在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

《反米ナショナリズム映画列伝》角川「人間の証明」~青山ミチ、松田優作~大映「悪名」~日活「野良猫ロック・マシンアニマル」。

慰安婦映画外伝。《列伝》ではなく《外伝》である。

 

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1960年代の日本女性としては、破格の超巨乳である。

こっち方面で売り出す手もあったと思うが。 

 

歌手の青山ミチさんが死去…「ミッチー音頭」 (読売新聞) - Yahoo!ニュース

2017/2/8(水)
 「ミッチー音頭」などのヒット曲で知られる歌手の青山ミチ(あおやま・みち、本名・八木フサ子=やぎ・ふさこ)さんが1月、急性肺炎で亡くなっていたことが7日、分かった。
 67歳だった。告別式は親族で済ませた。喪主は長男、加藤大輔さん。
 1960年代、「涙の太陽」「叱らないで」などのヒット曲を生み、パンチのある歌声で人気だった。「ミッチー音頭」は他の歌手にもカバーされた。覚醒剤取締法違反で有罪判決を受けるなどし、近年は芸能活動から遠ざかっていた。

 

冒頭から、申し訳ないが、私は音楽には(にも)からっきし素養がない。

芸能も門外漢で、実は「青山ミチ」なる女性歌手にも思い入れは全くない。

 

ただ、映画で彼女を見たことがある。

そして、彼女の「出自」を知り、イロイロと考えるところがあったので、まとまらないが、つらつらと書いてみる。

 

ググって、彼女のプロフィールを読み、唄をyoutubeで聞いてみると、誰でも知ってるある女性歌手と重なった。

 

青山ミチ

 本名・八木フサ子 1949年生れ 1962年歌手デビュー。

和田アキ子

 本名・金福子/通名・金海福子 1950年生れ 1968年歌手デビュー。

  

2人は、ほぼ同年代で、同じころのデビューなのだ。

そして歌もブルースを基調としたパンチのある歌唱力である。

和田も朝鮮人の出自だが、青山もアメリカ兵の血を受けた混血だったようだ。2人とも、日本社会のマイノリティである。

 

つまり、2人の境遇はよく似てるのである。

事務所の実力差が大きかったとは思うが、もしも、10代の娘だった青山ミチを周りの大人がちゃんとコントロールして、シャブなんかに手を出さないように守っていたら、その後、青山の方が、芸能界の大御所、紅白歌合戦の常連みたいな「和田アキ子」的ポジションに座っていた可能性は十分あったんじゃなかろうか? 

 

そして青山は、和田と違って、オッパイがでっかい(喜)!

ここは個人的に大変重要である(馬鹿)。

 

オッパイといえば、こっちの映画もおススメ。

 

高岡早紀のオッパイだけではない!~史実ゼロ(笑)で元禄赤穂事件の《真実》を暴く映画「忠臣蔵外伝四谷怪談」。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

さて、和田アキ子も映画には数本出ているが、青山ミチも出ている。

和田が演技の出来る人じゃないのと同様に、青山も演技力ゼロだった。いわゆる「カメオ出演」である。

ここでも、和田と青山は重なる。

同じ日活の同じシリーズに出ているのだ。

 

日活「女番長・野良猫ロック」(1970年) 出演:和田アキ子

 


Stray Cat Rock Female Boss (1970) Trailer

  

日活「野良猫ロック マシン・アニマル」(1970年) 出演:青山ミチ

 


Stray Cat Rock: Machine Animal Original Trailer (Yasuharu Hasebe, 1970)

  

平成の御世、いまさら、日活「野良猫ロック」シリーズといっても、

東映ピンキーバイオレス路線なんかが好きな、ごく少数のボンクラ邦画馬鹿(笑)を除けば、このブログを読んでいる平成の皆さんは名前も聞いたことがない映画シリーズだろう。

というか、そもそも「日活」自体を知らない時代か。

 

日活は、本年度アカデミー賞最有力候補「ラ・ラ・ランド」や主演のライアン・ゴズリングに通じるカッチョイイ映画を作っていた会社なのだ(かなり強引)。

 

日活映画石原裕次郎列伝~一輪の花・芦川いづみVS大輪の華・浅丘ルリ子~昔の創価学会員って日活が好きだったんじゃないかな? - 在日琉球人の王政復古日記

 

ライアン・ゴズリング=日活無国籍アクション(笑)~ラ・ラ・ランド=東京流れ者(渡哲也/鈴木清順)~ドライヴ=ギターを持った渡り鳥(小林旭) - 在日琉球人の王政復古日記

 

1970年といえば、誰もが認める映画スタア・石原裕次郎小林旭吉永小百合の日活黄金時代はすでに去り、梶芽衣子藤竜也でかろうじて悪戦苦闘していた、日活ロマンポルノ時代直前、日活暗黒時代である。

