在日琉球人の王政復古日記

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表現の自由VS戦う民主主義~日:メンタリストDaiGo、独:ナチス、米:ウエストボロ・バプティスト教会

表現の自由VS炎上商法~優性思想よりも登録数約250万人再生数約14万回が問題~メンタリストDaiGo、生活保護、ホームレス。 - 在日琉球人の王政復古日記

の続き。

 

この焼き畑農法は、優性思想は是か非か?よりも、もっと広く、表現の自由の問題である。

 

一般に「表現の自由」ほど誤解されてるモノもない。


表現の自由は、自由ではない。ガマンである。

気持ちいいモノではない。不愉快なモノだ。

不愉快をガマンする。それが表現の自由だ。

 

神を否定するヤツがいる。ポルノを見てるヤツがいる。巨人を応援してるヤツがいる。公明党を応援してるヤツがいる。旭日旗を振ってるヤツがいる。慰安婦像を展示しているヤツがいる。貧困者を蔑んでるヤツがいる。

それを見て見ぬ振りで通り過ぎる。批判はしても、禁止はしない。それが表現の自由である。

 

都市住民のマナーでもある。田舎者は不愉快なモノをガマンできない。だから田舎は田舎のまんまだ。


もちろん世の中には、ガマンするには危険すぎるモノもある。

ナチスがそうだった。

ナチス表現の自由を認めるか否か?、判断は本当に難しい。

 

ドイツは、ワイマール時代にナチスに自由を認めた結果、あまりの被害の大きさに懲りて、無制限の自由を認められなくなった。

 

ドイツ連邦共和国基本法

第5条 [表現の自由]
(3) 芸術および学問ならびに研究および教授は、自由である。教授の自由は、憲法に対する忠誠を免除しない。

第18条 [基本権の喪失]
意見表明の自由、とくに出版の自由(第5条1項)、教授の自由(第5条3項)、集会の自由(第8条)、結社の自由(第9条)、信書、郵便および電気通信の秘密(第10条)、所有権(第14条)または庇護権(第16a条)を、自由で民主的な基本秩序を攻撃するために濫用する者は、これらの基本権を喪失する。喪失とその程度は、連邦憲法裁判所によって宣告される。

 

ナチスの自由は禁止する。表現の自由には例外がある。これをドイツの「戦う民主主義」という。

 

自由は人権思想の基礎だ。その人権思想には例外がある。人権には例外がある。人権は完全ではない。近代は完全ではない。これは大問題だ。

そして「戦う民主主義」は欧米近代社会全体の共通認識ではない。

 

近代思想には大きく2つの流れがある。

イギリスの「経験論」とヨーロッパ大陸の「合理論」である。

 

この流れを法学でいうと「英米法」と「大陸法」の2つとなる。日本は、明治に大陸法が入って来て、戦後に英米法がチャンポンした。

安倍ちゃんも中国共産党批判でゴッチャにして使うけれど(笑)、「法の支配」と「法治主義」は別々の、というか、対立する思想である。

 

「法の支配」はイギリス経験論、「法治主義」は大陸合理論の流れだ。

「戦う民主主義」は、合理論・大陸法法治主義の系譜である。

 

しかし、「戦う民主主義」が暴走すると、さらに大陸の奥・ロシアに行き着く。

社会主義共産主義も、合理論・大陸法法治主義の系譜である。

 

法VS人間~言論の自由~トランプ・共和党VSビッグテック(twitter/Facebook)・民主党VSメルケル・EU - 在日琉球人の王政復古日記

 

法VS人間~ #英米法 #法の支配 #イギリス経験論 VS #大陸法 #法治主義 #大陸合理論 ~ アキレスと亀 - 在日琉球人の王政復古日記

 

法VS人間~デジタル・レーニン主義VS戦う民主主義VSビッグテック(GAFA)VSワイルド・ウエスト - 在日琉球人の王政復古日記

 

だから、ナチスを禁ずる、自由の制限=「戦う民主主義」は無制限に万々歳ではない。暴走すると、レーニンスターリン毛沢東習近平に行き着いてしまう。

 

同じく大陸法のフランスも、表現の自由で揺れ動く。

ユダヤホロコーストの否定は、ナチズムは、許されない。

しかし、イスラム原理主義は批判する。偶像崇拝厳禁のムハンマドを風刺する漫画は表現の自由として守る。ムスリムは怒る。

 

「表現の自由」と信仰、深まる亀裂 風刺画めぐる仏テロ:朝日新聞デジタル

2020年10月17日
 イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画をめぐり、フランス市民が再び犠牲になった。公立中学の教員が殺害された事件にマクロン大統領は「我々の存在をかけた闘いだ」と語り、イスラム過激主義との対決姿勢を強調した。数百万人のイスラム教徒が暮らすとされる仏社会で、「表現の自由」と信仰をめぐる大きな亀裂が改めて明らかになった。
(略)

 

「戦う民主主義」は、「表現の自由」は、性欲やアルコールやナショナリズムと同じく、人間が半永久的に、慎重にコントロールし「続ける」必要がある危険物であり、「しんどい」モノなのだ。

 

じゃあ、合理論・大陸法法治主義はダメで、経験論・英米法・法の支配が万々歳か?

ドイツ流「戦う民主主義」に否定的な英米法のアメリカでは、人種差別も、LGBT差別も、何でもアリになり、それはそれで危険である。

 

アメリカ中部の田舎カンザス州にウエストボロ・バプティスト教会という、白人主体のカルヴァン派プロテスタント教団がいる。

黒人差別もするが、特にLGBTを露骨に攻撃することで有名だ。

 

もちろんアンチ・リベラルだが、あまりにLGBT嫌悪が強烈で、LGBTを禁止しないアメリカ自体も攻撃する。

イラクやアフガンでアメリカ兵が戦死する。

右翼である共和党なら、キリスト教福音派なら、愛国者を讃え、哀悼を述べるのが当たり前だが、ウエストボロは常識を超える。

戦死したアメリカ兵の葬儀にわざわざ出向き、「ホモを容認するアメリカは悪魔の国だ」「神は、悪魔の国アメリカのために戦った兵士が死んでお喜びだ」と死者を侮辱しに行く。

 


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理屈が無茶苦茶で、もはや、アメリカの極右ですらない。 

共産主義者イスラム原理主義者、反米論者ですら、付いて行けない。

これが宗教の恐ろしさである。ナメてはいけない。

 

もちろん一般にはカルトと認識されているが、

こんな無茶苦茶なウエストボロのアクションも、アメリカに対する侮辱も、死者に対する侮辱も、アメリカ連邦最高裁憲法が掲げる「表現の自由」と認めている。

これが、ドイツの大陸法「戦う民主主義」とは対立する、アメリカの英米法、もう一つの民主主義である。

 

大陸法が暴走すると共産主義に行き着くが、

英米法が暴走すると無政府資本主義(リバタリアニズム)に行き着く。

 

リバタリアニズムは、強者勝ちっぱなし、弱者がしんどい、西部劇、マッドマックス、北斗の拳の世界である。

 

それでも、メンタリストDaiGoにも、ウエストボロ・バプティスト教会にも、表現の自由はある。

 

生活保護やホームレスへの福祉が、資本主義社会の必要コストであるように、

メンタリストDaiGoのカネ儲けも、民主主義社会の必要コストである。

 

表現の自由は、不愉快のガマンである。本当に、しんどい。

 

表現の自由VS自由市場=過当競争~メンタリストDaiGo対霧島天然水のむシリカ~政治系YOUTUBERの内ゲバ。 - 在日琉球人の王政復古日記

に続く。