在日琉球人の王政復古日記

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映画「十三人の刺客」(東宝2010)~過猶不及~名君は暗君と同じくらい有難迷惑。 #生前退位 #譲位 #日本会議

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13 Assassins / 十三人の刺客東宝2010年/三池崇史監督)

 

見事な平成リメイクである。こっちも傑作なんで、見て損はない。おススメ。

 

映画「十三人の刺客」(東映1963)~勤労天皇制~今上天皇 #生前退位 #譲位 より #日本会議 の不敬な主張の方が正しい。 - 在日琉球人の王政復古日記

の続き。

 

生前退位」の出発点は、今上陛下の仕事量にある。

平成に入ってから、宮中祭祀、国事行為以外の公務が、明治・大正・昭和時代よりも急増している。それも政府の押し付けではなく、陛下のご希望である。

畏れ多い言い方になるが、ご自分の意思でお仕事を増やして、ご自分の肉体的・年齢的限界を超えてしまったわけだ。

今上陛下がそこまで思い詰めてお仕事に専心なされるのも、その理由は、明治維新と、そしてやはり大東亜戦争の後遺症だ。戦争の、いや、敗戦の後始末なのである。

 

天皇、東宮、秋篠宮~半永久的に戦争を背負わされた「しんどさ」~愛国は戦い。尊皇は反戦。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

しかし、今上陛下の「勤労天皇制」は非常に危険な思想である。

なぜなら「能力主義」だからだ。

 

特設 天皇陛下 お気持ち表明|NHK NEWS WEB

関係者によりますと、5年ほど前、天皇陛下が「生前退位」の意向を示されると、皇后さまも宮内庁の幹部も非常に驚いたということです。そして、どうにか気持ちを切り替えてもらえないかと、皇室の別の話題を持ち出すなど、慎重な姿勢で天皇陛下の真意を見極めようとしました。あるときは、天皇陛下に対し、「これまで象徴としてなされてきたことを国民は皆分かっています。公務に代役を立てるなどして形だけの天皇となられても異を唱える者はいません」などと進言し、翻意を促したということです。
しかし、天皇陛下は「そうじゃない」「違うんだ」などと強く否定し、「象徴としての務めを十分に果たせる者が天皇の位にあるべきだ」という考えを示し続けられました。天皇陛下の考えはその後も変わらず、皇后さまも次第に「お気持ちに沿うようにして差し上げたい」と述べられるようになったということです。天皇陛下のお気持ちは、皇太子ご夫妻や秋篠宮ご夫妻も受け入れられているということです。

 

能力の無い者は皇位から去るべきという理屈は、そのまま、能力ある者が皇位に就くべきとなる。

これは放伐禅譲孟子易姓革命思想である。

暴力で天下を勝ち取る戦国乱世か、優劣を選挙で決める共和制である。

才能の有無ではなく血統で地位が保証される「君主制」に完全に反する。

 

今上陛下の勤労天皇制が公認されたら、皇室はおそらく維持できない。

 

論語 先進11-15

[白文] 子貢問。師與商也孰賢。子曰。師也過。商也不及。曰。然則師愈與。子曰。過猶不及。

 

[書き下し] 子貢問う。師と商と孰れか賢れる。子曰く、師や過たり、商や及ばず。曰く、然らば則ち師愈れるか。子曰く、過ぎたるは猶お及ばざるが如し。

 

[翻訳] 孔子教団の秀才・子貢が、孔子に質問した。
子貢「弟弟子の子張(師)と子夏(商)ではどっちが優れていますか?」
孔子「子張はテンパり過ぎだし、子夏はサボり過ぎだ」
子貢「じゃあ、子張の方がマシですね」
孔子「いや、やり過ぎるのは、適正でないという意味では、怠けているのと同じで、どっちもどっちだ」

 

[超訳] 誠実な性格ゆえに、良かれと思って、あれもこれも、本来は自分の担当ではない、別の仕事を山ほど抱え込み、長時間残業・休日出勤もへっちゃらのマジメ上司は困った存在である。

なぜなら、その部下も、その後任者も、同じくらい無茶苦茶な激務を同然であるかのように「暗に」要求されてしまうからだ。
部下にとって、後任者にとって、マジメ上司は、「困った存在」という意味では、無責任上司やパワハラ上司と同じなのである。
適正に働いて、適正に休む。それが、本人も、部下も、後任者も、取引先も、みんなが幸せになる、最良の社会人である。

 

[意訳] 今上陛下は働き過ぎ。

国民から、同じような長時間労働を要求されかねない、後を継ぐ皇太子殿下の身にもなってあげて欲しい(笑)。

たしかに、通常業務をこなせない病弱な雅子様にも問題はある。
しかし、なんでもかんでも超人的な努力で過労死寸前までバリバリ働けば、日本が良くなるわけでも、皇室が安泰になるわけでも、ない。

 

[要約] 出来過ぎの名君は、ダメな暗君と同じくらい、有難迷惑。 

 

畏れ多い想像になるが、近い将来において、「未来の皇后陛下」が心身的理由で公務を全うできない場合、しかも今上陛下のために摂政に否定的な前例ができてしまった場合、国民世論はどうなるだろうか? 