野良猫ロック」は、日活最期のあだ花的シリーズでもある。

 

しかし、この時点で和田と青山のポジションは格差があったようだ。

和田は(名前だけとはいえ)主演だが、青山は端役のカメオ出演だからだ。

 

青山は、ハッキリ言えば、歌唱シーンだけが売りである。

同じような青山の映画出演は、個人的に大好きな、「座頭市勝新太郎&「白い巨塔田宮二郎コンビのバディームービー・大映「悪名」シリーズにもある。

 

《靖国映画列伝》大映「悪名一番」(1963年)~朝吉の米VS清次の米。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

しかし、マイナーとはいえ、日活「野良猫ロック」は、youtubeに上がっているだけまだマシで、大映「悪名」に至っては、youtubeにすら上がっていない。トホホ。

 

※追記(2019/10)※

あ、あった(^^)! 

ドンピシャ、大映「悪名波止場」、青山ミチの歌のシーン。

清次(田宮二郎)のエアギター(笑)付き。

 


(104)淋しいときには(青山ミチ・田宮二郎)

 

河内弁でまくしたてる「八尾の朝吉」を主人公にする「悪名」シリーズは、大阪を舞台にした映画と思われがちだが、実は、多くの作品が、中国(支那じゃないよ)・四国を舞台にした「瀬戸内海」映画なのだ。

また、勝新・田宮のオトコ中心の映画に見えて、実はオカマを含む女性たちが活躍する「女性映画(フェミニズム映画ではないが)」でもある。

 

第1作「悪名」に出てくる、浪花千栄子演じる「因島の女親分」も、本当に実在した著名な女侠客だったそうだ。「麻生イト」でググってみてね。

 

麻生イトの実像に迫る 生誕130年記念誌発刊 | せとうちタイムズ

 

「悪名波止場」にも、「おなご舟」という、変わった女性集団が出てくる。

要は船員、漁民相手の売春業なのだが、女性たちは陸には上がらず船で生活しているのだ。

因島の女親分」が出鱈目なフィクションではなく、史実の裏打ちがある登場人物だったように、女性だけで構成された水上生活者「おなご舟」というものも、おそらく実際に存在したのだろう。

大きくは荒れない瀬戸内海は船での水上生活がしやすい場所である。昔から日本には、普通に米を作る農民ではない、かといって手工業者とも商人とも言い難い、イレギュラーな生活者たちがたくさんいたのである。

日本だけでなく、香港など華南地域、東南アジアには「蛋民」と呼ばれる水上生活者集団がいるが、おそらく歴史的な関連性があるのだろう。

瀬戸内海の女性は、他の地域とはちょっと違うところがあるようだ。

というか、関東以北の東北日本と、関西以西の西南日本は、民俗学的にも、かなり気質の異なる社会なのである。 

 

この映画に戦中の従軍慰安婦は登場しないが、戦前よりもはるか昔から続く、戦後の慰安婦たち「おなご舟」が活躍するわけで、この映画も「慰安婦映画」なのだ。

 

(まとめ)昭和銀幕絵巻★慰安婦映画列伝 - 在日琉球人の王政復古日記

 

青山ミチ本人は出演しないが、「青山ミチ」的存在が登場する映画もある。

 

【追悼】高倉健映画列伝(東映任侠時代)~「人生劇場」の幕が開く。 - 在日琉球人の王政復古日記

 「網走番外地 望郷篇」東映1965年
どっちかというと日活や松竹のイメージが強い、敵役の口笛を吹く「人斬りジョー」杉浦直樹が全部持っていく(笑)。
そういや、なんとなく日活無国籍アクションっぽいテイストである。

 

健さんの九州長崎を舞台にした「網走番外地望郷篇」にも、黒人との混血少女が出てくる。

 

しかしなんといっても、有名なのはこの映画だろう。

主題歌を歌うジョー中山も、青山ミチと同じ境遇だった。

 


人間の証明 テーマ曲 ジョー山中

 

角川「人間の証明」(1977年)。

 

さすが、松田優作、見事な顔芸である。

そして、松田を引き立てる、ハナ肇のバイプレイヤーぶりの秀逸さたるや。

ここだけは、ちゃんと映画になっている。

 

全体として、サスペンスとして無駄な部分が冗長で、かつストーリーが速すぎてタメの無い、失敗作だと思うが(笑)、このシーンだけは良い。

このクライマックス、松田が「母親ってナンなんだ?!」と叫ぶバージョンがあるそうだが、今見ても、台詞が無いほうが正解である。

 

人間の証明」も、戦中の戦地ではないが、戦後に翻弄された売春婦の物語であり、「慰安婦映画」なのである。

 

