アメリカがユナイテッド・ステイツであるように、
英国はユナイテッド・キングダムだ。
アメリカは、ステイト=州ごとに、共和党が強いレッドステイト、民主党が強い=ブルーステイトがある。
英国も、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの、カントリー=ネイション=国=文化共同体ごとに、保守党、労働党、自由民主党などの全国政党ではなく、強力な地域政党がある。
ロンドン市長選~労働党イスラム貧乏人サディク・カーンVS保守党ユダヤ大富豪ザック・ゴールドスミス(シーシェパードのスポンサー) - 在日琉球人の王政復古日記
英国政治~イスラエル・シオニズムVS左翼・イスラム教徒~EU残留派VS離脱派(Brexit) - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
CNN.co.jp : ロンドン市長にサディク・カーン氏、初のイスラム教徒 - (1/2)
2016.05.07
(略)
5日はスコットランドやウェールズでも市長選や議会選が行われた。
スコットランド議会選ではスコットランド民族党(SNP)が最多の議席を獲得したが、過半数には届かなかった。かつてスコットランドで勢力を誇った労働党は、保守党に続く第3党に後退した。
同様に伝統的に左派寄りのウェールズでは、労働党は最大勢力としての地位を維持した。一方で、EU離脱と反移民を掲げる英国独立党(UKIP)がウェールズで初となる議席を獲得した。
UKIPのナイジェル・ファラージ党首は短文投稿サイトのツイッターで、「長年労働党を支持しながらジェレミー・コービン党首に見捨てられた多くの有権者のため、UKIPは立ち上がる」と述べた。
スコットランドでは、地域政党の「Scottish National Party(SNP)」が、保守党も労働党も全国政党なんか吹っ飛ばして、堂々第1党である。
プライド・カムリはウェールズ・ナショナリズムの地域政党である。
党名自体が英語ではなくウェールズ語だ。ただしスコットランドほど独立運動が盛んではないから、プライド・カムリは第2党である。
なんでスコットランドは分離独立に強気で、ウェールズは自治権拡大で満足かといえば、人口の多い少ないもあるが、財政的バックボーンの有る無しが大きい。
ウェールズは独立しても自立できる財源がない。しかしスコットランド沖合いには「北海油田」がある。独立すれば領土的に「北海油田」はスコットランドのものだ。だから自立可能という計算だった。
しかし、ご存知のように、現在、石油は世界的な供給過剰で価格暴落だ。世界の産油国は困ってる。サウジアラビアは赤字だし、プーチンのロシアの景気が悪い。当然、北海油田もあんまりカネを稼げてない。もし独立していたら、スコットランドは赤字確実だった。そのため、現時点では独立の熱は下がっている。
実は、「SNP」の「N=ナショナル」の和訳がなかなか難しい。
そもそも「ナショナル」「ネイション」とは何ぞや?
これは政治思想に深く関わる問題でもある。
大きく2種類の和訳がある。「民族」か、「国家・国民」か。
「民族」は文化共同体・言語共同体としてのネイション、
「国家・国民」は政治共同体としてのネイション、ということになろうか。
そして、上記ニュースではSNPは「スコットランド民族党」と訳されている。これでいいのかどうか?
