在日琉球人の王政復古日記

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法VS人間~ #憲法改正 ~GHQ主権VS国民主権VS天皇主権 #國體 #国体 #皇祖皇宗

法VS人間~ #憲法改正 ~ #日本国憲法 無効論VS八月革命説~自主憲法VS #大日本帝国憲法 - 在日琉球人の王政復古日記

の続き。

 

さて、ここまで、日本国憲法大日本帝国憲法の正統性を考えたが、

次はプラグマティックに、日本国憲法大日本帝国憲法はそもそも使い勝手が良い憲法だったのか?を考える。

 

日本国憲法に関しては、憲法9条や前文を始めとして、改憲論から山ほど意見が出ているので、そっちにお任せするとして、こっちは大日本帝国憲法である。

 

日本国憲法第9条に該当するのが、大日本帝国憲法第11条だ。 

 

大日本帝國憲法 第一章 天皇
第十一條 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス 

 

第11条は大日本帝国憲法の中では比較的マシな部分である。

そもそも、この第11条通り、天皇が、ちゃんと、キチンと、厳正に、統帥権を行使していれば、大東亜戦争なんて起こってないのである。

畏れ多い事ながら、昭和天皇が「立憲君主だから」「天皇は政治に介入しないほうがいい」などという、大日本帝国憲法の精神にも戦前日本の現実にも反する「手前勝手な理想主義」に走ってしまったから、軍部の暴走を止められなかったのだ。

 

主にネトウヨさんから「大日本帝国憲法立憲君主制だ」という主張がある。

確かに憲法を守るという意味で立憲君主制である。しかし大日本帝国憲法の中身が専制君主なんだから、立憲君主制憲法順守すればするほど、専制君主制にならざるを得ない。

 

昭和天皇統帥権者として「関東軍は直ちに軍事行動を止めよ」「上海派遣軍は勝手に南京へ行くな」「盧溝橋事件関係者を軍法会議にかけて厳正に処罰せよ」と、第11条のタテマエ通り皇軍を統帥していたら、軍部の暴走なんてハナからなかった。

 

よく226事件と終戦聖断が昭和天皇のたった2度の例外的政治行動と言われるが、話はアベコベで、あの2回のみが大日本帝国憲法のマトモな遵守であって、昭和天皇の残り全ては、畏れ多くも、ほとんどが憲法違反、または、職務放棄なのだ。

 

もし昭和天皇が、イギリスのような実質的な立憲君主として、統帥権を振るいたくないのならば、「今後、朕の統帥権帝国議会帝国議会が協賛する内閣に委任する。汝、帝国陸海軍は帝国議会並びに内閣の統帥に従え」と教育勅語ならぬ「統帥勅語」でも御下しになれば良かった。

これだけで戦後並みのシビリアンコントロールは可能だったのだ。

 

いやいや、天皇大権・天皇独裁なんてタテマエで、ホントは大日本帝国憲法も実質的な立憲君主制で、天皇の大権は制限を受けていた、という意見もある。

確かに、天皇は好き勝手に行動できたわけではなかった。大日本帝国憲法には天皇の政治行動を縛る条文がある。

 

大日本帝國憲法 第四章 國務大臣及樞密顧問
第五十五條 國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
凡テ法律勅令其ノ他國務ニ關ル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス

 

天皇のあらゆる政治行為には必ず国務大臣の輔弼・副署が必要とする。天皇独裁は不可能というわけである。

しかし、実は、この第55条こそが大日本帝国憲法最悪の欠陥である。いや最悪というより、必要なことが書かれてないのである。

 

そもそも、いったい「国務大臣」ってどこの誰?
誰にその資格があって、誰がその任命するのか?

 

立法権=議会」と「司法権=裁判所」は、どこの誰で、どういう資格で、誰が選ぶのか?は、大日本帝国憲法に明記されている。

 

大日本帝國憲法 第三章 帝國議會
第三十三條 帝國議會ハ貴族院衆議院ノ兩院ヲ以テ成立ス
第三十四條 貴族院貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十五條 衆議院ハ選擧法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス

 

大日本帝國憲法 第五章 司法
第五十七條 司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八條 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
懲戒ノ條規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

 

しかし、大日本帝国憲法には「行政権」がほとんど書かれていない。「内閣」の規定もない。「内閣総理大臣」もない。

これは忘れたのではなく「わざと」だ。

というのも、大日本帝国憲法は行政権を天皇の専権事項と想定している。おそらく、下剋上徳川幕府の再来を恐れたのだろう。だから行政権のトップ・内閣総理大臣憲法に書いていない。

