在日琉球人の王政復古日記

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法VS人間~ #憲法改正 ~ #日本国憲法 無効論VS八月革命説~自主憲法VS #大日本帝国憲法 

法VS人間~ #憲法改正 #憲法制定権力 ~ #護憲 VS #改憲 ~第9条改正試案 - 在日琉球人の王政復古日記

の続き。

 

改憲論の親米保守派とは別に、産経新聞など、戦前日本肯定の(自称)真正保守、右翼は、日本国憲法そのものの正統性・合法性を否定する。

ハルノートポツダム宣言サンフランシスコ条約東京裁判を認めない。GHQを認めないから日本国憲法も認めない。

日本国憲法無効論」である。改憲論ではなく「廃憲論」と呼ぶべきか。

 

ポツダム宣言受諾後からサンフランシスコ平和条約締結までのGHQ占領統治期に成立した日本国憲法は、大日本帝国憲法改正過程に重大な瑕疵がある。正統性・合法性が無いから無効だ。

日本国憲法はGHQの英文翻訳。GHQが作った憲法を被占領国に押し付けるのはハーグ陸戦条約違反である。

 

ハーグ陸戦条約 
第43条 国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない。

 

これには反論もある。

GHQは日本国憲法を日本国民に押し付けていない。そんなことをする必要が無い。

なぜなら日本国憲法大日本帝国憲法の改正である。大日本帝国憲法の主権者は天皇であり、日本国民ではない。

天皇に押し付けることはできても、非主権者の日本国民には押し付ける必要すらない。

大日本帝国憲法をどう改正しようが、主権者でも何でもない日本国民に文句を言う権利は初めからないのである。

つまり、日本国憲法無効論を主張できるのは、主権者・昭和天皇だけだった。

その昭和天皇は、GHQの押し付けを拒否していない。 

 

日本国憲法における上諭
朕は、日本國民の總意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、樞密顧問の諮詢及び帝國憲法第七十三條による帝國議會の議決を經た帝國憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。

 

日本国憲法公布の勅書には、主権者・昭和天皇の御名御璽がある。つまり主権者が認めてるんだから、日本国憲法には正統性がある。

 

ここで再反論もある。

いやいや、たとえ天皇と言えども、皇祖皇宗・國體/国体の制限を受ける。皇祖皇宗・國體/国体は天皇に優越する。大日本帝国憲法天皇主権だが、國體/国体は皇祖皇宗主権である。

國體/国体に反する日本国憲法を認めることはできない。

 

この國體/国体論で問題なのは、いったい、どこの誰に、人間ではなく言葉を発しない皇祖皇宗・國體/国体の意志を代弁できる資格があるのか?である。

國體/国体論者は皇族でも華族でもない凡下の単なる平民であり、天皇以上に皇祖皇宗、國體/国体を理解している保証はどこにも無いのである。

 

しかし、そうはいっても、大日本帝国憲法日本国憲法は内容が違い過ぎる。

特に、大日本帝国憲法天皇主権の欽定憲法日本国憲法国民主権の民定憲法。主権者を変更するような憲法改正は許されるのか?

大きく3つの立場がある。

 

憲法改正無限界説。 

憲法改正に限界はない。天皇主権から国民主権への憲法改正も可能。大日本帝国憲法日本国憲法との間には法的連続性がある。

 

憲法改正限界説

日本国憲法大日本帝国憲法の改正限界を超えている。天皇主権から国民主権への憲法改正は不可。大日本帝国憲法日本国憲法との間には法的連続性がない。 

日本国憲法無効論はこの立場である。

実は、日本国憲法改正反対の護憲論者も「9条改正は平和憲法である日本国憲法の改正限界を超えている」という理屈を持ち出すことがあり、簡単に否定はできない。

 

八月革命説

日本政府のポツダム宣言受諾を法的な革命と擬制し、日本の主権は天皇からアメリカGHQに移った。よって革命政府=GHQが日本の憲法制定権力となった。

手続き上は大日本帝国憲法の改正だが、実態は革命であり、大日本帝国憲法日本国憲法の間に法的連続性はない。合法性はないが、正統性はある。

プラグマティズムではあるが、個人的には、八月革命説が妥当だろうと思う。全体を説明できるのは八月革命説しかない。

 

