在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

英国メイ首相~グレンフェル・タワー火災~タワーリング・インフェルノVS朴槿恵~セウォル号~ポセイドン・アドベンチャー。


Towering Inferno - Trailer

 


The Poseidon Adventure (1972) Trailer

 

女王陛下の大英帝国はまるで悪魔に魅入られている。

 

2014年、スコットランド独立住民投票。接戦の末、独立反対派のイングランドがかろうじて勝利する。

ここまでは予想の範囲だったが、ここから先は「予想外」の連続。

2015年、総選挙。苦戦のキャメロン保守党が「予想外」の勝利。優勢のミリバンド労働党は「予想外」の敗北。

ミリバンドは倒れ、労働党党首選は「予想外」最左翼コービン勝利。

2016年、ロンドン市長選。「予想外」史上初のイスラム教徒カーン市長誕生。

2016年、「やる必要がなかった」EU離脱国民投票。優勢の残留派キャメロン首相が「予想外」の敗北。まさかのBREXIT

この結果は、「予想外」はありうる、という不気味な予兆となり、アメリカ大統領選挙にも心理的影響を与えたと思う。

負けた残留派キャメロン首相は倒れ、勝ったはずの離脱派ボリス・ジョンソンも「予想外」の失速。最後は「予想外」のメイ首相誕生。

2017年、これまた「やる必要がなかった」総選挙。優勢のメイ保守党が「予想外」の敗北。苦戦の左翼コービン労働党が「予想外」の大健闘。

そして「予想外」のISテロ。そして「予想外」の大火災。

 

今や、英国は全てが「予想外」である。何がどうなるか?誰にも判らない。

 

鉄板のはずだった総選挙にメイ保守党が敗北した理由は、ハード・ブレグジットの不安と、何より緊縮財政への不満だった。

左翼コービン労働党は積極財政を掲げて、不満を吸収した。 

 

メイ氏に辞任要求「信頼失った」 労働党党首 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

2017/6/9(金)
 労働党は鉄道、郵便などの再国有化や富裕層への課税強化、大学授業料の無償化、医療充実など大衆受けする政策を訴え、若者の間などで支持を広げた。
 コービン氏は支持者らを前に「緊縮政策はもうたくさんだ」と強調。メイ政権の保健・教育政策を批判し、「若者は社会で得られるべきチャンスを得られていない」と断じた。

 

英メイ首相、「有権者は緊縮財政に嫌気」と認める―関係筋=タイムズ | ロイター

2017年06月13日

[ロンドン 13日 ロイター] - 英タイムズ紙は13日、関係筋の話として、有権者による緊縮財政への忍耐が限界に達していることをメイ首相が認めたと報じた。

 

そして、緊縮財政、公共投資社会福祉の削減、貧乏人切り捨ての、まるで「結果」であるかのような、大火災が勃発した。

  

ロンドンの高層マンション火災、犠牲者12人に 消火活動続く | ロイター

2017年06月15日
[ロンドン 14日 ロイター] - 英ロンドン中心部にある24階建て高層マンションで14日発生した大規模火災の犠牲者は、少なくとも12人に上っている。消防当局は火災の規模とそのスピードにおいて、ロンドンで前例のない大惨事だとしている。
約600人が居住していた築43年のマンション「グレンフェル・タワー」の消火活動には消防車40台、消防士およそ200人が出動。
(略)
ロンドンの裕福なケンジントン地区の一部を見渡せる低所得層向けの同マンションで、このような悲劇が起きることは予見できた、と地元の住民団体は非難の声を上げた。カーン市長も、答えるべき疑問があると語った。

 

英タワー火災、安全性の懸念無視か 住民「大量殺人だ」と怒り 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

2017年06月15日
【6月15日 AFP】英ロンドン(London)西部の24階建て高層住宅で14日未明に発生した大規模火災で、近隣住民らは、安全性への懸念が以前からあったにもかかわらず、富裕層が住む地域ではないため無視されてきたと、憤りをあらわにしている。

(略)

 グレンフェル・タワーは1974年建築のコンクリート製高層ビル。昨年、総額870万ポンド(約12億円)の改装を終えたばかりで、住民はこの改装の際に使われた新たな外装材が火事を広げた原因となったと批判している。

(略)

「これは大量殺人であり、責任者はこのコミュニティーに対する扱いについて、裁判にかけられるべきだ」(エディーさん)

 

もちろん、当局者として労働党カーン・ロンドン市長の責任も問われるだろうが、

直近の総選挙の争点にもなった、長年にわたって緊縮財政を推し進めてきた保守党政権への批判も起こるだろう。

 

グレンフェル・タワーは1974年建築。 

何の因果か因縁か、同じ1974年に、高層ビル大火災を描いた、歴史的スペクタクル映画「タワーリング・インフェルノ」が公開されている。

 

政権を揺るがしかねない大事故といえば、2014年、韓国でセウォル号が沈没。

それまで、それなりに安定していた朴槿恵政権は一気に不安定化して、支持率急降下、そのまま、大統領罷免まで回復しなかった。

 

朴槿恵姐さんは、メイ保守党ほど緊縮財政というわけではなかったが、韓国の格差社会、若者の就職難などなど、国民の経済的不満が一気に爆発したことが、命取りだったのである。

 

韓国の女性大統領と、英国の女性宰相は、どちらも、まるで疫病神に憑り付かれたように、経済格差社会、外交(日米中/EU)、カルト勢力(北朝鮮イスラム)、大規模災害(沈没/火災)という難問に、直面した/直面している。

 

さて、海難事故といえば、「タワーリング・インフェルノ」の2年前、ご尊父・朴正煕政権時代の1972年に、豪華客船の転覆事故を描いた、これまた歴史に残る傑作ポセイドン・アドベンチャー」が公開されている。

