在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

怒るべき対象はテレビじゃなく、番組を信じる馬鹿~「相棒」シャブ山シャブ子、「世界の果てまでイッテQ!」やらせ祭り。

テレビや映画の暴力描写・残虐描写が子供に影響して暴力犯罪を煽る危険がある、みたいな話があるけれど、イマイチ信用できない。

 

だって、日本のテレビは、毎日のように殺人シーンを放送していたのだ。

暴れん坊将軍が日本刀のミネ打ちで相手を殴り、鬼平が何十人もの盗賊を斬り殺し、必殺仕事人がヒモで首を絞め上げ、鋭利な刃物で後頭部を突き刺す。

日本人は、毎日のように殺人シーンで洗脳されていた。おそらく世界で一番、テレビで殺傷シーンを見てきた国民だろう。

じゃあ、日本の殺人事件、傷害事件の発生数は多いのか?といえば、世界レベルで少ないくらいだ。

 

日本刀で相手を切り殺したり、包丁で刺し殺したりした殺人者が、「時代劇を見て人間を殺したくなりました」なんて供述をしたことは、ゼロではないにしろ、ほとんどないだろう。

 

テレビでの暴力描写の規制が厳しいアメリカの方がよっぽど現実の暴力行為は多いのだ。

 

「相棒」の薬物依存症者の描写は差別的 研究者らが抗議:朝日新聞デジタル

2018年11月15日
 7日に放送されたテレビ朝日の刑事ドラマ「相棒 シーズン17」で、薬物依存症者の描写が差別的だったとして、市民団体や研究者らでつくる「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」が15日、テレ朝に抗議文を出した。番組内での謝罪などを求めている。
 抗議文では、ドラマに登場した依存症者について「実態からはかけ離れた、異様な演出」だと指摘。放送が偏見を助長し、依存症者の社会復帰を妨げることを憂慮するとしている。番組ホームページ内で「薬物依存症が回復可能な病気である」との情報を掲載することなども求めた。
 ネットワークの発起人の一人で、「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子さんは「人気番組で影響力が大きいゆえに、間違ったイメージが見た人にすり込まれてしまうのが心配だ」と話す。
 問題視されたのは、賭博捜査をめぐる警察内部の対立を描いた回。薬物依存症の女性が、奇声を発しながらベンチに座る刑事を背後からハンマーで襲って殺害し、「シャブ山シャブ子」と自称する場面などがあった。出演したのは短時間だったが、俳優の演技に注目が集まり、放送直後からツイッターなどでは「見事だ」「渾身(こんしん)の演技」などと話題にもなった。
 テレ朝広報部は13日、朝日新聞の取材に対し、「専門家や患者支援者の方々が問題提起されていることは承知しております。ご指摘を真摯(しんし)に受け止め今後の番組制作に生かしてまいります」とのコメントを出している。

 

いや、言いたいことは判らんでもないが、ドラマは「ドラマ」ではないか。

 

んなこと言ったら、西部警察じゃ、渡哲也が、取調室で容疑者をタコ殴りにして吐かせ、街中でショットガン撃ち放題だったではないか。日本の警察官が容疑者を暴行して供述を取っていいのか? ショットガンを街中で撃っていいと許可されてるのか?

見ている視聴者が「そうか。警察は容疑者を殴ってもいいんだ。犯人を撃ち殺してもいいんだ」と誤解したら、どうするのか?

 

現実ではありえない、というのなら、鬼平は盗賊を日本刀で斬ってるけど、着られた盗賊の衣服は裂けないし、大半は流血もしてない。刃物で相手を殺してるのに、血も出ない、衣服も破れない、なんて全くのウソ描写である。

見ている視聴者が「そうか。日本刀で切っても、服は破れないし、血も出ないんだ」と信じたら、どうするのか?

 

子供にウルトラマンを見せていいのか? あんな巨大な怪獣は現実には存在しない。大ウソではないか。

東海道四谷怪談を見て、死んだ人間が化けて出る、幽霊なんていう非科学的なウソを信じてしまったら、どうする?

ハムレットで悪党が王様の耳に毒を流し込んだ。明らかに殺人だ!観客は呑気に舞台を見ている場合か?殺人を目撃したのに110番しなくていいのか?