産経新聞的な日本国憲法無効論は、日経新聞的な改憲論に反対する。

日本国憲法改憲すると、一部を改憲するだけで、大部分を認めることになり、日本国憲法の正統性・合法性を保証することになる。

しかし、日本国憲法の無効はいいが、憲法無しというわけにはいかない。日本国憲法に代わる憲法が必要になる。 

ここで、日本国憲法無効論も2つに分かれる。

 

多数派は、日本国憲法を否定して無効とし、新たに自主憲法を制定する、自民党、読売新聞、産経新聞などの「自主憲法」。

 

日本国憲法改正草案 | 資料 | 自由民主党 憲法改正推進本部

 

読売憲法改正試案全文:会社案内サイト「読売新聞へようこそ」

 

産経新聞80周年「国民の憲法」要綱 前文(1/2ページ) - 産経ニュース

 

少数派だが、日本国憲法を否定して無効とし、大日本帝国憲法を復元する、在野・ネットの「大日本帝国憲法有効論」。 

 

大日本帝国憲法有効論は、自主憲法論を否定する。

日本国憲法は無効である。じゃあ戦後日本は、いったい何を規範として日本国家を運営してきたのか? 75年間ずっと無憲状態だったのか? 

無憲状態でなければ、戦後日本には無効な日本国憲法以外の何らかの憲法はあったのだ。その何らかの憲法に該当するのは大日本帝国憲法しかありえない。

大日本帝国憲法が有効なのに、自主憲法とは何事か? 大日本帝国憲法を否定するのか? 

大日本帝国憲法と、読売新聞や産経新聞自民党の自主憲法試案と、どっちの憲法に政治的・歴史的・正統性があるのか? いうまでもなく、大日本帝国憲法だ。

 

大日本帝国憲法有効論から言えば、日本国憲法憲法ではなく、ポツダム宣言受諾後からサンフランシスコ平和条約締結までのGHQ軍政期間の占領軍命令にすぎない。

サンフランシスコ平和条約締結にともない日本は独立し、占領軍命令である日本国憲法は自動的に失効した。その後は、今でも、大日本帝国憲法が有効である。

 

大日本帝国憲法は、GHQの押し付けじゃないし、国防も明記されてるし、天皇の地位も明記されてるし、緊急事態への対応も勅令などで可能だ。日本国憲法への不満はすべて解消される。

 

ここまでは、大日本帝国憲法有効論も理屈が通っている。

しかし次の瞬間から破綻する。

大日本帝国憲法を復元した瞬間、主権者は天皇である。

もし主権者の天皇大日本帝国憲法復元を否定・拒否したらどうするのか? 薩長のように、GHQのように、憲法に存在しない暴力で主権者・天皇に強制するのか?

 

いかにも、2010安保らしい(笑)、勢いとハッタリが前面に出たネトウヨ革命時代の発想である。

 

同期の桜からAKB48、歌は世につれ、世は歌につれ~2010年安保闘争 #櫻井よしこ 時代から、2020年安保闘争 #三浦瑠麗 時代へ。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

さらに、大日本帝国憲法有効論者の一部は、途中から、インチキをやり出す。

 

現行憲法は究極の自虐史観!?日本国憲法「無効論」の論拠 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

 

令和の御代に大日本帝国憲法を復元し、そのまんま運用するなら理屈は通る。

しかし上記の大日本帝国憲法有効論者は、

日本国憲法の無効確認と大日本帝国憲法復元確認を行う

 ここまで納得。

と同時に、帝国憲法の効力を当面停止する。

 なんで? 憲法停止なんて、大日本帝国憲法にはない。憲法違反。

前文と第9条2項などを除いた日本国憲法と同じ内容の法律を臨時措置法として制定する

 なんで? たとえ暫定でも、GHQの英文コピーを使って良いのか? 法的根拠はどこにある?

政府の下にある憲法改正審議会で、帝国憲法改正案を構想する

 なんで? 大日本帝国憲法のまんまじゃなんでダメなのか?