 

CGなんかなかった時代、全部、実物大セットとミニチュア特撮と生身のスタントマンで撮影してる、21世紀から見れば驚異の力業である、「タワーリング・インフェルノ」も、「ポセイドン・アドベンチャー」も、その背景にはキリスト教思想が色濃く流れている。

 

タワーリング・インフェルノ」は、旧約聖書ノアの方舟」「バベルの塔」、ダンテ「神曲」、

ポセイドン・アドベンチャー」は、旧約聖書ノアの方舟」「出エジプト」「ヨブ記」、新約聖書「マタイ福音書」、カルヴァンVSアルミニウス

などなど、おそらく他にもたくさんのキリスト教的象徴に満ちた、ほとんど「宗教映画」といってもいいくらいである。

  

それぞれ、イロイロ書きたいことはあるけれど、それはまた後日。

まずは、犠牲者のご冥福と、負傷者のご回復を、お祈りしたい。

 

朴姐さんとメイ姉御、女性指導者であること以外に、これも奇妙に符合するんだが、両者とも、お世辞にも「フレンドリー」とは言い難い性格なのだ。

 

朴政権、「不通政治」の背景 特異な体験・環境が影響か:朝日新聞デジタル

2016年11月29日
 今回、朴氏が最も批判を浴びたのは、「不通(意思疎通の不在)」といわれる特殊な政治手法だった。
 朴氏は外部の人間とほとんど面会せず、政策遂行に必要な側近たちとの対面すら避けた。ある国家情報院長経験者は在職中、一度も単独で面会できなかった。政権のナンバー2とされる秘書室長の経験者も、単独で面会したのはわずか2回だった。大統領府で働く人々は、主に書類と携帯電話で朴氏に報告した。
 代わりにそばに置いたのが、長年の支援者チェ・スンシル被告だった。

 

【英総選挙】メイ首相の最側近2人が辞任 不評のマニフェスト作成で引責 官邸の密室化に批判も - 産経ニュース

2017.6.11 

 ティモシー氏らはメイ氏の内相時代から仕え、昨年7月の首相就任以降も重用された。英メディアによると、メイ氏は他の閣僚よりも2人を信頼していたとされ、夫のフィリップ氏を含む4人が官邸のインナー・サークル(密室)を形成して情報が閣僚らに伝わっていないとの批判も出ていた。
 政権内部では、政策決定に大きな影響を与えていたティモシー氏ら2人には威圧的な態度が目立ち、誰も意見出来ない状況だったと指摘する声もある。

 

テリーザ・メイ氏、どんな人? イギリスの新首相のあだ名は「氷の女王」

2016年07月13日
サッチャー元首相が妥協を許さない政治姿勢から「鉄の女」と呼ばれたのに対し、自分の考えを表に出さず政治家同士で馴れ合うことを良しとしないことで知られるメイ氏は、時に「氷の女王(the Ice Queen)」と呼ばれる。

 

こういう女性は基本的に有能である。

通常業務や政治的ウラ駆け引きには強いんだが、オバマさんが非常に得意だった庶民の感情に訴えるような表舞台のパフォーマンスが苦手なうえに下手糞だったりして失敗しやすい。

すでに、イヤな予感がビンビンする(笑)。

 

【ロンドン火災】被災者を慰問しないメイ首相に批判高まる 政権の新たな難題にも - 産経ニュース

2017.6.16
ロンドン西部の高層アパートで起きた大規模火災で、15日、被災現場を視察したメイ首相は、警察や消防の説明を受け、徹底した公開調査を指示したが、被災者を慰問しなかったため「被災者に面談すべきだった」との非難が集中。英メディアも「ブッシュ元米大統領指導力欠如を露呈した『ハリケーンカトリーナ』と同じ対応ミス」(ガーディアン紙)と批判しており、テロ対応で支持率が急落したメイ政権の新たな火だねになりかねない。
 公営高層住宅には400人から500人が居住していたが、移民を中心とした低所得者層だった。15日、被災現場を訪問したメイ氏はイラク戦争参加問題などと同様に独立した公開調査を行う方針を明言したが、遺族や被害者など住民に会わなかった。首相官邸では「捜査や救急作業に支障をきたすことを回避するため」と弁明するが、対照的に労働党ジェレミー・コービン党首は同日、訪問して被災者と会って、「代替え住宅確保に全力を尽くす」と語り、ロンドンのカーン市長も面談した被災住民に原因究明を約束した。
 労働党のハーマン議員は、ツイッターで、「メイ氏は被害者と会うべきだった。テレビ経由で話をするだけでは駄目だ」と非難。英BBC放送は「被災者に共感している姿勢に欠け、誤算だったということになりかねない」と求心力が低下したメイ政権の命取りにもなる懸念を伝えた。

 

グレンフェル・タワー火災が「メイ首相のセウォル号」になりかけている。

 

そして、ロンドン版「ろうそくデモ」も発生した。

 

英タワー火災、デモ隊が地元役所に突入 当局の対応に怒り (AFP=時事) - Yahoo!ニュース

6/17(土)
 デモ隊は、当局が犠牲者らの窮状を無視していたと非難。「私たちは正義を求める!」「恥を知れ!」「人殺し!」などと叫び、ケンジントンチェルシー王立区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)の役所のロビーで警備員ともみ合いになった。

 

こんなボロボロな状態で、すでにドイツ=ヨーロッパ帝国の女帝「21世紀のマリア・テレジア」と化したメルケルや、議会も押さえた「フランス版ブレア」であるマクロン相手に、EU離脱交渉なんて、果たして可能なのだろうか?

 

ソフト・ブレグジットどころか、EU準会員レベルに成り下がってしまうかもしれない。