たとえば、ドイツのナチスは「国家社会主義ドイツ労働者党」と訳される。ドイツ語の「ナチオナール」つまり英語の「ナショナル」を、ナチスの場合は「国家」という和訳が定着している。
だからSNPは、ナチスに習って、「スコットランド国家主義党」「スコットランド国民党」と訳してもいい。逆にナチスは「民族社会主義」とも訳せる。
で、2つの党の内情をみると、実は和訳はサカサマの方が実情に合っているのではないか?と思われる。
ナチスには、オカルトなアーリア信仰があった。アーリア国民ではなくアーリア民族である。
そして、当時は正式にドイツ国籍を持っていたはずのユダヤ人をドイツ国家から排除した。彼らはユダヤ国民ではなく、ユダヤ民族のドイツ国民だった。しかしドイツ民族ではないから排除されたのだ。
ナチスにとって「ネイション」はあくまで文化共同体「民族」だった。
だからホントは「民族社会主義ドイツ労働者党」という和訳のほうが実情に合致している。
逆に、SNPは、エスニシティ的な先祖代々のスコットランド原住民(ケルト人)だけの党ではない。
現在のスコットランドには、ロンドンと同じように、イスラム、アフリカ、東欧、南アジアからの移民が住んでいるし、SNPは彼ら移民を排除してるわけではない。逆に取り込もうとしている。
実際イスラム教徒のSNP政治家もいる。
SNPのライバルは、宗教や人種の違う移民ではなく、イングランドとロンドンのブリテン政府なのである。
SNPの目的は、エスニシティの異なる移民も含めたスコットランド住民のイングランドからの分離独立であり、スコットランド民族の独立ではない。
だからSNPの場合は「スコットランド国民党」と和訳したほうが相応しいだろう。
この記事で重要なのは、
かつてスコットランドで勢力を誇った労働党は、保守党に続く第3党に後退した。
同様に伝統的に左派寄りのウェールズでは、労働党は最大勢力としての地位を維持した。
の部分である。
つまり全国政党の労働党は、これまでスコットランドとウェールズでは、常に優位にあり、保守党に勝っていたということだ。
事実、SNPの登場まで、スコットランドは労働党の天下だった。保守党はまったく人気がなかった。今もない。
ウェールズでは、今でも、プライド・カムリを抑えて、労働党が第1党を守った。
これを逆に言えば、労働党は、スコットランドとウェールズで優位なのに、トータルでは保守党と互角、やや劣勢になるということだ。
なんでそうなるか? それはスコットランドとウェールズ以外の地域、つまり一番人口の多い英国の中心・イングランドでは、保守党が常に強いということを意味する。
しかしイングランドでも、ロンドンのような大都市は、今回のように労働党も強い。
スコットランド、ウェールズ、ロンドンなどの大都市で弱い保守党が、トータルで互角以上ということは、イングランドの田舎では圧倒的に強いことを意味する。
移民も少ない、英国国教会信徒の住人だらけのイングランドの田舎で強いということは、全国政党のはずの保守党に(彼らにその気はなくとも)「イングランド民族の地域政党」的な要素が見出せるということだ。
保守党=イングランド人の党、のイメージがあるから、スコットランドやウェールズ、では優位に立てないわけだ。
近年、さらにイングランド民族政党的な存在が出てきた。英国独立党(UKIP)である。
UKIPの目標は、英国の「EUからの分離離脱」だが、英国内は逆に統一志向で、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの「英国からの分離独立」は認めず、の議会や自治権を否定する。独立党と言いながら、英国の独立は推進だが、スコットランド、ウェールズの独立は認めない。
タテマエではUK=英国全体を考える全国政党だが、目標が連合王国のワクの死守、つまり事実上、圧倒的多数派イングランド優位の体制になるわけで、イングランド人に都合のイイ政党である。ゆえに支持者はイングランド人中心になる。
対して、EUに妥協し、スコットランドにも妥協する、ぬるい態度の保守党に不満の右翼・タカ派イングランド人がUKIPを支持することになる。
そのUKIPがウェールズで議席を取ったということは、ウェールズ内のEU離脱、英国統一を求める声ということだ。
対して、SNPの目標は、スコットランドの「英国からの分離離脱」で、逆にスコットランドの「EUからの分離離脱」には反対で、中間の英国を飛ばして、直接スコットランドのEU加盟を目指すわけだ。
つまりSNPとUKIPはまったくの正反対となる。
日本でいえば、
EUとはTTPに該当する。
イングランド人がヤマト民族に該当する。
イスラム教徒などの移民が、在日韓国人など在日外国人に該当する。
日本の皆さんは、保守党がお好みか? 労働党がお好みか?
それとも、プライド・カムリか? SNPか? UKIPか?
日本の皆さんにとって「ネイション」とは、
SNPのネイションか? ナチスのネイションか?
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