the world today - they live sunglasses scene
リバタリアン映画を撮ったからって、ジョン・カーペンターの映画がすべてリバタリアン映画というわけではない。リバタリアンに部分的に似ていて、しかし本質的には異なる、対立する思想の映画も撮っている。
《リバタリアン映画列伝》「ニューヨーク1997」「エスケープ・フロム・LA」~トランプVSサンダースVSスネーク #Calexit #NYexit - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
1988年の映画「ゼイリブ / THEY LIVE」。
一般にはマイナーだが、知る人ぞ知るカルト的B級SF映画であり、ここに流れる思想は、結構重要というか、重大というか深刻な話なのだ。
社会格差が広がり、金持ちがますますリッチに、貧乏人はますます貧乏になっていく、アメリカの大都市。
主人公はホームレスの失業者。
金髪のマレット(後ろだけ伸ばした田舎臭いヘアスタイル)、チェックのネルシャツにブルージーンズ、定型的な「レッド・ネック」「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる貧乏白人である。
職業紹介所は長蛇の列。どこへ行っても仕事は無い。建設現場に飛び込んだがユニオン(労働組合)に加入してない余所者には冷たい。職場の黒人労働者を頼って寝場所を確保するが、そこはただの空き地で、ホームレス達がバラックを建て、共同で食事を作る、貧乏人のコミュニティとなっていた。
ある日、主人公は空き地の隣にある教会に入って、奇妙なサングラスを見つける。そのサングラスをかけて街に出てみると風景は一変、ストリートにあふれる、広告、看板、新聞、雑誌、商品がすべて「従え」「考えるな」「消費しろ」「結婚して子供を作れ」と、人間を洗脳する暗号で覆われてることを発見してしまう。
ドル紙幣ですら「これがお前達の《神》だ」と洗脳暗号が書かれている。
そして人間の中に、人間ソックリに化けた不気味なエイリアンが混じっていることにも気が付く。
世界はいつの間にか、エイリアン=勝ち組が上流階級を形成して、警察やマスコミや大企業を支配し、人間=負け組を物質社会、消費生活、資本主義で洗脳し、安い賃金でこき使い、奴隷にしていたのだ。
ゼイリブ= THEY LIVE 、やつら=エイリアンは、活動している。支配している。
対して、WE SLEEP 、われわれ=人間は、眠りこけている。だまされている。
なんでオレたちはいつもお金に困っているのか?貧乏なのか?
なんで仕事がこんなに辛いのか?就活がこんなに辛いのか?
我々の消費生活はウソではないのか?広告宣伝の洗脳ではないのか?
我々の労働条件はウソではないのか?金持ちの奴隷になってないか?
「ゼイリブ」は支配への反逆がテーマだ。
前に紹介した、同じカーペンター作品のリバタリアン映画「エスケープ・フロム・LA」も、支配への反逆がテーマだ。
しかし、両者は大きく異なる。
「LA」の思想は「オレの事はほっといてくれ。お前らも勝手にしろ。オレはお前らの政治に参加しない。野垂れ死にでいいからオレの自由にさせろ」である。これがリバタリアンだ。
「ゼイリブ」の思想は「われわれの事も人間らしくちゃんと扱え。お前らだけの勝手は許さない。われわれもお前らの政治に参加させろ。野垂れ死にしないで生活できる権利を保障しろ」である。
「ゼイリブ」は「お金」を否定する。ドル札もエイリアン=支配者の洗脳の手段である。資本主義を否定している。
しかし「LA」の主人公・アウトローのスネークは、お金を否定するわけではない。資本主義は否定していない。ズルしようが、ダマそうが、生き残った奴が勝ち。自由競争を肯定している。
映画「ゼイリブ」は、格差社会、不景気、大量消費、資本主義を批判する「反体制映画」である。
