2016年アメリカ大統領選挙。2月現在。
民主党 全国 NH SC 地 派閥 血 信仰
ヒラリー_ 全52 N38 S62 東 ワ左 女白 メソ
サンダース 全37 N56 S33 東 RL ユダ ユダ
オマリー_ 撤退
共和党 全国 NH SC 地 派閥 血 信仰
トランプ_ 全36 N33 S36 東 ポピ プ白 長老クルーズ_ 全20 N12 S20 南 宗保 ヒス 南バ
ルビオ__ 全10 N11 S13 南 ワ右 ヒス カト
カーソン_ 全08 N03 S09 五 宗保 黒人 SAブッシュ弟 全05 N10 S10 南 ワ右 プ白 カト
クリスティ 全03 N06 S02 東 ワ右 イタ カト
ハッカビー 撤退
ケーシック 全02 N11 S02 五 ワ右 プ白 聖公
フィオリナ 全02 N04 S02 西 ポピ 女白 長老
ポール__ 撤退
サントラム 撤退
独立 地 派閥 血 信仰
ブルームバーグ 東 リバ ユダ ユダ
全国:全国支持率、NH:ニューハンプシャー、SC:サウスカロライナ。
地:地盤。東=東海岸、五=五大湖、南=南部、中=中部、西=西海岸。
派閥:ワ左=ワシントン左派、ワ右=ワシントン右派、RL=ラジカル・リベラル(レフト)、宗保=宗教保守、リバ=リバタリアン、ポピ=ポピュリスト。
血:エスニシティ・ジェンダー。女=女性、プ白=プロテスタント白人、黒人=アフリカ系、ユダ=ユダヤ、ヒス=ヒスパニック、アイ=アイルランド系、イタ=イタリア系。
宗派:信仰。メソ=メソジスト、ユダ=ユダヤ教、カト=カトリック、長老=長老派、南バ=南部バプテスト、SA=セブンスデーアドベンチスト、聖公=聖公会。
大雑把ではある。
人間には個性があるから、キレイにデジタルに切り分けらるものでもないし、異論もあるだろうが、判りやすく、大統領選挙、だけでなく、アメリカ政治を、5大派閥で分けてみる。
★ワシントン派
共和党の主流派または穏健派、民主党の主流派または中道派、と呼ばれる政治家である。いわゆる職業政治家だ。当然、一番大きな派閥である。
ヒラリー・クリントンも、ブッシュ弟も、現職のオバマも、ここに入る。歴代の大統領もほぼ全部ここに入る。
え?共和党も民主党もいるの? そう、彼ら彼女らは基本的には同じ派閥である。
ワシントンから、アメリカ国内と世界を、「ウォール街」と、「アメリカ軍」と、そして「ハリウッド」を使って、管理する。
ヒラリーとブッシュ弟の間に、深刻な政治的対立はない。やや保守か?ややリベラルか?の差だ。
ヒラリーだからって、南シナ海や中東から手を引くことはない。
ブッシュ弟だからって、今さら同性婚を禁止するつもりはない。
大きな派閥なんで、現実の政治には「ワシントン右派=共和党主流派」と「ワシントン左派=民主党主流派」との間で戦いがあるので、分けてもいいかもしれないが、基本は一緒だ。
★ラジカルリベラル(レフト)
民主党左派または反主流派。今回ではもちろんサンダースさんが代表。
ラジカル、といっても、共産主義ではなく(笑)、ヨーロッパなら普通にある社会民主主義である。目指すは、北欧スタイルの福祉社会。
中絶OK、同性婚歓迎、銃規制強化、オバマケア強化、社会福祉、教育保障、移民OK,難民保護、エコロジー、動物愛護。
アメリカ政界では少数派で、大統領選挙でもほとんど出てこれなかった。だから、サンダースの登場は歴史的なのだ。
一過性か? それとも、アメリカの新しい政治潮流になるのか?
★宗教保守
宗教右派、キリスト教福音派、キリスト教原理主義とも。プロテスタントが大多数だが、サントラムみたいなカトリック保守派もいるので、福音派はやや不正確。
中絶反対、同性婚も同性愛も反対、銃規制反対、オバマケア反対、移民排除、イスラエル支持(だけどユダヤ人は嫌い)、イスラムはアメリカの敵、学校でダーウィン進化論を教えるな!
アイオワ1位のクルーズ、撤退発表のハッカビー、黒人のカーソンがここ。
近年、アメリカ政治に、特に共和党に、大きな影響力を持っている。勢力で言えば、ワシントン派に匹敵する第2勢力である。あとの3派閥は少数派だ。
現在の共和党は、世俗的なワシントン右派と宗教保守派の主導権争いの場となっている。もしも、宗教保守派が共和党を乗っ取った場合、ワシントン右派が民主党に流れて、アメリカ民主党が日本の自民党みたいな巨大与党になる可能性もある。そうなればラジカルリベラル派が民主党から出てリベラル新党結成か?
撤退発表のランド・ポールがここだった。
自由市場経済重視で、政府の介入に反対、税金は安く、社会福祉も反対、銃を持つのは個人の権利、ということでラジカルリベラル派と対立するが、
国家権力はできるだけ小さく、アメリカ軍の海外派兵も反対で、同性愛は個人の問題だからご自由に、キリスト教もイスラムも宗教は全部同じ、宗教は社会や政治や教育に介入するな、ということで、宗教保守派とも対立する。
無所属のブルームバーグは銃規制推進だから、純粋なリバタリアンではないが、
かといって、自由市場、減税推進、緊縮財政だからワシントン左派でもなく、
同性婚容認、海外派兵に慎重だからワシントン右派でもない。
残ってる候補の中では最もリバタリアン派に近いといえる。
★ポピュリスト
トランプさんは右翼ではない。
生活も派手だし、どうみても聖書なんか読んでないから宗教保守でもない。
大金持ちのビジネスマンだが、イスラム入国禁止!なんて言ってるからリバタリアンでもない。
プーチンとは気が合う、なんて言ってるから、ワシントン右派でもない。
そして、ついこの間までは民主党員で、ビル・クリントンの支持者だった。
強者は嫌いだが、弱者も嫌いだ。金持ちはむかつくが、移民や難民も大嫌いだ。左翼でもないし、右翼でもない。実はキリスト教もどうでもいい。
なんでもいいし、同時に、なにもかもイヤなのだ(笑)。
唯一の原則は「ワシントンの連中や、外国が、気に入らない」ということだけ。
主張がムチャクチャで、内容が右翼と左翼のチャンポン、あくまでも現状否定、オレたちだけが損をしているという陰謀論、これを「ポピュリズム」という。
共和党のフィオリーナも、発言が過激で、思想に一貫性がないから、ここに入るだろう。
普段の政治には出てこないが、何かをキッカケに、突如として、ワシントン派を脅かすムーブメントを巻き起こす不気味な存在である。
政治というのは、機械がやってるわけではなく、人間がやってるものだから、不合理な情動を馬鹿にしてはいけない。つねに合理性が勝つわけではないのだ。