2017年03月19日
11人の候補者がフランス大統領選挙に出馬する。ローラン・ファビウス憲法院院長が18日の記者会見で、11人の候補者が大統領選挙出立候補のための最低推薦人数である、中央・地方議会議員500人を集めたとの旨を発表した。くじによる決定に則り、候補者はこれから次の順番でリストに並ぶ。
ニコラ・デュポン=エニャン氏、
マリーヌ・ル・ペン氏、
エマニュエル・マクロン氏、
ブノワ・アモン氏、
ナタリー・アルトー氏、
フィリップ・プトー氏、
ジャック・シュミナド氏、
ジャン・ラサール氏、
ジャン=リュック・メランション氏、
フランソワ・アスリノー氏、
フランソワ・フィヨン氏。
上記サイトは「スプートニク日本」という、ロシア系のニュースサイトらしい。
つまり、朝日新聞に左翼バイアスがかかっているように、産経新聞に右翼バイアスがかかっているように、プーチンさんのロシアナショナリズム・バイアスがかかったネットニュースというわけだ。
ネットは紙媒体や電波媒体よりコストが格段に安いから、貧乏国にとってはアメリカとの情報戦を戦う武器となる。
日本語話者は、海外ニュースに関しては、常にアメリカ経由のニュースを見ているわけで、スプートニクがアメリカよりもバランスが取れているかどうかは別にして、せっかく日本語なんだから、アメリカ以外のソースもたまに目を通しておく方がいいのだろう。
さて、2017年フランス大統領選挙の最終候補が、11人に決定したようだ。
すでに、先日のブログで、ほぼ出馬確実だった候補に関しては感想を述べておいた。
フランス大統領選挙/仏大統領選挙2017~ネオリベVSファシストVSトロツキスト~ド・ゴール主義(ゴーリズム) - 在日琉球人の王政復古日記
マリーヌ・ル・ペン Marine Le Pen 国民戦線(FN)
ニコラ・デュポン=エニャン Nicolas Dupont-Aignan 立ち上がれ共和国(DLR)
フランソワ・フィヨン François Fillon 共和党(LR)
エマニュエル・マクロン Emmanuel Macron 前進/オン・マルシュ(EM)
ブノア・アモン Benoît Hamon 社会党(PS)
ジャン=リュック・メランション Jean-Luc Mélenchon 不服従のフランス(FI)
フィリップ・プトー Philippe Poutou 反資本主義新党(NPA)
ナタリー・アルトー Nathalie Arthaud 労働者の闘争(LO)
ジャック・シュミナド Jacques Cheminade 連帯と進歩(SP)
紹介した9人も、ちゃんと最終決定11人の中に入っている。
興味があれば、上記リンクをご参照ください。
マトモな国では、誰でも国政選挙に出馬できるわけではない。
面白半分の愉快犯や、頭の中身が浪漫旅行している人を、除外するために、いろいろ条件がある。
日本は「供託金」を納めさせて経済的プレッシャーをかけるが、
フランスは国と地方の議員さんから500人の支持者を集めることが条件である。
上記の9人の中には、共産党よりも左の、極左勢力の候補が3人もいる。
メランション、プトー、アルトー。
彼ら彼女らは、日本で言えば、中核派、革マル派、革労協なんかに該当する。
その3人が3人とも候補になれたということは、フランスの極左勢力は、正式所属か心情的かは別にして、国と地方合わせて、少なくとも1500人以上のシンパが議席を確保していることを意味するわけだ。
日本で言えば、国会、県議会、市議会に、総計1500人以上の中核派、革マル派、革労協系の議員さんいることになる。
さすがは「革命の祖国」である。
さて、残るは2人。
しかし、私はフランスが不案内なので、この2人は、どういう政治的背景かも、ぜんぜん知らない。
まあ、ご両人とも失礼ながら、当選の可能性のない泡沫候補だろうが、一応調べてみた。
★ ジャン・ラサール Jean Lassalle 無所属
フランス南部・オクシタニアの政治家らしい。
オクシタニアといえば、スペインとの国境沿いの地域だ。
ヨーロッパ各国の現時点での国境は、歴史の結果、パワーバランスの結果、でしかないわけで、同じ文化圏だったのが別々に分けられたり、逆に、昔は別々の国だったものが一緒になってることが多い。