 

現実とドラマの区別ができない人間がいるから、ドラマの表現から虚偽を排除し、厳密に規制せよ、というのは本末転倒もいいところだ。

それは、ドラマが悪いんじゃない。

現実とドラマを区別できない視聴者の方が問題なのだ。

 

私は浴びるように、東映任侠映画やヤクザ映画を見て育った。

いくら鶴田浩二高倉健が善人に描かれているからといって、現実の山口組や稲川会も善人だ、と誤解してるのならば、それは東映が悪いのではなく、この私が馬鹿なのだ。

 

杉下右京も、エイリアンも、ジェームス・ボンドも、一番星桃次郎も、ダースベイダーも、中村主水も、ハリー・ポッターも、ゴジラも、花川戸の助六も、現実には存在しない。

そんなことも理解できない方が問題である。

 

シャブ山シャブ子を見て、現実の依存症患者を判断するような人間は、

時代劇を見て、長さ80センチの鋼鉄製の刃物で人体をフルスイングしても出血はしないんだな、と判断するような人間であり、

そんな判断能力の人間を放置していたら、おそらく他の事でトラブルを引き起こすだろう。

ドラマの規制ではなく、彼らの再教育が先だ。

 

依存症患者に親身に付き合ってる皆さんは善人だと思うが、主張も判らないではないが、フィクションに圧力をかけて潰しにかかることには絶対反対である。

あなたたちの怒りの対象はドラマであってはならない。ドラマと現実の区別のつかない馬鹿に対して怒るべきだ。

SF映画、ヤクザ映画、時代劇、西部劇、そういうエンタメのお陰で、辛い事しか起こらないボロ雑巾のような負け犬人生を、かろうじて生き抜くことができた私にとって、エンタメの自由を邪魔する者は敵である。

 

特に、シャブ山シャブ子の場合、一人の無名の女優さんのチャンスなのだ。

いくら善人でも、いくら善意でも、頑張ってスポットライトを浴びた女優さんの役者人生を邪魔する権利だけはない。

依存症患者の人生も大事だが、女優さんの人生も同じだけ大事なのである。

 

「イッテQ!」 祭り企画を当面中止 日テレ社長が謝罪 | NHKニュース

2018年11月15日
日本テレビのバラエティー番組、「世界の果てまでイッテQ!」が紹介した海外の「祭り」をめぐる問題で、日本テレビの大久保社長は記者会見で「責任は日テレにある」と述べて謝罪し、当面「祭り」の企画は中止する考えを示しました。
日本テレビによりますと、「世界の果てまでイッテQ!」をめぐって、海外の「祭り」を紹介する企画で、現地のコーディネート会社が実質的な主催者となったり、場所や時期を変更したりしたイベントを紹介していたほか、番組がコーディネート会社に支払った撮影経費からイベントの開催費用や賞金などが支払われていたということです。
これについて日本テレビの大久保好男社長は15日、会長を務める日本民間放送連盟の記者会見で「祭りの企画について疑念を生み、ご心配をかける事態におわび申し上げます。現地のコーディネーターに責任はなく、責任は日テレにある」と述べて謝罪しました。
そのうえで「やらせとかでっちあげと言われているが、制作側にその意図はない。指摘や批判を真摯(しんし)に受け止め、当面、祭りの企画は中止する」と述べました。

 

普段ほとんどテレビを見なくなったので、実は「世界の果てまでイッテQ!」を一度も見たことがない。全く興味がない。

でも、この騒動は噴飯ものである。

 

テレビのバラエティが「やらせ」って、当たり前ではないか。

バラエティは、エンタメであり、作り物であり、虚偽であり、ウソに決まってる。

 

もし、事実だと思って見ている視聴者がいるのなら、その人の正気を疑う。

そりゃ、オレオレ詐欺が根絶しないのも当たり前だ。

 

「やらせ」だったら「やらせ」と周知せよ、「この番組はフィクションです」「この祭りは実在しません」とテロップを流せ、と言われるかもしれないが、

じゃあ、仮面ライダーや戦隊モノの放送中に「この怪人や悪の組織は実在しません」とテロップを流すのか?

プロレスの番組で「この試合はガチンコではありません」なんていうテロップは流れない。

大相撲でも、千代の富士の取組に「今場所は優勝しないといけないので、この一番は注射です」なんてテロップは流れない。

 

そんな当たり前を承知の上で見るのが、ドラマやバラエティやプロレスの視聴者の基本素養であり、常識ではないか。

 

マジメに「お芝居」や「やらせ」を制作してるテレビが謝るのは間違ってる。

テレビの見方を判っていなかった視聴者が自分自身に謝るべきである。