 主権者・天皇が改正を拒否したらどうする? 臨時措置法のまんまか?

 

結局、彼ら大日本帝国憲法有効論者も、否定した改憲論や自主憲法論となんら変わらない。

というか、前提がそもそもおかしい。

 

“真の独立国”となるため、日本国民の手で新たな憲法を制定するにはどうすればいいのか。

 

なんで「真の独立国」にならないとダメなのか?

当たり前だというかもしれないが、ホントに当たり前か? 

 

日本統治下の朝鮮半島は、李氏朝鮮よりも暮らしやすかったのではないのか?

琉球人が真の独立国を目指しても、日本人は文句は言わないのか?

戦時中の独立国日本と、戦後の属国日本、どっちで暮らしたいのか?

  

私は琉球人なので日本人とは立場が異なる。

1945年(昭和20年)04月 琉球アメリカ統治。
1946年(昭和21年)01月 琉球アメリカ軍政移管。
1946年(昭和21年)04月 琉球沖縄民政府発足。
1946年(昭和21年)11月 日本、日本国憲法公布。
1947年(昭和22年)05月 日本、日本国憲法施行。
1972年(昭和47年)05月 琉球アメリカ統治から日本統治へ移管。

見て判る通り、当たり前だが、日本国憲法琉球憲法ではない。

日本国憲法は、琉球アメリカ領だった時代に作られたものであって、賛成も反対も何も、琉球人は何も関与していないし、全くの無関係である。

琉球人にとって、日本国憲法は異国の憲法

日本の憲法は日本人が作らねばならない、というのなら、琉球憲法琉球人が作らねばならない。

 

★《琉球律令》琉球土人党試案2014年版★ - 在日琉球人の王政復古日記

 

琉球が日本であるという根拠がどこにあるのか?

琉球処分に正統性・合法性があるのなら、日韓併合も正統性・合法性がある。

なんで日本は朝鮮半島を放棄したのか? GHQの強制である。

日本国憲法無効論なら、朝鮮半島放棄も無効である。

琉球を取り返したように、日本は今からでも朝鮮半島を取り返すべきだ。

 

「日本国民の手で新たな憲法を制定する」必要がどこにあるのか?

だいたい大日本帝国憲法を作ったのは誰か? 薩長だけではないか。

日本人は日本人だが、そこには、会津人も佐幕派も江戸町民も大坂町民も日本人の99%は入っていない。薩長憲法制定権力と認めたことはない。

日本国憲法は日本国民ではないGHQが作ったから無効、ならば、大日本帝国憲法も日本国民の一部でしかない薩長が作ったから無効だろう。

一部でもいいのなら、日本共産党が「日本国民です。改正案を作りました」といえば、日本共産党が作った憲法を採用するのか?

 

憲法を作るのはいったいどこの誰なのか? 憲法制定権力である。

憲法制定権力は主権者とイコールではない。ましてや国民とイコールでもない。

アメリカ合衆国憲法も、フランス共和国憲法も、大日本帝国憲法も、日本国憲法も、憲法はどんな形であれ一番最初は憲法制定権力という極一部の人間による、大多数の国民への、暴力を背景にした「押し付け」である。

作った後で国会決議なり国民投票なり具体的運用で主権者や国民の事後承認を受ける。

 

薩長の正統性はどこにあるのか? 戊辰戦争に勝ったからだ。

じゃあ、大東亜戦争に勝ったGHQにだって、正統性があるだろう。

日本国憲法押し付け憲法ならば、大日本帝国憲法だって押し付け憲法である。

大日本帝国憲法が自主憲法ならば、日本国憲法だって自主憲法である。

 

というか、何を根拠に、日本国民に、憲法を作る権利、憲法制定権力がある、ことになっているのか?

日本の國體/国体は、日本国民なんかに主権を認めていない。主権は天皇、そして皇祖皇宗にある。

「日本国民の手で憲法を」と言った時点で、國體/国体に反しているのである。

 

法VS人間~ #憲法改正 ~GHQ主権VS国民主権VS天皇主権 #國體 #国体 #皇祖皇宗 - 在日琉球人の王政復古日記

に続く。