なんで「人間の証明」が失敗作になったのか?といえば、角川春樹の責任も監督の責任もあるのだが(笑)、原作付きミステリ映画の構造的な問題が大きい。

長編ミステリというのは、作品にもよるが、ストーリー的に2~3時間の映画の尺には収まり切れないのである。

この映画も、サスペンス、ミステリ、と言いながら、事件の謎も、被害者の正体も、真犯人の動機も、あれよあれよという間に、ものすごいスピードで解決していくのだ(笑)。

原作付きミステリ映画は、どのエピソードをどうやってバッサリ斬り落とすか?、切り落とした後、どうやって前後のつじつまを合わせるか?、が勝負である。

人間の証明」は、エピソードを全部詰め込んだうえに、ファッションショーみたいな余計なタイアップに時間を使い過ぎたせいで、まるでダイジェスト版みたいな出来になったしまったのだ。

 

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じゃあ原作の無いミステリの方がイイか?となると、こっちはこっちで問題があって、特に犯人の人間像が荒唐無稽・支離滅裂になりやすい。

今度、テレビ朝日でやるらしい、これがモデルケースだ。

 

相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン|作品情報|日曜洋画劇場

2017年2月12日(日) よる9:00~11:19

 

平成の「相棒」ファンはご存じないかもしれないが、「杉下右京」役の水谷豊という役者さんは、あんまり付き合いやすいタイプではなかった(笑)松田優作の数少ない親友だった。

松田は東映セントラル育ちで、「相棒」も東映製作。

テレビ朝日「相棒」のスタッフも役者さんも松田人脈だった人が多いのだ。

たとえば、内村刑事部長役の片桐竜次は、大部屋俳優時代、松田のアクション映画の常連だった。 

 

「相棒劇場版」第1作の真犯人の性格は善良だ。動機も同情の余地がある純粋なモノだ。

しかし、映画の冒頭から引き起こされる事件は、残虐だったり、まるでゲームのような知恵比べだったり、犯人の性格は犯罪を楽しむ性格破綻者か悪魔的な愉快犯としか思えない。

真犯人の性格や動機と、実際にやってる犯行の猟奇性が、まったく一致しない。

これは、観客の興味を引っ張ろうとするゲーム要素と、派手な見せ場を作ろういうスケベ根性が、脚本にある犯人像を歪めてるわけだ。

 

さて「人間の証明」は、「慰安婦映画」でもあり、

同時に、明々白々の「反米ナショナリズム映画」でもある。

 

松田優作演じる刑事の父親は、終戦直後の闇市で、事件の真犯人である日本人女性を乱暴しようとする米兵をとがめて、逆に米兵に殴り殺される。

そして松田優作は、何十年も経ってから、捜査協力をしてくれるニューヨークの白人刑事が、その父親殺しの米兵本人であることを知る。

松田の追いかける日本人逃亡犯が抵抗すると、白人刑事は問答無用で射殺する。

松田は「馬鹿野郎!てめえそれでも人間か!てめえいったい日本人何人殺せば気が済むんだよ!」と叫ぶ。

そして、復讐の怨念に燃える松田は、鏡越しに白人刑事を拳銃を向ける。

 

原作の森村誠一日本共産党とつながりのある反米左翼だし、

製作の角川春樹はオカルト系(笑)の反米右翼だ。

左翼と右翼がタッグを組んだ、日本を支配したGHQに対する、そして今も支配し続けるアメリカに対する復讐戦である。

それは、安倍ちゃんとトランプを見れば判るように、21世紀の今も、何も変わっていない。

 

 松田優作は、戦後日本人の反米ナショナリズムを代表しているのである。 

 

しかし、ここで、話は複雑に二重三重にねじ曲がる。

それは松田優作という役者の「出自」である。 

 

この人は、松田優作が「何人」だったのか、知っているのだろうか?(人数じゃないよ) - 在日琉球人の王政復古日記

 

日本人と韓国人のハーフである松田が、戦後日本人の反米感情を演じているのだ。

しかも、その反米感情の起点である「日本の敗戦」は、同時に「朝鮮半島の独立」も意味する。

 

例えるなら、愛国俳優・津川雅彦に「暗殺犯・安重根」役を演じさせるようなものである(笑)。

 

日本の歌謡曲を歌い続けた和田アキ子も同じような立場である。

日本の演歌を代表する歌手・某も同じだし、

日本のロックンロールの第一人者・某も同様だ。

日本のプロレスを作り上げた力道山も、

特攻隊の生き残りを自称した、日本の空手界の伝説的人物もそうだ。

 

彼ら彼女らもまた「青山ミチ」的存在といっていいだろう。

それが、戦後日本のサブカルチャーなのだ。