今週のお題「人生に影響を与えた1冊」
つらつら考えてみるに、おそらくはこれ。
いや、マジで(笑)。
正確には、プレイガイドジャーナル(?だったと思う)版、チャンネルゼロ版の「バイトくん」。
いしいひさいちの作品はなんでも好きだが、やはり一番はこれだ。
私にとって、地上の天国、この世の極楽とは、バイトくんの日常である。
金も無く、愛も無く、その代わり、何の義務も責任も無く。
馬鹿で、無能で、そのお陰で、悪い油で揚げた50円コロッケが無性に美味い。
こういう生活に、本気で、真剣に、憧れた(笑)。
実際に学生時代は、これに近い生活だったし、最低で最高だった。
「バイトくん」に比べると、
こっちは、少々知的過ぎる。「マヌケ」と「卑しさ」が足りない。
「大東京ビンボー生活マニュアル」は、頭が良いので、自分の幸せに気づいている。
「バイトくん」どもは、頭が悪いので、自分の幸せに気づいていない。
というか「幸せ」なんて考えたことがない。考えが回らない。
ノリ弁のご飯の量で一喜一憂する毎日。
それが本当の幸せだったんだ、というのは、そういう「天国」が終わってから気づくのだ。
「次点」を挙げてみると、、、
ここからさかのぼって、「論語」を読み、「孔子伝」を読み、「漢字百話」を読み、「朱子学と陽明学」を読み、、、今も、その本質の100分の1も理解してないとは思うが、宗教なるモノの凄まじさを感じ取った、ような気がする。
ガキの頃、宗教なんて完全に馬鹿にしていたが、これを転機に、キリスト教や仏教や、新興宗教にまで、興味を持つようになった。
逆に、左翼思想から距離を置くようになったのは、これから。
収容所群島 1―1918ー1956文学的考察 (新潮文庫 ソ 2-7)
- 作者: アレクサンドル・ソルジェニーツィン,木村浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
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凄まじい「現実」である。本当の話なのだ。
そして、こういう無茶苦茶な「現実」をこの世に実現させた、ロシアという国の、ロシア人という人間の、想像を絶する強靭さ、精神的肉体的タフネスも驚嘆に値する。
先祖代々、南国の日光にあぶられ、怠惰と呑気が骨身に染み付いた琉球人の私には、こんな歴史を潜っても滅亡しなかったロシア人という生物が、同じ種族だとはとても思えない(笑)。
「収容所群島」の救いの無さは、これが「間違いではない」ことにある。
政策を間違って、こうなったのではない。
政権担当者が悪党だったから、こうなったのではない。
左翼思想、特に共産主義を突き詰めれば、「収容所群島」が《正解》なのだ。
何も間違っていない。誰も悪くない。これが正しい結論なのである。
左翼思想をマジメに実践すれば、必ず、不可避に、「収容所群島」に行き着く。
だから、人類の幸せのためには、左翼思想は必ず「中途半端」でなければならない。
もちろん、今が近代である以上、差別や貧困の現実が左翼思想を必要とする。
つまり人間が人間である限り、左翼思想は滅びない。
ただし、たとえ人間に左翼思想が必要だとしても、左翼思想のマジメ・バージョンである「共産主義」の《再実験》は阻止しなければならない。
「二度と過ちは繰返しません」というセリフは、戦争や原爆のためだけにある言葉ではない。