《キリスト教映画列伝》 #ジョーカー #JOKER (2019年)ＶＳ #Vフォー・ヴェンデッタ (2005年)～ #反知性主義 #ANTIFA

ネオリベの都・ゴッサム・シティーの住人、笑うジョーカー。

ファシズム国家の都・近未来ロンドンの住人、笑うＶ。

ペイントと仮面で素顔を隠し、笑うアナキスト２人。

大騒乱を引き起こすところは全く同じだが、原因も、方向性も、真逆。

映画『ジョーカー』本予告【HD】2019年10月4日（金）公開

ゴッサム・シティーは、資本主義を批判するチャップリンの「モダンタイムス」の世界、グローバル資本主義のアメリカだ。

表現の自由はある。職業選択の自由もある。

主人公もコメディアンという仕事を政府から禁止されるわけじゃない。

何をやろうが自由。しかし社会福祉もない。貧者には失業の自由もある。

貧困によって人間のプライドはズタズタに切り裂かれていく。

マーティン・スコセッシ＆ロバート・デニーロの「タクシードライバー」「キング・オブ・コメディ」が、ジョーカーの大先輩である。

ジョーカーは、「We are the 99%」をスローガンにオキュパイ・ウォールストリート＝ウォール街占拠デモでをやったラジカル・リベラルであり、

同時に、女性にもてないルサンチマンを爆発させるインセルであり、

同時に、ＭＡＧＡ帽子をかぶりトランプに投票し、選挙結果を認めない錆びた工業地帯＝ラストベルトの貧乏白人でもある。

精神に病を持ち、一般人よりも弱者であり、貧困と格差で徹底的に踏みつけにされるジョーカーは「持たざる者」の反知性主義である。

ピエロのペイントで、貧困に怒り狂う民衆を煽り、騒乱を引き起こす。

『V・フォー・ヴェンデッタ』日本版劇場予告編

２００５年の映画だが、２０１６年イングランド・ナショナリズムの暴走・排外主義・孤立主義の「ＥＵ離脱」を見事に予言した。

近未来イギリスはファシズム国家となる。近未来ロンドンに貧困は見えない。しかし自由はない。

キリスト教が国教化し、女性の権利もなく、同性愛者は逮捕される。外国人・無神論者・イスラムは弾圧される。

近未来イギリスは、中国共産党に弾圧される香港であり、ロシア、ベラルーシであり、ＥＵ加盟国なのに法の支配を認めないポーランド、ハンガリーである。

ファシズムを拒否する「ANTIFA」であるＶは、強靭な肉体を持ち、文学にも芸術にも詳しいインテリであり、「持てる者」の知性主義である。

トランプみたいな無教養なポピュリストが大嫌いで、教養あふれる演説で民衆の理性に訴えて反乱を呼びかける。

反知性主義のジョーカーと知性主義のＶは、同じく反体制アナキストだが、その思想はまったくのサカサマだ。両者が出会えば、どちらかが斃れるまでハルマゲドンが続くだろう。

「Vフォー・ヴェンデッタ」にもキリスト教要素はあるが、

「ジョーカー」はまるまる「キリスト教映画」だ。

《キリスト教映画列伝》 #薔薇の名前～衣服はイエスのものか？神を笑えるか？薔薇は存在するか？～実念論ＶＳ唯名論。 - 在日琉球人の王政復古日記

《キリスト教映画列伝》「セブン」(1995年)～ #傲慢 #憤怒 #嫉妬 #怠惰 #強欲 #暴食 #色欲 #七つの大罪 - 在日琉球人の王政復古日記

《キリスト教映画列伝》「アレクサンドリア」(2009年)その２～奴隷制度/格差社会のローマＶＳ信者平等 #反知性主義の宗教。 - 在日琉球人の王政復古日記

キリスト教映画というより正確には「アンチ・キリスト教映画」と言うべきか。

以下は、かなりこじつけと飛躍と妄想が混じる(笑)。

主人公は「アーサー・フレック／ジョーカー＝偽イエス／反キリスト」。

これを思い付いたのは、アーサーの最初の殺人シーン。相手は３人だった。

偽イエス＝アーサーが反キリスト＝ジョーカーに生まれ変わる瞬間に立ち会う「地下鉄の証券マン３人＝東方の三博士」である。

マタイ福音書
2:1　イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、
2:2　「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。

アーサーは、母親「ペニー・フレック＝聖母マリア」に吹き込まれて、ゴッサムの支配者「トーマス・ウェイン＝父なる神」を自分の父だと思い込んでいたが、実は母親の妄想・真っ赤なウソだった。偽イエスは父なる神から面と向かって否定される。

マタイ福音書
27:46
そして三時ごろに、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。

将来のバットマン「ブルース・ウェイン＝イエス・キリスト」こそが本物の神の一人子だった。

アーサーは神の子どころか、母親も偽物で実子ですらない、どこの誰とも判らない無価値な野良犬だった。

アーサーが恋心を抱く、同じアパートに住む「ソフィー・デュモンド＝マグダラのマリア」も、アーサーに好意なんか持ってなかった。使徒でも何でも無かった。

コメディアン派遣会社の２人の同僚は、偽イエスの偽の使徒だ。

最初は親切心で拳銃を貸したが、事件が起こった途端、アーサーを裏切って警察に売った「ランドル＝イスカリオテのユダ」は、偽イエスに惨殺される。

マタイ福音書
26:15　「彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。
26:16　その時から、ユダはイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。
26:24　人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。
26:25　イエスを裏切ったユダが答えて言った、「先生、まさか、わたしではないでしょう」。イエスは言われた、「いや、あなただ」。

最後までアーサーに同情的だった小人症の「ゲイリー＝使徒ペトロ」は、アーサーから手が届かないドアの鍵を開けてもらう。そして何も言わずに逃げ出す。

マタイ福音書
16:19　わたし(イエス)は、あなた(使徒ペテロ)に天国の鍵を授けよう。
26:34　イエスは言われた、「よくあなたに言っておく。今夜、鶏が鳴く前に、あなた(使徒ペテロ)は三度わたしを知らないと言うだろう」。

アーサーの人生は悲劇ではなく喜劇。ジョーカーの物語は聖書ではなく反聖書。

偽イエスは自分の人生をもてあそんだ偽聖母ペニーを病室の枕で窒息死させる。

その瞬間、陰鬱な曇天が続いていたゴッサムの空に陽の光が差し込む。

天は、母殺し＝反救世主＝反キリストの誕生を祝福＝呪詛する。

母殺しのおぞましさ。そして、陽光の美しさ。

Joker (2019) - My Life Is a Comedy Scene (5/9) | Movieclips

https://www.youtube.com/watch?v=mQJPI9_TVHA

※年齢制限があるようなので、youtubeで視聴してください。

東方の三博士を殺し、偽聖母を殺し、偽使徒も殺し、全てを振り切った反キリストが、天にも届く階段から地獄の下界に降りてくる。

マタイ福音書
5:1　イエスはこの群衆を見て、山に登り、座につかれると、弟子たちがみもとに近寄ってきた。
5:2　そこで、イエスは口を開き、彼らに教えて言われた。
5:3　「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
5:4　悲しんでいる人たちは、さいわいである、彼らは慰められるであろう。

「山上の垂訓」のサカサマ。これぞ映画の快感。見事なシーンだ。

Joker Stairs Dance Complete Scene (4K)