働いてるお父さんより、
遊んでいるお父さんのほうが、
好きですか？
この圧倒的に正しい思想に、われわれははたして勝てるのか？
すべては、そこに懸かっている。
大昔の日本の洋酒屋の宣伝である。
わかる。共感する。カッコ良い。素晴らしい映像作品だ。
グローバリストも、ネオリベ＝新自由主義者も、労働を大いに認める。
安倍ちゃん支持の、ナショナリストも、保守派も、右翼も、労働を大いに認める。
アベ政治を許さない、リベラルも、左翼も、SEALDSも、労働を大いに認める。
朝鮮総連の商工人も、靖国神社の参拝者も、「働く姿は美しい」と言うだろう。
自民党も、公明党も、民進党も、共産党も、「働く汗は尊い」と讃えるだろう。
日ごろは醜く対立し、罵り合う彼らに、何の意見の対立もない。
万人にとって、労働はカッコ良い。
人間どころか、神までそうおっしゃる。
新約聖書 テサロニケ人への第二の手紙
3:10 また、あなたがたの所にいた時に、「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」と命じておいた。
3:11 ところが、聞くところによると、あなたがたのうちのある者は怠惰な生活を送り、働かないで、ただいたずらに動きまわっているとのことである。
3:12 こうした人々に対しては、静かに働いて自分で得たパンを食べるように、主イエス・キリストによって命じまた勧める。
3:13 兄弟たちよ。あなたがたは、たゆまずに良い働きをしなさい。
われわれはみんな、人も、神も、右翼も、左翼も、思想を超えて、民族を超えて、遊んでるお父さんより、働いてるお父さんが好きだ。
・・・・・しかし。
私の、喉の奥に、何か、微かな、苦味が残るのだ(笑)。
私の頭の中の巣食うナニかが、この絶対に正しい「全会一致の大合唱」に、なんかイヤ、とつぶやく(笑)。
働いているお父さんより、遊んでるお父さんのほうが、好きですか？
右翼も左翼も賛同するといったが、まさしくその通りで、ほとんど例外がない。
ナチス・ドイツのユダヤ人絶滅収容所の、決して逆戻りはできない正門には、「労働が自由にする」という標語が掲げられた。
昭和２０年の夏まで続けられた神風特攻隊は究極の「勤め」だった。
ソ連の零下マイナス４０度の凍土に建てられたラーゲリ＝強制収容所は、人間を労働によって、革命的人間、共産主義的人間に改造する教育現場であった。
貨幣を廃止したポルポトだって、労働は廃止していない。死ぬまで強制した。
今上陛下御父の代から数えて、２．２６、８．１５に続いて三たびの「御聖断」
昭和から数えて２度目の、平成の最初にしておそらく最後の「玉音放送」
がある。ヤマトの草莽は承詔必謹である。
そもそも「生前退位」だって、肉体的に、年齢的に、聖上の御務め、陛下の御仕事を続けられない、という事態より発した。
しかしだ、冷静に考えれば、別に退位する必要はない。しんどくて公務が続けられないのなら、皇太子に、皇位を譲るのではなく、公務を譲ればいい。御年相応の仕事量に減らせばいい。
しかし聖上もまた「仕事のできないヤツは人間としてのダメだ」という理屈なのである。
誰に対しても御膝を曲げぬ一天万乗の君すら、聖なる労働の前に御膝を屈する。
労働は、キリスト教の神だけでなく、日本の神も縛る。
たとえば、あなたのお父さんは、仕事ができるから、あなたのお父さんなのではない。仕事のできるできないにかかわらず、才能ではなく、血筋によって、あなたのお父さんはあなたのお父さんではないか。
しかし、労働絶対の理屈を押し進めれば、天皇位は、血統ではなく、仕事の出来不出来、個人の才能で決めたほうがいい。
