【追悼】高倉健映画列伝(続・東映任侠時代)~花と龍、花と風、日本暗殺秘録、死んで貰います。 - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
時代は変る。仁侠映画は終焉し、高倉健=東映の時代も終わろうとしていた。
映画のテイストは香港アクション映画である。試行錯誤の一作。
健さんにとっても、東映にとっても、ターニングポイントの作品だと思う。
出来は大味だが(笑)、フランスで大人気を取ったパニックサスペンス。
身代金目的のアウトローたちは敗れ、新幹線という資本主義システムが勝利する。
左翼の終焉、反体制の終焉、「思想」ではなく「機械的システム」が社会の全てを支配・運営する時代の始まりである。
日本最高の左翼俳優、いや、血肉化、擬人化された左翼思想、生ける左翼思想とも言うべき奇跡の俳優・山本圭も素晴らしい。
「冬の華」東映1976年
Winter's Flower (1978) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]
この日曜に緊急放送するようだ。
ただし、これ、任侠モノ、特に「昭和残侠伝」シリーズを観てないと、面白さが半減な作品ではある。
「黄色いハンカチ」「駅 STATION」「居酒屋兆治」から「ホタル」まで、その後の高倉健のイメージはここで形作られる。
「無宿」勝プロ1974年
東映のアイコン・健さんと大映の金看板・勝新、ヤクザ映画ファンにとって夢の競演。ジャイアント馬場VSアントニオ猪木みたいなもんだ(笑)。「女囚さそり」日活梶芽衣子が客演。
ただ、マニアックな勝新の悪い面が出て、娯楽映画としてはアレな出来。
改革開放路線(要は資本主義化)以前の支那で、文化大革命に疲れ切っていた数億人の人民が熱狂し、「高倉健先生」の名前を大陸中に知らしめた作品。
末期日活な原田芳郎も出てるし、期待の一作だったが、映画の出来はヘン(笑)。特にBGMがおかしい(笑)。「馬」は良いんだが、「熊」がなあ(笑)。
ずっと東映任侠路線のエースで、東宝・松竹に縁が無かったため、あれだけの知名度を誇りながら、いわゆる「文芸作品」「大作映画」主演が無かった健さんにとってはエポックな作品かも。
雪また雪。SFXやCGが無かった時代である。あの雪は全部ホンモノだ。
ちなみに「シナノ企画」は創価学会系の会社。名作「砂の器」も作ってる。
創価学会はそろそろマジメに考えねばならない存在である。
「幸福の黄色いハンカチ」松竹1977年
後期・高倉健を代表する名作。健さんと松竹山田洋次の相性は抜群である。
日本を代表する2大映画俳優・渥美清と高倉健の顔合わせも必見。
健さんだけでなく、渡瀬恒彦もそうだが、アウトロー東映の役者が、エレガント松竹に出ると、化学反応を起こして、なかなかの名演になる。
「野性の証明」角川1978年
いわゆる「角川映画」いかにも「角川映画」。薬師丸ひろ子デビュー作品。役者は東映中心で違和感はないが、それほど良い出来とも思えない。
東映の健さんと日活の吉永小百合の共演。2人の相性は悪くない。というか、日活以後の吉永小百合作品の中では出来が良い方だろう。
ストイックな健さんはやっぱり陸軍将校の軍服がピッタリ似合う(笑)。鶴田浩二に海軍将校が似合うのと好一対である。やっぱ東映はやくざと兵隊だ。
健さん小百合の二・二六事件、というコンセプトも最高なんだが、惜しいことに演出が良くない。
例えば、永田鉄山暗殺事件(相沢事件)をモチーフにした、田村高廣は天津敏を惨殺するシーンがあるんだが、よく見ると、切る前から天津の背中の斬り跡と流血がカメラに映っている大チョンボがある。最近の放送やDVDじゃ上手く編集してカットしてるかもしれんが。
監督と演出を変え、脚本をもう一練りして、リメイクしたら、健さんの(そして吉永の)代表作になったかもしれないという意味で惜しい。
「遙かなる山の呼び声」松竹1980年
個人的には「幸福の黄色いハンカチ」を上回る傑作。高倉健ベスト3を選んだら入る一本。
倍賞もイイが、ハナ肇が最高。
先にも書いたが、健さん映画のキモは優れた「コメディリリーフ」役なのである。
「駅 STATION」東宝1981年
[TRAILER] Station (Eki) (1981)
健さんが健さんを演じている。健さんファンにとっては、これぞ「健さん」な役回りなんだろう。
「幸福の黄色いハンカチ」で共演した武田鉄矢のカンフーアクション刑事モノに友情出演。その関係からも、映画のテストからも、ずっと松竹作品だと思っていたが、東宝だったのね。
健さんに関係なく、「刑事物語」は優れた娯楽アクションシリーズだと思う。
「居酒屋兆治」田中プロ1983年
後期・高倉健らしい一作。悪くはないが、まあね(笑)。
「夜叉」東宝1985年
ビートたけしと共演。しかし映画は「いまさら、これ?」という感想。
海外への知名度、ということでは重要な作品。
ただしこれは健さん映画というより、松田優作の凄みが爆発した「優作映画」だろう。
出来も内容も「アメリカ白人から見た異郷アジア」。欧米の目からは「日本」はこう見えるのである。
健さん久々の(数十年ぶり?)のチョンマゲ時代劇。歳を取ってチョンマゲが似合うようになっていた。カッコイイ。
思えば、これが「元気にアクションできる映画俳優・高倉健」の最後の見納めでもあった。
ただし、同時期公開の松竹深作作品「忠臣蔵外伝 四谷怪談」との忠臣蔵映画対決だったが、個人的には「忠臣蔵外伝 四谷怪談」の方が圧倒的に上。
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「四十七人の刺客」が悪いというより、「忠臣蔵外伝 四谷怪談」の描く赤穂事件こそが、幽霊が活躍するファンタジーでありながら、「歴史の真実」を突いていると個人的には考えるからだ。
以上、長々とお付き合いありがとうございました。
改めて、日本が誇る任侠映画スタア・健さんのご冥福をお祈り申し上げます。
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