私は死ぬまでに、あと何十回何百回、この動画を見返すのだろうか。
このシーンに映っているのは、私の曽祖父、曽祖母である。
私のご先祖、父方も、母方も、
私に流れる遺伝子の100%すべてを載せて、
雑魚寝の三等客室の船旅の末、
五月蠅いエンジン音の夜が明け、
自由の女神ではなく、
貧しい南海の蛮地では見たこともない、
もくもくと黒煙を吐き出す大煙突が立ち並ぶ、
戦前の大阪湾に着いた時、
映画のヴィトー少年と同じく、
現地の人々の「大阪弁」がぜんぜん判らなかっただろう。
漢字も満足に読めなかったに違いない。
私も貧困に負けて故郷を捨てた「片道切符の移民」の末裔だ。
つまり、彼らたち彼女らたちと、何ら変わりはない。
トランプ米大統領、メキシコ国境の壁建設を命令 移民取り締まりも強化 - BBCニュース
2017年1月26日
ドナルド・トランプ米大統領は25日、メキシコとの国境に「通過不可能な具体的な障壁」を建設するよう、大統領令で命令した。さらに、未登録移民の保護区となっている米国内の都市への連邦交付金を撤回する命令にも署名した。これに対してメキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は同日、壁の費用を払うつもりはないと言明。予定されていた訪米と首脳会談は中止すると明らかにした。
(略)
さらに、私に流れるの血は、彼らたち彼女らたちと、生物学的に、つながってる可能性もゼロではない。
なぜなら、私の直系の曽祖父、曽祖母は大阪を目指したが、同時期に、南米某国に渡った遠縁もいた。
お互い、幸運にも、地獄の沖縄戦を体験せずに済み、生き延びた遠い血縁の一族。
戦後に南米某国から届いた手紙には、「エンリケ」氏とそのファミリーの写真が入っていた。私の祖父さんを十年くらい若くして太らせさらに日焼けさせたような風貌のエンリケ氏、半分現地の血を受け継いだラテンな子や孫たち。
もし、ご先祖の乗る船が違っていたら、私も今ごろスペイン語を喋っていた。
流れ流れて幾星霜、今現在アメリカ国境にいる移民難民の中に、私と同じ遺伝子を分け持つ人物がいてもおかしくはない。
すでに爺さんの代から連絡も途切れた南米の遠縁たちの現在は知らない。
おそらく一生会うこともあるまい。
そして、会うつもりもない。会う必要もない。それでいいのだ。
「ゴッドファザー」は、私の魂の映画である。
皆さん、良いお年を。