それは、血筋が絶対の「君主制」ではなく、才能でオバマを選んだ「共和制」である。極端に言えば、もし天才ならば、民族も関係ない。天才ならば、韓国人が天皇になってもいい、という理屈になるのだ。
何時になるかは別に、どうやって継承するかは問わず、次代は東宮殿下の御代。
当然、雅子妃殿下が皇后陛下に御成りあそばされる。
しかし不敬な草莽の中には、何の権利があるのかサッパリ判らないが、御病弱の妃殿下を誹謗中傷する不逞の輩が跋扈する。
彼らの理屈も「精神的な問題かどうかは知らないが、皇族の義務を務められない妃殿下に、大役である皇后陛下を任せていいのか？」という、労働絶対神聖視の「サントリーオールド主義」だ。
相模原の１９名虐殺、障害者大量殺傷事件の容疑者の言い分も、「障害者は役に立たない。役に立たないヤツは殺してもいい。いや日本のために殺すべきだ」であった。
つまり、障害者は仕事が出来ないから、労働できないから、殺すべきということだ。
人間の価値は労働の価値で決める。雅子妃殿下を誹謗中傷する連中と同じ理屈だ。
誰からも羨ましがられる天下の東京大学を卒業して、
みんなが憧れる天下の電通の入社して、
１年足らずで、聖なる労働に嬲り殺しにされた、２０歳代の女性もいた。
電通・東大卒女性社員が過労死「１日２時間しか寝れない」クリスマスに投身自殺 （産経新聞） - Yahoo!ニュース
2016年10月7日
川人氏によると高橋さんは東大卒業後の昨年４月、電通に入社し、インターネット広告などを担当した。本採用となった１０月以降、業務が増加し、１１月上旬にはうつ病を発症したとみられる。１２月２５日、東京都内の社宅から投身自殺した。発症前１カ月の残業時間は月約１０５時間に達し、２カ月前の約４０時間から倍増していた。
相模原の人殺しも、
生前退位の御聖断と同じく、
東宮妃殿下への誹謗中傷と同じく、
アベノミクスと同じく、
安倍政治を許さないと同じく、
日本会議と同じく、
北朝鮮と同じく、
ブラック企業と同じく、
就活と同じく、
戦前日本と同じく、
戦後日本と同じく、
資本主義と同じく、
社会主義と同じく、
新約聖書テサロニケ人への第二の手紙と同じく、
古今東西、天上天下、われわれの宇宙は「サントリーオールド主義」で満ちている。
「労働＝人間の価値」サントリーオールドの魔の手からは、あの天皇陛下すら逃げられないんだから、われわれなんかに逃げ場はない。
オトナとは何か？～チャールズ・ブロンソン「荒野の七人」(1960)ＶＳ前川陽子「魔女っ子メグちゃん」(1974) - 在日琉球人の王政復古日記
しかし、これで、本当に、正しいのか？
天皇陛下は、公務なんかしなくても、ただただ皇居に安んじておられるだけで、黙って座っているだけで、その御姿に価値はないのか？
たとえ皇族でも、精神の病に苦しむ女性が、一人娘の成長だけにかかりきりになるのが、そんな妻を守ろうとする夫が、そんなに否定されることなのか？
オリンピックに天文学的なゼニを浪費する世界有数の先進国で、自分の自己責任でそうなったわけでもない障害者が、たとえその生活に税金がかかろうが（オリンピックと比較してみろ）、「働かないで税金で食ってるヤツは死んだほうがいいよね」と、これまた大した税金も納めてない（倫理以外）五体満足なだけの連中に嘲笑されることが、日本の美しい在り方か？
病気で働けないお父さんだって、疲れて果てて遊んでるお父さんだって、公務を減らして皇居の緑の中をのんびり散歩するだけの毎日だって、手足が動かない身体障碍者/身体障害者だって、デスクワークのできない精神障害者だって、サントリーオールドは美味しい。
出来うるのならば、そういうサントリーオールドこそが、本当に美味しいウィスキーなのである。
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