在日琉球人の王政復古日記

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《慰安婦映画列伝》大映「新・兵隊やくざ」(1966)~東宝・三船敏郎、東映・高倉健、とくれば、大映・勝新太郎!

東宝東映、とくれば(今は亡き)大映。  

 

残念ながら、第3作「新・兵隊やくざ」はなかったので、 あ、あった(^^)。

 


「新・兵隊やくざ」(公開年月日 1966年01月03日) 予告篇

 

第7作「兵隊やくざ 殴り込み」は、こんな感じ。

 


「兵隊やくざ 殴り込み」(公開年月日 1967年09月15日) 予告篇

 

東宝血と砂」1965年 主演・三船敏郎

東映「いれずみ突撃隊」1664年 主演・高倉健

大映「新・兵隊やくざ」1966年 主演・勝新太郎

世界のミフネ。健さん勝新。日本映画オールスター勢ぞろいだ。

 

今でいうなら、渡辺謙役所広司でバンバン映画化してるのに、慰安婦の存在がタブーだったわけがない。昭和の日本人なら誰でも知っていたのである。

 

東宝東映に比較すると、潰れたこともあって、知名度では劣るが、大映兵隊やくざ」シリーズは勝新および大映の代表作。

主人公は、ヤクザ者で、ビンタした方が手を傷めるくらい体は頑丈、ステゴロ(素手喧嘩)で天下無敵、曲がったことが大嫌いで、上官を屁とも思わず、ところかまわず大暴れする快男児

この主人公キャラ設定、「血と砂」のミフネ、「いれずみ突撃隊」の健さんと、まったく同じである(笑)。

 

アメリカなら、ナチスを悪役としていくらでも戦争映画を作れるが、

日本の場合、国民党軍・共産党八路軍を悪役に描くわけにもいかない(笑)。

どうしても、映画上の悪役を、日本軍内部に持ってくることになり、そうなると、主人公は、日本軍の本流を歩く人間ではなく、軍隊を逸脱したハミ出し者にするしかない。

 

日本陸軍をテーマにしたエンタメ映画は、どうしても「アウトローの主人公VS陸軍内部の組織的悪」になってしまうわけだ。

で、この構図は「業界内善人VS業界内悪党」の対決である、やくざ映画仁侠映画と同じなのである。

 

大映勝新には、もう一つ、前に「靖国映画」として紹介した「悪名」シリーズという人気シリーズがあるが、

 

《靖国映画列伝》大映「悪名一番」(1963年)~朝吉の米VS清次の米。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

「悪名」も兵隊やくざ」も、どっちも、いわゆるバディムービー(2人組コンビが活躍する映画)というやつだ。

「悪名」は勝新&「白い巨塔田宮二郎コンビ。勝新が兄貴分、田宮が弟分。

兵隊やくざ」は勝新&「古畑任三郎のお兄さん」田村高廣コンビ。勝新が弟分、田村が兄貴分。

立場は逆だが、勝新が暴れん坊、相棒がインテリ、という性格付けは同じだ。

 

兵隊やくざ勝新田村コンビは、東宝よりも、さらに東映よりも、関係性が深く、ホモソーシャル度がアップ。勝新は、馴染みの慰安婦を前にして「オレは上等兵ドノ(田村)と一緒じゃないとダメなんだ!」と、誤解スレスレのオーバーランをかます(笑)。ほとんどホモセクシャル(笑)である。

 

「万引き家族」がダメで「兵隊やくざ」はイイのか?~イイネの人は「血の砂」「兵隊やくざ」見たことあるの? - 在日琉球人の王政復古日記

 

兵隊やくざ」シリーズの中で、慰安婦が活躍するのは、

「将校用慰安所」と「一般兵用慰安所」の区別とか、「毎日毎日寝てるから、汗と脂を吸って、畳が女の姿に腐る」という凄まじいセリフも飛び出す、第1作「兵隊やくざ」。

そして、慰安婦を管理する「ピー屋」という存在をクローズアップした、第3作「新・兵隊やくざ」だろう。

 

第3作のヒロイン慰安婦ヒメインは瑳峨三智子。

 

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瑳峨三智子、といっても平成の人は判らんでしょうが、大御所山田五十鈴の実の娘さん、といっても山田五十鈴を知らないか(笑)、必殺仕事人シリーズの三味線屋のオバサンというのが一番有名か。大女優の娘さんだ。 

正統派美人からは外れるが、個性的で妖艶な女優さんで、精神的にかなりアンバランスだったらしく、お母さんより先に亡くなった。

 

大戦末期の満州。とにかく軍隊が大嫌いな勝新&田村の2人組は、部隊を脱走して、日本軍の物資を強奪して、慰安所イカサマ賭博で有り金巻き上げられて、慰安婦を足抜けさせて逃亡、と軍人勅諭軍法会議もどこ吹く風のムチャクチャをやらかすんですが、

せっかく足抜けさせた慰安婦を解放してやろうとすると、慰安婦たちは「こんな大陸のど真ん中で自由にしろといわれても困る」と言い出し、勝新&田村に自分達のオヤジになってくれ(つまり慰安所を作って雇ってくれ)と言い出す。

ヤクザな勝新慰安所=ピー屋で大儲けしようとウハウハなんですが、

インテリの田村はピー屋の主人になりたくない。ピー屋を人間としてやってはいけない不道徳な職業だと思ってるんです。軍隊は人殺しだからイヤ、ピー屋は人買いだからイヤ。インテリはいつの時代でも始末に負えません(笑)。

しかしヤクザな勝新は、惚れた瑳峨三智子と祝言を挙げたりします。ヤクザはインテリより民主的ですね(笑)。

 

これでわかるのは、
慰安所が日本軍直営ではないこと、しかし日本軍に完全に依存した軍属だったこと、やはり慰安婦が「賤業」と見られていたということ、しかし兵士と慰安婦の「恋愛感情」もありえたということ、などでしょうか。

 

大映が潰れた後は、東映実録路線になくてはならぬ役者として大活躍、千葉真一松田優作の作品の常連でもあった、成田三樹夫大先生も冷酷非情な憲兵としてご登場の一品。

兵隊やくざ」、できれば第1作から順番に見ることをオススメします。

もちろん「悪名」シリーズもオススメ。

 

(まとめ)昭和銀幕絵巻★慰安婦映画列伝 - 在日琉球人の王政復古日記