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在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

大阪が東京に敗北した日~映画「白い巨塔」(1966)~橋下維新の大阪都構想はナニに負けたのか?

21.映画

平成唐沢版も嫌いじゃないんだが、 平成唐沢版には致命的な欠点がある。

言葉だ。

大阪・浪速大学が舞台なのに、平成唐沢版はほとんど全員標準語なのである。

それでは「白い巨塔」の意味がない。

 

白い巨塔」は大阪弁でなければならない。

なぜなら「白い巨塔」は「大阪の物語」だからだ。

 


映画「白い巨塔」劇場予告 - YouTube

 

残酷に言えば、大阪が東京に敗北する物語。

明治維新の総仕上げ。

関が原の戦い・大阪の陣のリマッチ、いや源平合戦のやり直し。

それが白い巨塔」である

 

つまり、橋下さんの「大阪都構想」は、本当ならば、財前五郎田宮二郎の弔い合戦でもあった。

 

<橋下大阪市長>「関西維新の会」設立か 国政政党を視野に (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 会合で橋下氏は、代表選の投票権や政党交付金の在り方について「維新の党の国会議員団の進め方はよく分からない」などと執行部を批判。その上で、地域政党大阪維新の会について「原点に戻り、単独でやっていける仕組みに作り直さなければならない。維新の理念は地方分権であり、関西に視野を置くべきだ」と語ったという。

 大阪維新の会は「大阪都構想」に代わる看板政策を模索中だ。橋下氏の発言は、「関西州」の実現を新たな旗印にすることも念頭に置いたものとみられる。 

 

しかし、投票結果が出た後の、特に支持者の意見を読んでいると、この戦いの「本当の相手」を全く解っていなかったようである。失望の一言である。

 

大阪都構想」の住民投票で、橋下さんと維新の党とその支持者は負けた。

しかし、それ自体はどうでもいい。勝っても負けてもどっちだってよかった。

なぜなら大阪都構想」自体が大した話ではないからだ。毒でも薬でもない。

シルバーデモクラシーがどうのこうの、馬鹿馬鹿しい。問題の本質ではない。

 

大阪府大阪市を一緒にしても、大阪の中をいくら改造しても、二重行政を解消した程度のことで、大阪が復活するわけがない。

大阪の復活は、日本全体、いや、東京を変えない限り、不可能なのだ。

 

東京と大阪。関東と関西。

 

歴史的には、ずっと、関西の方が格上であった。


奈良・平安も昔は言うに及ばず、鎌倉幕府成立後も経済力は関西が関東を圧倒し、徳川幕府成立後も関西優位は変わらない。

花のお江戸より、上方の方が、経済的にも文化的にもずっと格上だった。
大阪の繁栄は元禄時代に頂点を迎える。そして、文化文政期になってようやく江戸の経済力が上方のライバルのレベルにのし上がってくる。
明治維新で東京の政治的優位が決定した後も、大阪の経済的優位は守られ、大東亜戦争まで続く。 

 

江戸時代から戦前まで、関西=上品・優雅、関東=下品・粗野、であった。
料理は、上方が薄口、江戸が濃口。

歌舞伎だって、上方は和事、江戸は荒事。

 

しかし戦後の高度経済成長で、日本史上初めて、ついに関東が関西を追い抜く。

 

それまでは小説「細雪」のイメージだった大阪が、だいたい高度経済成長を分水嶺に、お笑いの吉本興業、ヤクザの山口組、豹柄のオバチャンなどなど「コテコテの大阪」になっていく。

自他共に認める今の大阪のイメージは、つい、最近出来たモノなのだ。

つまり大阪人自体が、大阪の本来のイメージを誤解してるのである。

 

映画やテレビドラマになった「白い巨塔」は、ちょうど、その関東・関西の逆転、東京・大阪の逆転が起こった変動期の物語である。

 

舞台の大阪「浪速大学医学部」は、地方大学を支配する日本有数のエリート医学部である。主人公・財前もエリート医師だ。 

 

しかし浪花大学は「日本一」ではない。

 

同じ関西に同格の京都「洛北大学」があり、なんといっても、東京には最大の敵「東都大学」がある。

そこに浪花大学医学部第一外科の教授選出騒動が持ち上がる。
部下の財前助教授と上司の東教授の戦いである

 

財前の上司・東教授は名前通り「東都大学」出身。実は彼は東京からの大阪への「侵略者」なのだ。彼が頼るのが日本医師会の首領・「東都大学」船尾教授だ。船尾の武器は「政治」だ。東京の政治的優位を背景に人事で攻めてくる。

 

対抗する財前には、大阪の地元医師を象徴する義父や、独立王国「浪花大学」を守る鵜飼部長が付く。義父の武器は「経済」だ。現金による買収である。

 

財前助教授と東教授の教授のイス取り合戦は「経済の大阪」対「政治の東京」の戦争である。

暗闘の末、教授選は、財前=大阪の勝利に終わる。東・船尾=東京は一敗地にまみれる。

 

しかし、その後、財前の誤診裁判が起こる。
この大阪「浪花大学」と大阪の患者、つまり大阪内部の内ゲバに、「東都大学」船尾教授が、証人として出廷する。

かつての敵の総大将・東京の船尾の再登場に、大阪の財前たちは教授選の復讐されるのではないかと恐怖する。

ところが、予想に反して、船尾は裁判の証言でかつての敵・財前の味方に付き、財前は勝利する。

 

裁判勝利に喜びながらも、意外な援軍に不可解な気持ちになる財前たちに対し、船尾は味方した理由を説明する。

財前の敗北は、単に「浪花大学」の敗北だけを意味するのではなく、日本医師界全体の敗北を意味する。日本医師界全体の利害を代表する船尾にとって、財前と患者ならば、財前のほうが船尾の身内なのだ。

 

財前たちは単純に喜んでいたが、この瞬間「浪花大学」は「東都大学」の軍門に下ったも同然である。

 

船尾のいう日本医師界全体の利害には「浪花大学」も含まれる。つまり「浪花大学」は「東都大学」の船尾の手の内にあるという宣言である。

本当ならは「浪花大学」鵜飼部長は、「東都大学」船尾の傲慢に反発しないといけない。『なんでヨソモノ「東都大学」のお前が、偉そうに独立王国「浪花大学」の利害を代表してるんだ?』と。

 

しかし、財前も鵜飼も、この致命的「敗北」に全く気が付かない。

 

「浪花大学」の利害しか考えてない財前たち。

日本医師界全体の利害を考える船尾。

勝敗は明らかである。裁判に勝った財前たちは、船尾には完敗してるのだ。

大阪はついに東京の軍門に下った。しかも大阪はその敗北を自覚すら出来ていない。

 

白い巨塔」は、大阪が東京に敗北した、平成の現在にまで続く「東京一極集中の日本」誕生の物語でもある。

 

橋下さんや大阪維新の本当の相手も、実は財前たちの真の敵と同じなのだ。

誰が教授になろうが、外科が勝とうが内科が勝とうが、「浪速大学」内部の変動なんてどうでもいい話で、本当に戦うべき相手は「東都大学」だったのである。