だからである。人間(キリスト教徒)ではなかった。

彼らユダヤ人は特別の地域で住むことを強制され、フランクフルトの一角に壁で囲われた狭い狭い「ゲットー」にある、彼らの小さな屋敷は、膨大な帳簿や証書で埋まり、机一つで、ヨーロッパ世界規模で莫大なカネを左右していたのである。

彼らユダヤ人は「人間(キリスト教徒)じゃないけれど、特別の慈悲で住まわせてやる」ということで、フランクフルトの市参事会(政府)に特別の税金を掛けられていた。

21世紀ロンドンのパキスタン移民は特別の税金を課されていない。逆に少ないとはいえ社会給付を受ける立場だ。

これが中世と近代の違い(の一つ)である。人権社会とはそういうことだ。

 

中世社会に戦争や疫病や飢饉のような社会不安が勃発すれば、真っ先にターゲットになったのが、ユダヤ人ゲットーであった。

黒死病の原因はユダヤ人が井戸に毒を入れたからだ」と、どこかの島国の、いつかの時代の、震災の時とソックリのデマが飛んだ。

「そもそも、キリスト教徒でない連中を平然と生かしておいてることに、キリスト教徒がキリスト教徒の義務を果たしてないことに、神がお怒りなのだ」と、ヤツラの特権を許さないオレタチの会みたいな理屈が通用したのである。

 

一番最初の絵は、1614年、貧乏な下層階級市民(キリスト教徒)が、フランクフルト・ゲットーになだれ込み、彼らよりもはるかに金持ちだったユダヤ人から略奪している騒動である。

日本なら、大河ドラマ真田丸」にも出てくるであろう「大坂冬の陣」と同じ年である。

 

21世紀ロンドンのリッチなお金持ち青年には、このような歴史を受け継いだ血が流れている。

当然ながら、中世ヨーロッパならば、ユダヤ人が、まさかイスラム教徒が、フランクフルトでもロンドンでも市長に立候補するなんて、笑い話ですらない。

 

そして、2016年のロンドン市長選で、大昔にデマを飛ばされた被害者ユダヤ人の直径の子孫であるはずのゴールドスミス氏が、今度は立場を入れ替えて「サディク・カーンはイスラム教徒だ。イスラム教徒はテロリストだ。テロリストロンドン市長にしてイイのか?」とネガティブキャンペーンを張ったのだ。

彼のご先祖さまは、あの世から、自分の子孫の言動をどう見ただろうか?

 

労働党サディク・カーンが、パキスタンイスラムの名も無き貧乏人なら、

保守党ザック・ゴールドスミスは、14世紀からのドイツ系ユダヤ人大富豪。

本来ならば、歴史の中で出会うことも無かったはずの2人だ。

そして、今やロンドン市民の8人に1にはイスラムなんだから、どっちが珍しい出身か?特殊な血筋か?といえば、圧倒的にゴールドスミス氏の方なのである。

 

そしてゴールドスミス氏、日本とも、奇妙な、間接的な関係がある。

「環境活動家から議員となった」とあるが、その環境活動とは、あの「イルカを殺すな!クジラを食うな!」で、日本人には悪名高い(笑)環境保護団体「シー・シェパード」の金銭的スポンサーなのである。日本の捕鯨船に衝突する抗議船は、彼が買ってあげたモノなのだ。

日本の伝統文化を愛する愛国者なら、英国保守党を応援してはいけない(笑)。

 

中世には人間扱いされなかった血筋の子孫が、

21世紀には動物を人間扱いしろと要求する。

歴史とは、人間とは、珍妙なモノだ。

 

【米大統領選2016】トランプ氏、ロンドンのカーン新市長は「例外」と イスラム教徒入国禁止 (BBC News) - Yahoo!ニュース

米大統領選で共和党候補となる見通しの実業家ドナルド・トランプ氏は、全てのイスラム教徒の米国入国を一時禁止すると主張していることについて、新しくロンドン市長となったサディク・カーン氏は「例外」にすると述べた。イスラム教徒のカーン新市長は、トランプ氏が米大統領になったら自分は米国訪問ができないと懸念を示していた。

 

例外扱い拒否=トランプ氏の入国禁止措置―ロンドン新市長 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 米大統領選で共和党の指名獲得を確実にしたドナルド・トランプ氏は、自身が提唱するイスラム教徒の入国禁止措置に関し、イスラム教徒のサディク・カーン新ロンドン市長を「例外」にすると提案した。
 これに対し、カーン氏は「私だけの問題でない」と即座に拒否した。BBC放送などが10日伝えた。 

 

宗教で人間の移動を制限する。宗教でアメリカ入国を禁ずることは、宗教で居住地域を強制された中世のフランクフルトと同じだ。ザック・ゴールドスミスのご先祖が受けた差別と同じだ。

ロンドン市長ならば例外、というのも、ユダヤ人でも特別な税金を支払うなら街に住んでいい、というフランクフルトと同じ「二重差別」である。・

 

トランプさんの主張は、21世紀から、中世への「逆戻り」なのだ。

 

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