イギリスなら、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド、そして、コーンウォールが、イングランドに対して異民族意識、分離独立意識を持っている。
ドイツでも、バイエルンはカトリック圏で、プロテスタント圏の旧プロイセン・ベルリンとは違う国だった。
現在同じ国なのはたまたまの歴史の結果で必然ではなかった。
逆もある。
統一国家だった旧ユーゴスラビアは、国父チトーが死に、タガが外れた瞬間、クロアチアやセルビアなど、エスニシティ的にバラバラになった。
ポルトガルが独立国で、カタルーニャがスペインの一部、デンマークやオランダやオーストリアが独立国で、バイエルンがドイツの一部、なのも、たまたまの歴史の結果で、可能性としてはサカサマのパターンだってあり得たのである。
同じように、フランスでも、ブルゴーニュ、コルシカ、ブルターニュ、ノルマンディー、アルザス・ロレーヌなどなどは、パリとは違う意識がある。
南部のオクシタニアも、歴史的には、パリ中心のフランスからは全く独立して、フランス語ではなくオック語なるものを喋っていた地域だった。
ジャン・ラサールも政治的には保守(といってもフランス共和党よりも左の中道右派のよう)だが、かなりオクシタニアへの郷土愛の強い人のようで、実は日本とも関係がある。
東洋アルミニウム社、仏子会社工場の存続に合意 - 大阪 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
2007年02月07日
軽金属会社「東洋アルミニウム」は1日、フランスの子会社トーヤル・ヨーロッパ(Toyal Europe)の工場の存続を約束したうえで、フランス政府に対し、同工場をめぐる論争における支持を求めた。この工場閉鎖をめぐる論争がきっかけで、フランスのジャン・ルセー(Jean Lassalle)議員は2006年、ハンガーストライキを実施、世間の注目を集めている。
問題の工場は、フランス南西部のアキテーヌ(Aquitaine)地方のAccous村に位置する。ラサール議員とアキテーヌ地方総協議会のアラン・ルセー(Alain Rousset)総裁は2日、「東洋アルミニウム」の大阪本社を訪れ、同社の今須聖雄代表取締役社長と協議した後、この工場の存続について合意に達したという。
10年前の記事だが、地元の労働者の雇用を守るために、日本企業の工場移転に反対して、ハンガーストライキまでやったようだ。
つまりは「フォードやトヨタは自動車工場をメキシコに持っていくな。アメリカ国内の労働者を雇え」と圧力をかけたトランプ大統領と同じなのである。
「アメリカ・ファースト」ならぬ、「フランス・ファースト」でもなく、「オクシタニア・ファースト」な人なのだ。
かといって、オクシタニアだけ良ければ、他の連中は知らん、というエゴイストなわけでもなく、EU各国のそれぞれにあるオクシタニアのようなローカルな文化圏のアイデンティティを擁護する、そのためのEUであるべきだ、みたいな感じの政治姿勢のようだ。
おそらく、無制限なグローバリズムには反対だろうが、移民排斥みたいな右翼でもないのだろう。
そもそも、イギリスのスコットランド独立派や、スペインのカタルーニャ独立派や、日本の琉球独立派(笑)は、右翼なのか?左翼なのか?
トランプが「アメリカ・ファースト!」といえば、ル・ペンが「EU離脱!」といえば、右翼と呼ばれる。
でも、たとえば、私が「琉球分離独立!」と叫べば、アイヌが「民族の尊厳を!」と叫べば、ヤマトンチュは左翼だ!と批判するだろう。
しかし、トランプとル・ペンと私とアイヌの主張は、方向性は全く同じだ。
トランプやル・ペンは右翼ならば、私やアイヌだって右翼なのだ。
私やアイヌが左翼ならば、トランプやル・ペンも左翼なのである。
★ フランソワ・アスリノー François Asselineau
共和国人民連合(UPR) Union Populaire Républicaine 2007年
アベ政治を許さない!みたいなスタンスのリベラル派の皆さん、
森友学園の陰謀から安倍首相を守れ!みたいなスタンスの保守派の皆さん、
双方に質問だが、
右翼って、国家権力を強化する思想だろうか?弱体化する思想だろうか?