このままだと、マイケル・ムーア的な、民主党大統領候補バーニー・サンダース的な主張の「左翼映画」となるが、この映画には左翼とは正反対の要素も含まれる。
俺たちと違う、ゼイ=THEY=やつら=エイリアンがいる。
ゼイ=THEY=やつら=エイリアンが、俺たちを苦しめている。
人間ソックリに化けているエイリアンは、かなり危ない表現である。
頭が良くて、金儲けが上手で、上流階級になって、俺たち労働者をこき使う、キリスト教徒ソックリの格好をしたキリスト教徒じゃない連中、つまりはユダヤ人である。
「ゼイリブ」は、下手をすると、ユダヤ人差別の「人種差別映画」である。
なにも遠いアメリカの話ではない。
在日韓国人や被差別部落やアイヌや琉球人が、普通の日本人には無い、脱税だの補助金だの、各種の特権を持っている!、あの犯罪者も在日だ、あのマスコミも在日だ、あの企業も在日だ、あの政治家も在日だ、奴らが日本を汚染している!、という主張が人気の某国もある、と風の噂で聞いたこともある。
「ゼイリブ」の世界では、ありとあらゆるモノが、エイリアンの洗脳だ。
しかしサングラスを通しても、洗脳の書かれていないモノもごく少数だがある。
それは、教会の「十字架」、「星条旗」、そして「銃」なのだ。
十字架に「これはインチキだ」とは書かれていない。
星条旗に「この旗のために死ね」とは書かれていない。
銃に「これが正義だ」とは書かれていない。
十字架と星条旗と銃だけは、エイリアンに支配されてない、つまり人間の味方だ。
あらゆるモノを疑うはずの、「ゼイリブ」の世界では、十字架と星条旗と銃だけは疑わないで信じ込んでいる。
国境を越えてやってくる、自分たちと考え方や行動が違うエイリアンを嫌い、
自分たちの生活を支配するワシントンのエイリアンを嫌い、
海外からモノを輸入して売りさばき、国内産業をダメにして、大儲けしているニューヨークのエイリアンを嫌い、
信じられるのは、十字架と、星条旗と、銃だけ。
経済学や進化論は信じないが、神は信じる。
政府は信じないが、国家は信じる。
いざとなったら銃ですべてを解決する。
これが左翼だろうか? いや違う。正反対の右翼なのである。
有色人種だの、移民だの、同性愛だの、マイノリティの権利を擁護する、オバマの民主党は大嫌いだ。
しかし、ワシントンから海外ばっかり見ている、ジェブ・ブッシュやマルコ・ルビオみたいな共和党主流派も信用できない。
信用できるのは、聖書通りの政治をやってくれるクルーズだ、ウォール街の飼い犬じゃないトランプだ、という人々。
ティーパーティー=茶会運動でオバマケアに反対し、ジェブ・ブッシュを叩き落し、トランプを大統領にしようとしている「ポピュリズム」の世界観を表現しているのが、映画「ゼイリブ」なのだ。
しかし、そもそも、あの暗号を解読できる、不思議なサングラスは、本当に、信用できるのだろうか?
サングラスが、虚構を暴き、真実を見通してるのではなく、
正反対に、暗号が書いてない信用できるモノにニセの暗号映像をかぶせ、信用できないモノに書かれた洗脳暗号を見えないように隠ぺいする機能だったら、どうする?
ドル札は洗脳ではなく本当に社会を豊かにしてくれる便利な道具であり、
逆に、キレイに見える、十字架や星条旗や銃のほうが暗号まみれの洗脳である危険性は排除できるのか?
サングラスを持っていた教会のほうがエイリアンである可能性はないのか?
これも、なにも遠いアメリカの話ではない。
「消費税は財務省の陰謀」というネットの主張が信用できる根拠は何だ?
「国債をバンバン出しても、財政は破綻しない」「政府の借金は、国民の資産」を信じてる人は、大学のマクロ経済学の教科書くらいは読んだうえで、理解してるよね?
現実社会に、真実を見通す便利なサングラスはない。
教会ならぬ、ネット上でタダで配ってるサングラスは、歴史書に「コミンテルン」という暗号を念写するインチキサングラスなのである。
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