この過酷な条件で、次代の天皇皇后両陛下(現・皇太子皇太子妃両殿下)の身体と精神は何年くらい持つのか?

 

そして、休むことすら許されない、代理も立てられない、そんな電通並みにブラックな労働条件の「家業」を背負う悠仁親王殿下に、お嫁さんが来るだろうか?

しかも、お嫁さんには、必ず「男子出産」を義務とされる、悠仁親王殿下より過酷な条件が付くのである。

 

仮に希望者がいたとしても、こんな悪条件でも望んで嫁ぐ女性は、その性格・信条・目的・欲望が、常人の範疇ではない、かなり「変わった」女性の可能性が高い。

「天下の玉座に侍りたい」

そんな小池百合子蓮舫稲田朋美辻元清美をさらにウルトラ化したような女性でないと、立候補しないだろう。

たとえ、則天武后西太后阿野廉子みたいな権力亡者ではなくとも、仮に、滅私奉公・殉教者精神あふれる熱狂的な皇室信奉者だとしても、そんな精神状態の皇后が誕生したら、それはそれで非常に困った危機的事態になることは間違いない。

 

東映および東宝の「十三人の刺客」は、とても放置できない暗君の暗殺を狙う側と主君を守る側の激闘を描いた映画だ。

しかし、実際の江戸時代にあんな困った殿様がいたら、家老も家臣も必死で守ったりしない。幕府と相談・連携して「主君押し込め」で始末する。新しい君主は親戚筋の部屋住み三男坊でも迎えればいいのである。

「君は一代、家は末代」

たとえ主君を始末しても、御家は存続させる、それが封建制の基本だ。

 

残虐だったり、浪費家だったり、そういう「暗君」は確かに困る。

しかし、政治意欲があり過ぎて、任務に忠実過ぎて、

幕閣でのし上がるために必死になったり、

危ない国学にのめりこんで尊皇攘夷を公言したり、

家臣の不正や怠慢を絶対許さず息が詰まるような厳罰主義をやりだしたり、

潔癖すぎて女性と寝なかったり、

武芸や学問に熱中し過ぎて体を壊したり、

そういう「名君」も困るのである。

 

会社の危機に立ち上がって、休日返上で奮闘する上司は素晴らしい。

本当は経理部長なのに、営業部長まで兼任して、いろんな現場に顔を出し、部下の面倒も見て、地方の得意先回りから、下請け会社の激励までこなし、早朝出勤に終電帰宅の獅子奮迅。

しかし、部長が毎晩残業していたら、「キミたちは部長の頑張りがわからないのか!?」と言われて、部下は有給休暇も取れない。

そして、とうとう無理がたたって体を壊して入院して、後を任された後任の経理部長も、たまったもんじゃないだろう。

「新しい部長は下請けへ挨拶も来ない」と影口を叩かれる。え?経理のオレが営業もやるの?いつ休めるの?

そのうち、女性社員が鬱病になり、成績を落とした係長が自殺する。

マジメ部長の滅私奉公は、長期的には会社をおかしな方向へ向かわせてしまっているのである。

 

畏れ多くも、今上陛下の理想に反して、怠け者天皇が誕生したら?

とりあえず宮中行事だけは(余分な行事を減らし、簡略化して負担を減らしながら)しっかりやって、国事行為や重要公務は若くて元気な摂政を立てて、

国費を傾けるような奢侈豪遊は困るが、和歌を詠んだり、蹴鞠を遊んだり、草花を愛でたり、避暑地で楽器を弾いて、保養地でマリンスポーツを楽しんで、

年の半分はお休みで休養、余裕があってお気楽でいつものんびり、

そういう天皇のほうが、皇族にとっても、政府にとっても、国民にとっても、一番イイ状態なのではないか?

 

「御病気だというのに現場にいらっしゃった陛下の御姿に感激して涙が止まりません!」なんていう、天皇・国民双方でテンパった雰囲気が止められない異様な緊張状態より、

「まあ、お好きなのはわかるけど、正直、あんまり上手な和歌じゃないよねw」と、国民から肩の力を抜いた評判を受ける天皇の方が、

おそらく長続きするはずだ。

 

ほどほどにマジメで、ほどほどに怠け者。

天下泰平の世においては、御家安泰の真の名君とは「凡人」のことなのだ。

 

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