いや、それならそれでいい。行政権は天皇でOK。

しかし問題は第11条の統帥権と同じく、その肝心の天皇に行政権を行使する意思が無かったことだ。

というわけで、大日本帝国憲法では国務大臣を誰が選ぶのか?どこから選ぶのか?サッパリ判らない。まあ現実的には天皇が選ぶことになる。

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大日本帝國憲法 第一章 天皇
第十條 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス
但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル

 

さてここで第55条が問題になってくる。

天皇に勝手なことは出来ない。なぜなら国務大臣が輔弼し副署が必要だから。

たとえば、天皇安倍晋三(仮名)を国務大臣に任命したとして、その後、安倍晋三(仮名)を辞めさせるときはどうするのか? 誰がその解任の詔勅の副署を書くのか?
もし安倍晋三(仮名)が「オレは辞めない。天皇陛下の命令だって辞めない。解任の詔勅には副署しない」と言い出したらどうするのか?

 

これが日本国憲法だとちゃんと書いてある。

内閣総理大臣国務大臣を自由に罷免できる。誰の同意も副署も要らない。

そしてその内閣総理大臣衆議院がクビにできる。

その衆議院もまた内閣総理大臣が解散できる。

  

日本国憲法 第5章 内閣
第68条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第70条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

 

衆議院参議院も、国民が選挙する。

 

日本国憲法 第4章 国会
第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。 

 

最終的には、直接的・間接的に、国務大臣も、内閣総理大臣も、国会議員も、国民が選ぶ。これを「国民主権」というわけだ。

 

日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。 

 

現在の日本国憲法でも、主権者たる国民が「主権はあるけど行使したくない」「議員を選挙できるけど選挙しない」と言い出したらどうなるか? 国家は停止する。

戦前の歴代天皇、特に昭和天皇がやった事(というかやらなかった事)はこれと同じだ。権限があるのに行使しなかった。

大日本帝国憲法で、天皇が「主権はあるけど行使したくない」「陸海軍を統帥できるけど統帥しない」と言い出したら、誰が軍隊を動かすのか? 軍隊の自由行動、下克上である。実際そうなって、満州事変、南京落城、支那事変、ガダルカナルに行き着いた。

逆に、大日本帝国憲法天皇がやる気マンマンでも、国務大臣が副署を拒否したらどうする?
例えるなら、日本国憲法で「国民の投票は、別人の副署(承諾)が無いと無効だ」ということになっていたら、それは自由な権利と呼べるのか?

 

日本国憲法無効論大日本帝国憲法有効論は理屈としてはアリかもしれないが、現実に適用したら、真の独立国どころの騒ぎではないのだ。

例えば、大日本帝国憲法有効論の令和で、いったい誰が国務大臣をやるのか? 衆議院過半数を取ってる自民党公明党の議員に大臣になる資格なんてない。だって大日本帝国憲法にはそんなことは書いてないからだ。

今現在、宮城におわします聖上に対し奉り、ホンキで自衛隊の指揮権・統帥権を押し付けるつもりなのか? その時今上陛下がどうリアクションするのか?想像したことがあるのか?
それとも自衛隊の管理は今まで通り(大日本帝国憲法では権限不明だが)内閣がやるつもりか? それのどこが大日本帝国憲法復元なのか?

 

日本国憲法第9条を厳密に守ったら、国防は不可能になり、国家は破滅する。それはその通りである。

しかし大日本帝国憲法も厳密に運用したら、行政も統帥も麻痺する。

 

なぜ戦前の行政は麻痺しなかったのか? それは大日本帝国憲法を厳密に運用してなかったからだ。

天皇の人格や明治元勲元老の超法規的活動といった憲法外部の理屈で、厳密には大日本帝国憲法に違反しながら、何とかやりくりしていたのである。

つまり安全保障のために、日本国憲法第9条を骨抜きにして、憲法外部の理屈で、厳密には日本国憲法に違反しながら、何とかやりくりしている現在とあんまり変わらないのである。

 

大日本帝国憲法に戻りたいのなら、それはそれでもいいけれど、

まず、今上陛下の御叡慮を確認することが第一である。御叡慮を確認もせず事を進めるのは、僭越にして不敬極まる。

次に、少なくとも「統帥勅語」を賜らないと、次の瞬間から尖閣防衛が出来なくなる。

マジメに主張するなら、マジメに段取りをお願いしたい。

 

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