左翼って、国家権力を強化する思想だろうか?弱体化する思想だろうか?
アンチ安倍、安倍シンパ、双方ともに、何をいまさら?馬鹿かこいつは?、と思うだろうが(笑)、しかし、左翼の皆さん、右翼の皆さん、皆さんにとって、たとえばホリエモンは味方だろうか?敵だろうか?
左翼の皆さんは、あんな奴味方じゃない!と即断するだろう。
でも、右翼の皆さんも、あいつが味方かあ?と判断を迷うと思う。
ホリエモンの思想、ネオリベから言えば、自由市場経済優先である。商売人の自由にさせろ、国家は余計な邪魔をするな、となり、つまりは国家権力は弱体化するのである。
左翼の皆さんが、ホリエモンは味方じゃないと思ってるとすれば、国家権力の弱体化にも反対していることになる。左翼の皆さんは国家主義者なのだ。
右翼の皆さんは、左翼の連中の言うとおりにすれば国家権力は弱体化する(だから、反対!)と思ってるだろうが、左翼の言う通りにすれば、ホリエモンのサカサマなんだから、国家権力は強化されるのだ。
左翼の皆さんが主張する「格差の是正」には、好き放題儲けているグローバル企業への課税を強化して、貧乏人に再配分する必要がある。そんな強制力を持ってるのは国家権力だけなのだ。
かつてソ連がそうであったように、大陸支那がそうであるように、左翼の夢の実現は、国家権力の強化につながるのだ。
サカサマからさかのぼれば、国家権力の強化を主張する右翼の皆さんは、結果的には国家権力を強化してしまう左翼の皆さんと、同じ夢を見る仲間、同盟関係なのである。
フランソワ・アスリノーの政治主張も、そういう観点から興味深い。
元はフランス共和党の前身である国民運動連合だから、彼も保守系だ。
しかも、保守を通り越して、マリーヌ・ル・ペンと同様にEU離脱派だ。反EU、反ユーロ、フランス第一主義であり、反米だ。
そして、その方面に行き過ぎて、電気ガスなどのエネルギー産業、郵便事業、民間テレビ局などを国有化すべきだと主張している。
日本で言うなら、JRを国鉄に戻せ、NTTを電電公社に戻せ、関西電力、東京ガス、朝日新聞を国有化しろ、という主張である。
インフラ事業の自由競争からの撤退、巨大企業の国家管理、これらは共産党とまったく同じ左翼の産業政策なのだ。
フランス国民戦線と日本共産党は、グローバリズム反対という意味では、同志なのだ。
フランス革命は、王様をギロチンにかけたが、国家をギロチンにかけることができなかった。逆に国家はますますその権限を拡大した。
ブルボン王朝時代には、戦争は貴族と傭兵の仕事であり、農民が銃を持って戦場に駆り出されることはなかったが、人民の国になった途端に徴兵制が始まって、人民はみんな兵隊になったのである。
教育勅語に郷愁を抱く右翼の理想国家・大日本帝国の基本モデルは、王様殺しのフランス革命が実現したのだ。
左翼を突き詰めると右翼になり、右翼を突き詰めると左翼になる。
ナチス・ドイツとソ連がソックリの体制になり、北朝鮮が大日本帝国のパロディになる。
そこで、勘弁してよ(笑)、と苦笑するのがホリエモンたちネオリベなのである。
ネオリベVSソシアルVSコンサバ~現実的な政治路線は「3つ」しかない。あるいは「3つ」もある。 - 在日琉球人の王政復古日記
知事ではなく東京共和国大統領(笑)~「フレンチ風」マッチョ国家主義者・舛添要一。 - 在日琉球人の王政復古日記
日本にも「首相公選制」が必要(笑)~舛添要一東京都知事は日本版ド・ゴール、朴正煕、スハルト、蒋経国、マハティール。 - 在日琉球人の王政復古日記